中トレが5年ぶりに再開!~気づきにあふれる中トレ~
青少年赤十字リーダーシップ・トレーニング・センター中学生の部(以後、中トレ)が、コロナ以降5年ぶりの開催となりました。小学校の時に参加して「楽しかった」「いい経験になった」という人、少ない加盟校から募集要項を見て参加した人…少人数の参加でしたが充実した2日間となりました。
開会式では青少年赤十字指導者協議会副会長である京都市立神川中学校の松井校長先生から前日に起きたカムチャッカ半島沖の地震について「この二日間の経験や学びが大きな意味がある」というお言葉を中トレへの意欲とともに意識の高まりを感じるまなざしで聞いていました。
開会式後のHR(ホームルーム)では、日ごろ感じている悩み…勉強したいけど、つい携帯を触ってしまう、集団の中で話すのが苦手、勇気を出して話せないなど…スタートから自分の中での課題を解決していこうという意識を感じました。
1日目は『先見』『号令のない生活』『掲示板による連絡方法』などの中トレの生活について知り、『V.S(ボランティアサービス)』についての講義では自分たちの生活の中で自分も他の人もより良い生活にするための大切さと実践していく姿勢を学びました。『赤十字概論』や『国際人道法』の講義では初めて参加して学ぶこともあり新鮮だったようです。「水が必要な状況にある二つの立場…その理由を述べずに水を手に入れたい。」という課題に初めて話をする相手に、どうにか納得してもらおうと話している様子は、話すのが苦手だと感じている人も一生懸命相手を説得しようとする姿勢が現れていました。理由が分かった後には「やはり相手を説得するためにはきちんと理由を話すことが大切である」ことを知りました。「理由を話すことは相手を説得するだけでなく、相手の立場を考えることもできる」という生徒もいました。これは青少年赤十字の態度目標の一つの『気づき』だと思います。
2日目は前日の最後のHRで考えた『朝の集い』での計画で体を動かした後、昨日の振り返りをしました。特に、前日の自分たちの行動について、よかった点、反省点を話し合い2日目の課題・目標を意識しました。午前中の『救急法』では止血法、三角巾の使い方、搬送法を学び救護活動の体験をしました。救急法は技術も大切ですが相手を思いやる気持ちが大切です。「大丈夫?」という言葉は救急法の一つです。日常生活において体調がよくない時だけでなく、心がつらいときにでもその言葉一つで気持ちが落ち着くこともあります。東日本大震災の時には中学生の声かけが高齢者の方や小さい子どもたちの支えになったということもありました。学校や地域で大きな力となってほしいと思います。
午後からは支部の方から『赤十字社の国際活動』についてラオスの救急法の支援活動を中心にお話を聞きました。みんな真剣な顔で聞き、今まで持っていた国際理解の視野を広めることができたようでした。
最後のフィールドワークの活動ではこの2日間での学びを活かしたアクティビティをチームで協力して解決していきます。1日目には周りの意見に耳を傾けなかったり、逆に注意することでができない場面もありましたが、この活動ではお互いに前向きな意見交流の場面を見ることができ、たった2日間とはいえ大きく成長した姿を見ることができました。
最後にそれぞれが中トレで学んだこと感じたことをメッセージとして残し、終了しました。この中トレでの活動で青少年赤十字の態度目標である『気づき・考え・実行する』を意識できるようになり、それを今後の学校生活や日常生活等に活かしていこうという決意と今までの自分を見つめ考えることのできた2日間になったようです。この2日間が確実に参加生徒の成長に繋がっていると感じました。
生徒の感想
・日本赤十字社の使命が苦しんでいる人を救い、命と健康、尊厳を守るということを知りました。
・デュナンは北イタリアで救護活動をして、デュナンに命を救われた人々のことを考えると心をうたれました。デュナンの行動力の大きさを学びました。
・一番印象に残ったのは赤十字概論です。『赤十字』の本当の意味を知りました。「表示の標章」と「保護の標章」の意味があることを知ることができました。
・最も印象に残ったのは国際人道法です。戦争にもルールがあるなんて知りませんでした。全世界の人類みんな平等に扱ってもらえる権利があることが大切だとわかっていました。水を手に入れるため取り合いをしたときに自分さえ手に入れることができればと思いました。でもそれが間違っていると気づきました。相手の理由を聞いた時、同じように自分と同じようにその理由があって、相手にも自分にも水は同じで大切でした。みんなを公平にあつかうことの重要性を知りました。
・『人道』と『公平』の2つが赤十字の基本原則7つのどれよりも心に残りました。まず1つ目は『人道』です。敵も味方もなく助ける。このことを本当に自分がそのような行動をとれるかと聞かれたら「できません」が正直な答えだと思います。2つ目は『公平』です。ぼくは『平等』=『公平』だと思っていて何の違いもわかりませんでした。帰り道に友達と話し合いました。ケーキにたとえると『平等』は5人いたとすれば5等分、一方『公平』だと1人は小学2年、1人は妊婦さん、1才の子ども、会社員のおじさん、おばあちゃんだったとすると分け方は変わるということなのではないか。翌日、会場のはり紙をよく見ると「『公平』…個々の状況に合わせて必要な配慮をすること、『平等』…すべての人に対しておなじように扱うこと。」と書かれていました。『公平』ができれば『人道』をしているのと同じ、みんなに公平に接することを心がけよう、この目標にむかってこれから過ごしたい。
・赤十字は国際的な活動もしていて、日本は設備にめぐまれているが、発展途上国では多民族の国で言語の壁や教育の問題、環境が整っていないなどの問題があり自分たちはこの現状に目を向けないといけないと思いました。
・救急法での三角巾の使い方や毛布でつくる担架がとても新鮮でした。
・最も印象に残ったことは、毛布で搬送した時にお互いが助け合って運んだことです。私は腰のあたりを持っていて、とても重かったのですが隣の人が変わってくれてとてもうれしかったです。
・救急法では、直接圧迫止血法や三角巾の使い方、毛布でつくる担架。いろいろな場面で使える応急処置法を知ることができました。これは日常生活でも役に立つと思いました。
・救急法で学んだ『勇気』を生かして目に見えない傷を負っている人に「大丈夫?」と声をかけていきたいです。
・フィールドワークではみんなと協力しミッションを解いていくことで、より仲を深められたことや学んだことの復習ができたことが印象に残っています。
・国際的なことにも興味を持ったのでこれからもいろいろ知っていきたいと思いました。
・この中トレで経験を学校や地域でたくさん生かしていこうと思います。
・このトレーニングセンターでの経験を町のボランティアなどに参加したりして困っている人がいたら自分で声をかけて率先して動くようにもしたいです。
・常に周りを見て今、自分が何をすべきかを、どうしたらよいのかを勝手に動くのではなく、周りの大人の人に聞いたりして動くようにしたいです。
・気づいたら自分から動くということです。私は前まで、気づいても動くのが面倒くさいと思っていましたが、みんなが気づいたら自分から動いているのを見て、私もそうしないと…思いました。
・はじめはHRのメンバーとなじめるか、自分のできない部分を変えられるか不安でした。でも少し自分から話せたり、仲間との協力や自分から行動することが学べて、これからも大切にしていきたいなと思いました。
・新しく自分の欠点を見つけることもあったけど、自分に自信がついたと思います。
HR担任より
最初は緊張していた中学生達ですが、徐々に打ち解けていき、皆で協力しながら色々な課題をこなしていました。トレーニングセンターでの学習で得た経験を活かしてこれからもそれぞれの学校や普段の生活の中でも活躍してくれたらと思います。(1HR)
それぞれの心に秘めたパワーをどんどん発揮しようとする中学生の成長の速さにとても感動しました。今回のトレーニングセンターで、新しい自分を見つけられたのではないかと思います。また、リーダーはこうあるべきと言う形にとらわれず、周りの人たちを支える中で自分にピッタリの在り方を見つけるきっかけになれたら嬉しいです。(2HR)
中トレへの参加の条件として、学校が青少年赤十字(JRC)への加盟校である必要があります。
赤十字では加盟校を募集しています。
学校での救急法の講習会をはじめ、未来への子どもたちのためにできること、お手伝いできることが赤十字にはあります。
詳しくは日本赤十字社京都府支部までお問い合わせください。