パズルの空白部分を埋めながら、
今、人道支援を必要としている地域の実情に
目を向けてみませんか。
そこには、いのちや生活を
脅かされている人たちがいます。
それぞれの地域で活動する
赤十字職員の声とともに、
現地のリアルな姿と支援をご紹介します。
人道支援の空白地帯をつくらないために。
空白地帯の今を知る
- ルワンダ
- バングラデシュ
- ガザ
- スーダン
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RWANDA
ルワンダ
農村部での暮らし
ギサガラ郡ムキンド区の一般的な家庭の食事です。住民の多くは、栄養バランスの良い食事摂取の大切さを知っています。しかし、野菜や牛乳、卵などの食材を購入する経済的余裕がなく、子どもの3人に1人は発育不良となっています。
現地の状況
ルワンダは、1994年の大虐殺という悲しい出来事を克服し、「アフリカの奇跡」と称される急速な発展を遂げました。その反面、地方では貧困状態が続き、安全な水へのアクセスや十分な栄養摂取ができず首都キガリとの格差が拡大しています。事業地の住民の多くが小作農として食料生産に貢献しているにも関わらず、1日1食しか食べられない状況が続いています。
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01「1日2回の食事」さえ、
あたりまえじゃない。事業地のギサガラ郡ムキンド区では60%以上の人が国家貧困ライン(1530RWF/日 ※約150円)以下での生活を余儀なくされています。2019年から続いた日赤の支援により、対象5村の住民の60%が1日2回以上の食事をとれるようになりました。しかし、ムキンド区には未だ支援が届いていない村が複数残されています。
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02水を汲むだけで、1日が終わってしまう。
毎日2時間の水汲みからの解放事業対象村では、半数以上の人が水汲みに毎日2時間以上を費やさなければなりません。人びとは、夜明けとともに水汲みに出かけ、その後、田んぼや畑に向かいます。日赤が支援した給水設備の設置により、事業対象村では水汲み時間が1日10分と大幅に削減され、母親が子どもに朝ごはんを作る時間ができました。
本事業では、「モデルビレッジアプローチ」という手法を用い、住民が主体となり地域のさまざまな課題に取り組み、将来の危機を予防・軽減する力を強化することを目標としています。その基礎となる人びとの健康を守るための安全な水の供給と衛生的な生活環境、十分な栄養摂取を目指した活動は、「人のいのちと尊厳を守る」という赤十字の使命を体現しています。ルワンダでの人道支援活動を
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BANGLADESH
バングラデシュ
避難民キャンプでの暮らし
バングラデシュ南東部コックスバザールの避難民キャンプでは、女性や子どもを含む100万人超が竹とビニールの家に住み、劣悪な衛生環境で暮らしています。偏った栄養や壊れやすい住居により、健康や災害時のリスクも高まっています。
現地の状況
今から8年前の2017年8月、ミャンマー・ラカイン州での暴力を逃れるために約70万人の人びとが一斉に隣国バングラデシュ南部のコックスバザールへ避難しました。それ以来、人びとの流入は続いており、2025年6月末時点で避難民は114万人を超えています(国連難民高等弁務官事務所)。安全な帰還の見通しが立たないまま、避難生活は長期化しています。
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0120,000人に1つのクリニック。
キャンプ内では排水整備が整っていないエリアも多く、水たまりの周辺では蚊によって媒介される感染症が流行することもあります。日赤が支援している診療所でも急性呼吸器疾患や皮膚疾患の患者さんの割合が患者数全体の3割を占めています。クリニックの数は20,000人に1つで医療体制も脆弱です。
参考:日本全体では約1,000人に1つの医療機関があります
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02命をつなぐことが、命を脅かすことに。
避難民キャンプでは若年結婚が広く見られ、また女性1人当たりの出産数が多いことから、妊産婦や新生児の死亡率が高い状況にあります。配給に頼った食事による偏った栄養状態は慢性疾患のリスクを高め、将来への不安などにより精神的不調を訴える人も多くいます。
避難生活の長期化が避けられない状況下で必要なのは外部者による短期的支援ではなく、避難民と地元コミュニティの自助・共助を高め、健康で安心した生活を実現することです。日本赤十字社はバングラデシュ赤新月社と協力して、診療所運営や地域保健活動、心理社会的支援活動を継続して行っています。バングラデシュ関連記事を読む -
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GAZA
ガザ
避難命令区域での暮らし
2023年10月以降の武力衝突で365平方キロメートルほどの面積(日本の種子島より小さな面積)の地区の80%以上が避難命令区域に。人道状況が悪化の一途をたどっており、約200万人が水・食料・医療へのアクセスに困っています。飢饉の発生も確認されました。
現地の状況
2023年10月以降の武力衝突で、ガザの人道状況は悪化の一途をたどっています。2025年10月時点で地区の80%以上が避難命令区域となっており、死者は67,000人、負傷者16万9,000人を超えました(国連人道問題調整事務所)。 現地では水や食料が不足し、感染症や慢性疾患の拡大が見られます。また、特に5歳未満児の急性栄養失調が深刻化しています。
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01飲める水も、食べるものも、
足りていない。90%の人びとが清潔な飲料水を得られていません。2025年8月には国連がガザ市での飢饉の発生を確認。2026年6月までに、5歳未満の子ども13万2,000人が急性栄養失調、うち41,000人が重度なケースと推計されています。また、100万人の子どもが心理社会的支援を必要としています。
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02病院も、助けを求めている。
地区内の36の病院の半数が機能不全、稼働施設も機能が完全ではない中、避難民で逼迫し治療困難が続いています。負傷者の緊急医療体制の確保が急務です。そんな中、2023年10月以降、少なくとも562人の人道支援従事者の犠牲が報告されており、当事者による国際人道法の遵守も喫緊の課題です。
ガザ南部のラファ赤十字野外病院は2024年5月から17カ月で診療16万件超、手術9,000件超、分娩600件以上に対応。今年5月以降は食料配布拠点での混乱により、多数の傷病者を連日受け入れています。心理社会的支援や飲料水確保にも注力し、患者と家族を支えます。赤十字は国際人道法の遵守を当事者に強く求めていますが、これはこうしたいのちを守る活動を続けるためでもあります。赤十字の海外での活動を
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SUDAN
スーダン
終わりの見えない紛争
2023年4月以降の武力衝突により、スーダンの「忘れられた人道危機」はさらに深刻化しています。家族を失ったり、行方が分からなくなったりする中で、多くの人びとが大きな心の痛みを抱えています。
現地の状況
2023年4月に首都ハルツームで武力衝突が勃発してから、避難を余儀なくされた人は1,200万人を超えました。2025年現在、人口の半数以上にあたる3,000万人が人道支援を必要としており、飢餓や栄養不良に苦しみ、妊産婦や子どもも治療を受けられないままいのちを落とす危険にさらされています。医療施設の多くは破壊され、感染症や慢性疾患の治療も途絶えています。
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015つの地域で”飢饉”と認定。
国民の半数に支援が必要。紛争の影響により、スーダン全土で多くの人びとが緊急性の高い食料不安に陥る事態となっています。食料危機の深刻度と規模を示す国際指標「IPC分類」において、少なくとも5つの地域で飢饉(IPCフェーズ5)が確認されており、人口の半数にあたる約2,460万人が深刻な食料不安(IPCフェーズ3以上)に直面しています。
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02「学べない」「治せない」。
学校も病院も、壊れている。教育機関や医療施設などの重要なインフラも被害を受け、子どもの25%以上が通学できていません。病院の約70%が機能せず、治療可能な病気が致命的となり、コレラの致死率は世界平均の3倍に達しています。支援物資の略奪や人道支援機関のスタッフへの攻撃も発生しています。
国際赤十字はスーダン赤新月社と連携し、紛争勃発当初から、スーダン全土において救急や応急処置、食料・水の配布、避難支援、家族の再会支援などの人道活動を行っています。今後は公衆衛生や生活再建などの中長期支援にも注力し、紛争の影響により苦しむ人びとのいのちと尊厳を守るため、スーダン及び避難民を受け入れる近隣諸国でも支援を継続していきます。避難民への支援について
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海外で様々な支援活動を行っています。
「NHK海外たすけあい」とは?
この活動は、日本赤十字社とNHKが毎年継続的に実施している募金キャンペーンです。
今この瞬間も世界では多くの人が武力紛争や病気、自然災害など様々な人道危機で苦しんでいます。
関心の差によって支援に差が生じないよう、人道支援に空白地帯をつくらないために、
赤十字はどんな時も苦しんでいる人びとの側で活動を続けていきます。