核兵器のない世界へ 核兵器禁止条約の採択 ~赤十字の役割が明記!~

8月9日長崎へ原爆が投下されてから72年。世界は「核兵器のない世界」へ舵を切るため、歴史上画期的な条約を採択しました。

3.jpg

核兵器禁止条約が採択され、拍手で称賛する参加者たち ©ICRC

7月7日、ニューヨークの国連本部で122カ国の賛成のもと、核兵器禁止条約が採択され、これまで国際法で明確に禁止されることのなかった唯一の大量破壊兵器である核兵器の違法化に向け、歩みを進めることになりました。

長年にわたって核兵器の禁止及び廃絶を訴えてきた赤十字は、この条約の採択を歓迎します。

赤十字の役割が明記!核兵器禁止条約の採択へ

核兵器2.jpg

交渉会議に参加する赤十字関係者の座席から ©ICRC

採択された核兵器禁止条約の中で、赤十字については、条約前文においてこれまでの核兵器廃絶を巡る赤十字の貢献が確認され、条文内において赤十字が条約の履行に向けて国際協力及び支援の分野で役割を担うことが明記されました。また、条約発効後に定期的に開催される締約国会議等にオブザーバーとして参加することも求められており、赤十字が世界の核兵器廃絶に向けた取り組みの後押しをすることが期待されています。

条約採択にあたっては、6月中旬からニューヨークで開かれていた国連の核兵器禁止条約制定交渉会議に赤十字もオブザーバー参加し、様々な意見を述べてきました。採択された条約は、核兵器がもたらす壊滅的な人道的影響を認識しつつ、国際人道法に基づき明確かつ包括的に核兵器を禁止する内容となっています。

条約の採択は、核兵器の使用は非難すべきことであるという世界の意識を高めることとなります。そして核拡散の抑止として機能するだけではなく、核軍縮と核廃絶に向けた道のりへの着実な一歩となるものです。

※核兵器禁止条約採択についての赤十字国際委員会(ICRC)と国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)の共同声明(ICRC駐日事務所ホームページ)
 http://jp.icrc.org/event/jointstatement07july2017/

「核戦争に勝者は存在しない」連盟 近衞会長の論考

日本赤十字社社長である連盟の近衞会長は、核兵器禁止条約制定交渉会議に先んじて、国際社会に向け論考を発表しました。核兵器廃絶への思いを伝えた論考は、日本をはじめ、スイスやオーストリアなど各国のメディアで紹介されました。

...(前略)...

それは、われわれは人類全体として、このような攻撃がもたらす恐るべき結果に対して、完全に備えを欠いているということです。もし、核爆弾が都市や人口密集地に命中すれば、何万いやそれ以上の命が無残にも一瞬にして奪われることになるでしょう。また、たとえ多くの、はるかに多くの人々が生き残ったとしても、彼らの苦痛は筆舌に尽くしがたいものとなるでしょう。一度核兵器が使われたなら、生き残った一部の人々ですら、効果的に救う、実行可能な手段がないのですから。

...(中略)...

明快な真実は、核戦争に勝者は存在しないという、ただそれだけです。
私たちには、子供たちが学校の体育館や机の下に隠れ、はかない運命を委ねなければならないような恐怖から自由な世界を選ぶことができます。いや、実際にはそれしか選択肢はないのです。

※全文はこちら(日本赤十字社ホームページ)

  http://www.jrc.or.jp/information/170705_004841.html

核兵器禁止条約の発効に向けて

核兵器禁止条約は、50カ国が批准した時点で発効します。赤十字は、9月20日からはじまる条約への各国の署名及びそれに続く批准に向け、各国への働きかけを行います。また同時に核兵器の廃絶に向けては、核保有国や核の傘にある国に対して、核兵器の軍事的役割を縮小させたり、即時発射状態に置かれている核弾頭の数を減らしたりといった核リスクの低減措置の実行も求めていきます。

赤十字は、条約の採択を足掛かりとして、核兵器廃絶を実現する未来を希求し、世界と共にこれからも歩みを進めていきます。

 【お知らせ】----------------------------------------------------------------

1.jpg

今年4月、長崎市に核兵器の禁止・廃絶を議論するため世界35カ国から赤十字・赤新月社の代表が集まりました。核兵器廃絶を訴える赤十字の活動と思いを映像にまとめました。
ぜひ、ご覧ください(goo.gl/WQ2t5A)

本ニュースのPDF版はこちら