フィリピン:地域活動のかなめは赤十字ボランティア

フィリピン・セブ北部地域保健衛生事業では、全事業対象自治体での「赤十字ボランティア説明会・研修」を行っています。
ボランティア応募者に赤十字について、またボランティア活動についての説明を行い、役割の研修を受けていただくものです。ある日、セブ州北部のとある自治体で開かれた説明会・研修会に、日本赤十字社の
セブ駐在職員も初めて参加しました。
会場となった公民館には、おおぜいの人が詰めかけていました。女性のほうがやや多いようです。

フィリピン赤十字社のスタッフが、赤十字の理念や歴史、また「赤十字基本7原則」の説明をし、それに続いてボランティアについて図や写真を使って説明を始めました。皆さん熱心に聞きいっています。中には持参のノートに一所懸命にメモをとる人もいます。その様子に、すっかり感心してしまいました。

ところが、後で分かったことですが、そこに集まっていたのは、実は事業地であるバランガイ(村落)の職員だったのです。
 「各自治体に協力してもらって、自治体がボランティアを選ぶんだよ。」
と、フィリピン赤十字社の職員に事もなげに言われ、ちょっと拍子抜けしましたし、不思議で仕方ありませんでした。

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研修中のグループワークで互いの役割を話し合っている様子

ボランティアしてみませんか?」などの募集チラシを見た人たちが、地域活動や
赤十字ボランティアに興味をもって自分もやってみたい!と思い、集まってくる・・・とばかり考えていたのです。

そうすると、わたしたちが見た光景は、いわば「お仕事」としてやって来た「ボランティア」ということになります。もちろん、中には勉強熱心で、純粋に興味を持って自発的に参加した人もいるでしょう。
しかし、ただ言われたから集まってきたという人々が大半です。
「研修会では赤十字がランチを出してくれるんでしょう。」そう聞かれたこともありました。「ごはん食べられるから行こう。」そんな感覚の人は少なくないかもしれません。

フィリピン村落部自治体と赤十字ボランティア

フィリピン赤十字社では、ボランティアの必要条件は「満18歳以上、心身ともに健康であること。自らの意志で活動参加を望むこと」のみ。基本的に希望者はすべて受け入れる方針です。
バランガイにおける目、耳、手足となって活動する赤十字ボランティアですので、いろんな方に来ていただきたいと考えています。

また、フィリピン赤十字社では自治体との連携を重視しており、各自治体への説明と協力要請は欠かせません。
そのため、バランガイの職員自身やさらに小さな集落の代表者が選出され、ボランティア説明会や研修へ
参加する・・・ということになります。

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とはいえ、お昼ごはんは楽しみなものです。初対面の人たちも一緒に、木陰に並んでお弁当を広げると、すっかり意気投合

ボランティアとなった彼らは、それぞれ保健、災害対策、国際人道法普及などの分野に分かれて活動します。

保健分野については、「地域保健ボランティア」が自分の自治体における健康問題を調査し、その結果に基づいて住民への健康教育を行います。
 中には、ボランティアから赤十字の職員となる人も多くいます。現行の「セブ北部地域保健衛生事業」のチームにもボランティア経験のあるスタッフがいて、こう話してくれました。

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研修の午後の部が始まる前に、「腹ごなし」の体操を一緒に行います

「前はすごく恥ずかしくて、人の前で話すのも苦手だったけど、赤十字のボランティア活動を続ける中で、少しずつだけど自信がついたの。今はもう大丈夫。赤十字の活動がわたしを成長させてくれたんだと思うわ。」

 たしかに、ボランティア説明会・研修会に集まる人たちは、最初は全く赤十字活動に興味のなかった人たちかも
しれません。しかし、赤十字の活動を楽しいこと、興味深いこと、有意義なことと感じることができれば、
自ずと彼らの意欲ややる気につながります。

 

意欲を引き出すためには

きっかけは何であれ、そんな意欲を持った人たちこそ本当の意味でのボランティアといえるのでないでしょうか。
楽しいことには目がないフィリピンの人々、面白くないと思ったことには正直に興味を示しません。
一方的に知識や技術を伝えるだけではなく、最初は何もわからず集まってきた人々に、いかに興味を抱かせ、ボランティア活動への意欲を高めるか、そんな関わりが重要です。

そして、ボランティアとなった人が、さらに自分の近くにいる人に伝え、ボランティアの「輪」が広がっていくこととなるのです。参加者が楽しむことのできる活動、興味ない人にこそ興味や関心を抱かせる研修会が開催できるか否か。
 わたしたち職員は、今こそ、今後のボランティア人員確保や存続のための重要な局面に立っていると感じます。
人から人への動機づけ、という赤十字運動の本質を実感する日々を送っています。

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