救護班要員が集結!令和7年度 第4ブロック赤十字救護班研修会を実施しました(後編)
さて、2日目です!!
初日に学んだ災害救護の基礎的な知識を思い出しながら、最後の総合演習に向け、日赤救護班の活動の大きな柱である病院支援、避難所支援について学びます。
セッション8 被災地内の病院支援で“心得ること”は何かを考える
日赤の救護班の活動として、被災地の病院支援も重要な役割です。東日本大震災の、多くの医療機関が被災した中で、唯一の医療拠点として地域の医療を担った石巻赤十字病院。その石巻赤十字病院を支援すべく、全国から駆け付けた赤十字救護班が全力を尽くして救護活動にあたりました。
このセッションでは、被災時の病院における指揮命令系統や体制構築の流れについて確認し、どういった支援が可能かを考えます。医療的な支援だけでなく、本部が機能しているか、患者さんを受け入れる環境は整っているか、ライフラインや資材は確保できているかなど、多方面からの評価が必要であるということが分かりました。
また、あくまでも自分たちは支援者であるということを忘れずに、支援先病院のニーズやルールに従い活動することが重要であるということを胸に刻みました。
セッション9 “避難所を知る”避難所支援
病院支援に続き、避難所支援も日赤救護班の主な活動の1つです。実際に、令和6年能登半島地震においても、多くの救護班が被災地の避難所を巡回し避難所支援にあたりました。
日々変化する避難所の状況。日赤救護班が行うのは避難所での診療だけでなく、衛生環境やライフランの状況、要配慮者の人数の確認など、各避難所のニーズを正確に把握し、必要な支援につなげるための活動です。例えば、避難所の区画整理や簡易トイレ・段ボールベットの紹介、導入など、生活の環境を整えるお手伝いをすることも重要な役割です。
他機関と連携しながら、日赤救護班として何ができるのかをグループの仲間と考えました。
セッション10 総合演習
さあ、いよいよ総合演習の時間です。2日間を通して学んだことを存分に発揮し、実際を想定した支援にあたります。グループに分かれ、病院支援、避難所支援のそれぞれを経験します。
① 病院支援
病院支援では、南海トラフ地震発災数日後の、ある病院のER(緊急救命室)および災害対策本部の支援を想定した演習が行われました。
(本部支援)
全体での打ち合わせの後、数名の主事が災害対策本部の支援要員として、クロノロやEMISの記入、ERの搬送支援、外部機関との連絡調整などの任務にあたります。
始まるや否や、さっそくERから飛んでくる搬送依頼や調整の電話が鳴りやまず、大忙し!!
まずは役割分担を決め、患者さんの整理や搬送調整、記録と、それぞれがこれまで学んできた知識と技術をフル活用し、支援にあたります。
また、気持ちが辛い患者さんがいらっしゃったら、日赤の災害対策本部にこころのケアの要請をしたり、足りない物品や機器があれば支援先の病院の方に相談したりと、外部や内部との調整も大切な任務です。各自が声を掛け合いながら、To doリストを整理していきます。
活動の中で、正確な記録を残し、情報を整理することが意外と難しく、スタッフからのフィードバックでは、「何名か患者さんの名前や情報が間違っている、正確な情報を搬送先などに引き継ぐことも非常に重要だよ」とのアドバイスもありました。あわただしい現場で焦りがちですが、落ち着いて現場との連携をとることも大切だと学びました。
(ER支援)
ER支援では、被災した病院の支援に救護班3班が合同であたりました。限られた病床と資機材の中、次々と搬送される負傷者に対応し、一人でも多くの命を救うため全員で力を尽くします。誰が診察をし、どのような対応をするのか、本部には何を報告すべきか、縦横の連携と情報共有が鍵を握ります。様々な声が飛び交い、人も交差する現場で、情報を聞き逃すことは時間のロスに繋がります。1回の伝達で、対応に必要な情報を出来るだけ多く伝えることの重要性を学びました。
② 避難所支援
避難所支援では、災害対策本部からの指令により、被災後初めて医療チームが支援に入る、とある避難所での活動を想定した演習が行われました。ミッションは2つ、避難所評価と可能な範囲での巡回診療です。
まずは、救護班内での役割分担を決め、限られた時間の中でどのように活動するかを考えます。2手に分かれて避難所評価と巡回診療を並行して行う班や、1人を記録・搬送の手配・情報の取りまとめなどを行う役割とし、情報を集約しながら活動する班など、それぞれの班で工夫をしながら取り組まれました。
決められた時間の中で、すべての被災者の方を診療することは非常に難しく、後ろ髪のひかれる思いの中での撤収となった班も多かったようです。しかし、緊急度の高い被災者の方の診療や搬送、また、避難所の状況を可能な限り把握し次の救護班へ引き継ぐなど、医療チームの第1班として、自分たちにはどんな活動が求められ、何ができるのかを考えさせられた活動となりました。
また、演習後のフィードバックでは、被災者役をしたファシリテーターから「避難所の運営をしている方もまた被災者である、また、家族が見つからなかったり皆不安の大きい中で避難しているので、その気持ちに寄り添った声掛けが大切である」というお話もあり、活動に必死になるだけではなく、被災者の方の気持ちに寄り添うことを忘れないようにしたいと感じた演習となりました。
セッション11 必要な支援を、次の隊へ。~救護班の活動・報告~
総合演習も終わり、最後のセッションは、この研修会の総まとめともなる「救護班の活動・報告」です。
継続性が必要な救護活動において、日々の活動を評価し、明日以降の計画を立てることは、非常に重要とされています。そのための情報源として、各救護班の活動の記録が役立ちます。
各班のリーダーを中心に、総合演習での気づきや分析を行い、全体と共有しました。明日以降の救護班にどのような情報を引き継ぐことができるか、他の班の評価からも気づくことがありました。
また最後に、被災地の保健医療調整本部での模擬定例ミーティングを行いました。
各連携機関との緊迫のミーティングの様子から、日赤救護班の被災地での動きや立ち位置を理解し、縦・横のつながりについて学びます。自分たちが、どういう指揮命令系統のもと活動しているのかを再確認することができた模擬ミーティングとなりました。
閉会
充実した2日間が終了し、滋賀県支部局長の激励のもと、令和7年度第4ブロック赤十字救護班研修会が閉会となりました。
近年、ますます身近となっている地震や水害などの自然災害。いざという時、日赤救護班に何ができるのか。日本赤十字社では、救護班要員の1人1人が「苦しんでいる人を救いたい」という日赤の使命を胸に、研修会や訓練を通して必要な技術や知識を備え、いざという時に迅速かつ効果的な救護活動が行えるよう取り組んでいます。