バングラデシュ:避難民に迫る雨季と災害への備え

2017年10月以来、日本赤十字社はミャンマー・ラカイン州から避難している人々が住むキャンプで医療支援やこころのケアを続けています。現在は、迫りくる雨季によって引き起こされるさまざまな災害に避難民自身で対応できるような支援が急務です。現地で活動を終えた青木裕貴事務管理要員(日本赤十字社国際部)によるレポートです。

 ※国際赤十字では、政治的・民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し、『ロヒンギャ』という表現を使用しないこととしています。

洪水、地滑り、感染症発生の危機

 私たちが拠点とし、もともと観光業の盛んなコックスバザールの中心地から車両を走らせること1時間半。のどかな田園風景を横目にしばらく進むと、活気ある市場を通り抜けます。辺りが農耕地から作物の育ちにくそうな乾燥した地域に入ったと思うと、次第に車両の窓ガラス越しに竹や土嚢を運ぶ人、配給所に列をつくる人々が目の前に飛び込んできます。すると突然、大小の砂山の上に形成された無数のテントが立ち並び、鶏や電化製品まで売られている活気ある光景が広がります。

複雑な地形 丘の上で洗濯物を乾かす少女.JPG

広大なキャンプには60万人以上が住んでいる

現地では、蒸し暑い日が続いています。ビニールテントで暮らす避難民の家の中はきっと蒸し風呂のような暑さなのだと思います。避難民キャンプでは、雨季を前に、より一層活発に活動している日赤要員と活動を支える避難民ボランティア、他国赤十字社関係者の汗と熱気が入り混じっています。衛生環境の悪化や地滑りのリスク、洪水など、さまざまな危険の引き金となる雨季はもう目の前に迫っています。

 バングラデシュでは4、5月頃が雨季の始まり。避難民キャンプが洪水や地滑りに見舞われることや、サイクロンによって仮設テントが吹き飛ばされること、その後の衛生環境の悪化で危機的な状況が生じる可能性があることは、ここに足を運んだ誰しもが容易に想像できます。キャンプの中は道路が十分に整備されておらず、日赤の医療チームがすぐに駆け付けることは不可能に近いのが現状です。災害に直面し、真っ先に対応を強いられるのは常に、脆弱な避難民の人々であることを私たちはこれまでも多く目の当たりにしてきました。

救急法(ファーストエイド)で命を守る


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包帯の巻き方を見せる二星看護師(神戸赤十字病院)

これまで日赤の医療チームは、どのような支援をすべきか、ボランティアとして携わる避難民と話し合ってきました。そして先日実現したのが、現地のリスクに対応した救急法の研修です。救急車も、高度医療も持たない彼らの救急法は日本のものとは異なり、外部からの支援が期待できないことが前提です。雨季に大量発生する蛇などから身を守る方法や、その場で調達可能なもので搬送用担架を作る方法、高所から落ちて骨折した際の添え木を竹で作る方法など、現地の環境に合わせた内容で構成されています。

 避難民ボランティアのリーダーであるゴニさんは今後、救急法を他の避難民に普及するのにあたり、「私は自分自身では、ケガや病気の対処は良くわかっている方だと思っていた。火傷を負ったときには冷水で瞬時に患部を冷やすことが身体へのダメージを少なくすると今回、学んだが、以前は歯磨き粉やシャンプーなどが身近にあれば塗っていた。私たちは何も知らない者ばかり。雨季やサイクロンと言っても、その怖さは本当のところは分かっていない。私たちボランティアが地域を回って、救急法を普及する活動はまさに私たちが必要としている活動であり、私たちの手で多くの人と共有しなくてはならない責任を感じる」と語っています。

普及のためのトレーニング.JPG

避難民同士で学んだことを伝え合う

言語や文化も異なる避難民のことを一番よく知っているのは避難民ボランティアです。だからこそ、赤十字の支援活動の担い手となるのは彼ら自身なのです。真っ先に脆弱な立場に追い込まれる人々が、迫りくる危機に対応できる力を彼ら自身の手で身に着けていくことを日赤はこれからも支援し続けます。

 このような困難に直面している避難民を支援できているのは、この記事を読んでくださっている皆さまやご寄付くださる皆さまのおかげです。引き続き、温かいご支援を宜しくお願いします。


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