• photo: Naoto Date
  • text: Nozomi Hasegawa

ビーチコーミングと海のキホン。
もしものために知っておこう、海遊びの裏に潜むキケン。

 海って最高。広いし、大きいし。波の音を聞きながらぼうっと眺めているだけでも気持ちいい。サーフィンやビーチバレー、釣り、ヨットなど、海での面白い遊びはたくさんあるけれど、最近気になっているのがビーチコーミング。POPEYE Webでライターをしている宇都楓矢くんが教えてくれたイギリス発祥のアクティビティで、浜辺に落ちている漂着物を拾い集める遊びのこと。「一般的にはゴミとして扱われる漂着物も、自分で見つけると宝物のように思えてきますよ」

宇都楓矢

うと・ふうや|1997年、鹿児島県生まれ。ライター。民藝品や自然が好き。POPEYE Webの一員としても活動中。担当連載に「東京五十音散策」「ワンテーマ・オブジェクト」など。

 鹿児島の海沿いで育ち、東京で暮らす今も暇さえあれば海へ行っている宇都くんが言うなら面白いに違いない! そんな彼と一緒に、今回はビーチコーミングをやってみることにした。まずは楽しむことがいちばんだけど、海での遊びは危険とも隣り合わせ。宇都くんも、過去に危ない目に遭ったことがあるようだ。

大きな岩で構成された磯。

「実家の目の前が海なので、幼い頃から毎日のように泳いでいたんです。危ない目に遭ったのは小学生のとき。海で一緒に遊んでいた妹が溺れてしまって。助けようとしたら、パニックになった妹に全身を掴まれ足も手も動かせなくなって、僕もどんどん沈んでしまいました。その後すぐに父親が来て2人とも無事だったのですが、すごく怖かった。あの日のことは忘れられないですね」

 日本赤十字社の調べによると、水の事故の約50%は海で起こっているようだ。宝物探しに夢中になって事故を起こさないよう「赤十字水上安全法」*1を参考に、自分や誰かの命を守るための知識を一緒に身につけていこう。

 海に到着するやいなや「こっちで何か見つかるかも!」と、磯・岩場へ。岩を飛び越えようと軽くジャンプしたら、危ない! 滑って転びそうになった宇都くん。磯・岩場は波をかぶるので常に濡れていて、ゴロッとした動きやすい石も多く、滑りやすくなっているのだ。

 磯・岩場の他にも、海には事故が起きやすい危険なポイントがいくつかある。日本赤十字社の「海の危険な場所とは!?」*1というリストによると、ビーチコーミング中に気をつけたい場所は「磯・岩場」「波消しブロック」「防波堤・桟橋」「河口」の4か所。波の力をやわらげるためにある「波消しブロック」の隙間や船を繋ぐ場所として海底が深く造られている「桟橋」などの人工物からは落ちないように注意。「河口」は川と海が合流するために流れが強く複雑になっているので、宝探しに夢中になってうっかり足を踏み入れると流されてしまう可能性も。

 海は天候によってもさまざまな変化があるので、人間は太刀打ちできないほどの大きな力を持っている。だからこそ、小さな不注意が命取りになりかねないのだ。

「今日は暖かいからサーフィンをしている人も結構見かけますね。僕もサーフィンが好きなんですけど、ダンパーには気をつけるようにしていますよ」

 この“ダンパー”も、海の危険な場所リスト*1に挙げられているスポットのひとつ。一気に大きく崩れた波(別名、まき波)のことで、急に巻き込まれると海底に叩きつけられてそのまま怪我をしたり、溺れてしまうことがある。もし意識がある状態で溺れたときは、バタバタ動かずにできるだけ心を落ち着かせてリラックス。水面上に仰向けになって「浮き身」の姿勢をとろう。衣服を着たまま水に落ちてしまった際にも同じ動きを。衣服や靴を無理に脱ぐと、体力を消耗してしまうことになる。溺れたときの行動は、日本赤十字社のホームページや公式YouTube*2で詳しく確認ができる。動画だと特にわかりやすいので、もしものときのために一度目を通しておくと安心だ。

 では溺れた人を見つけたときはどんな行動を取ればいいのだろう? 小学生の頃の宇都くんのように、溺れている人を見つけたらとっさに飛び込んでしまう人もきっといるはず。そんなときのために、日本赤十字社が提唱する溺れている人を見つけたときに取るべき行動*1も、ここで一緒に学んでおこう。

 まずはじめに、溺れている人を助けようとすぐに飛び込んで近づくのはNG。さらに事故を大きくしないために、溺れている人を見つけたときは抱きつかれない距離で救助することが重要だ。見つけたら第一に大きな声で周囲に知らせること。次に長い棒やタオル、衣服など、溺れている人が掴まりやすい「長いもの」を、溺れている人に差し出して浜辺まで引き寄せる。救助者は海へ引きずり込まれないよう可能な限り重心を低くして足場を確保し、周囲の人に体を掴まえてもらうことも忘れずに。溺れている人を引き寄せるのが難しい場合は、ペットボトルやリュックサック、クーラーボックスなど、浮き具の代わりになるものを渡して救助を待とう。

 自力で救出できたときには、声かけをして反応を確認し、仰向けか横向きの楽な姿勢で寝かせよう。低体温症にならないよう、毛布やバスタオル、衣服などで全身を包んで体を温めてあげることも大切だ。呼吸がなかったり呼びかけに応えないときには、迷わず119番通報を!

 浜辺をじっくり観察すると、割れたビンや壊れたプラスチックのフォーク、先の尖ったネジ、ビーチサンダルの破片など、明らかに危険なアイテムも発見。気づかずに裸足で踏んだら怪我をしてしまうし、海の生物を傷つけてしまう可能性もある。もしビーチコーミング中に危ない落とし物を見つけたら、見過ごさずにぜひ持ち帰ってほしい。その動きが、地球と誰かを守るきっかけになるかもしれない。

 サンゴ、貝殻、おはじき、シーグラス、コイン、ヒシの実、流木、虫眼鏡、ガラスのすりこぎなど、2時間ほどかけて見つけたお宝はこちら。

「いっぱい見つかりましたね! 今日見つけたものは、部屋の棚に飾ろうかな」

 もしかしたら異国から流れ着いたものかもしれないし、ずっと昔に流れ出した古いものかもしれない。そんな想像をしてみると、見つけたものがさらに愛おしく思えてくるから不思議だね。

「面白いものが見つかって楽しかったですね! 天気もよくて暖かくて気持ちよかった。浜辺をじっくり見てみると、こんなにたくさん危険なものが落ちているんだ、と驚きもありました。もし事故の現場に遭遇したら、安全を第一に考えた行動がすぐにできるようにしたいので、溺れたときや溺れた人を見つけたときにすべきことは覚えておくようにします」

 大好きな海での時間を安全に楽しく過ごすために、危険な場所や行動をあらかじめ知っておくことが重要だ。

インフォメーション

日本赤十字社

安全に水に親しむため、日本赤十字社では、事故防止や泳ぎの基本と自己保全、水の事故に遭った際の救助や手当ての方法などの知識と技術が習得できる講習会を実施している。
手当ての基本から、人工呼吸や胸骨圧迫の方法、AED(自動体外式除細動器)を用いた電気ショックの方法などが習得できる「救急法基礎講習」や水の事故防止、泳ぎの基本と自己保全、要救助者の救助および応急手当てが学べる「水上安全法」の講習を受けることができる。
*1 参考サイト:「赤十字水上安全法」
https://www.jrc.or.jp/about/publication/news/20230531_033449.html
*2 参考サイト:【日本赤十字社東京都支部 公式】 水上安全法 泳ぎの基本と自己保全・着衣泳
https://www.youtube.com/watch?v=5FIuYezsliY

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