TRALI/TACO

TRALI

TRALI(Transfusion-related acute lung injury:輸血関連急性肺障害)は、低酸素血症、両側肺野の浸潤影を伴う急性の肺障害(肺傷害・肺損傷)を呈し、呼吸困難等を伴うこともあります。ほかの原因による肺障害を除外するため、表1に示す診断基準が2004年に行われたConsensus Conferenceで定められました。TRALIの基本的病態は非心原性の肺水腫(肺障害)であり、循環過負荷によるものは除外されます。急性肺障害の危険因子(表2)がある場合には、輸血が原因かその病態自体が原因かはっきりしないためpossible TRALIとして区別しています。

表1:TRALIとpossible TRALIの診断基準

(日本輸血・細胞治療学会 輸血療法委員会 輸血副作用対応ガイド(ver.1.0)より)

表2:急性肺障害の危険因子

(日本輸血・細胞治療学会 輸血療法委員会 輸血副作用対応ガイド(ver.1.0)より)

輸血用血液製剤中の白血球抗体(HLA抗体、HNA抗体など)が受血者の白血球もしくは血管内皮細胞などと反応し、肺の毛細血管内皮細胞の透過性亢進が起こることが原因と推定されています。また、白血球抗体以外にも長期保存の赤血球製剤・血小板製剤などに含まれるとされている活性脂質が原因となる場合もあるとされています。患者の白血球抗体が輸血血液中の残存白血球と反応し、TRALIを発症するという症例報告はありますが、わが国では全製剤の保存前白血球除去が行われているため、その可能性は低いと考えられています。

予防策として、欧米では男性血液の血漿製剤への優先使用等の予防策が取られ、功を奏しています。日本でも、400mL由来の血漿製剤のほぼ100%が男性献血者から採血された血液で製造されています。

TRALI and p-TRALI_2018.png

図2:TRALI およびp-TRALI 副作用発現時間(2018年)
TRALI, p-TRALI.png

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TACO

TACO(Transfusion associated circulatory overload:輸血関連循環過負荷)は1940年代から言及されていた輸血の合併症でしたが、最近TRALI との鑑別の重要性から、再び注目を集めています。基本的病態は心不全であり、輸血や輸液の過剰な量負荷もしくは過剰な速度負荷と、患者の心、腎、肺機能の低下などにより、呼吸困難をきたす病態です。

TACOの定義には、ISBT(国際輸血学会)ヘモビジランス部会が提唱している基準(表3)やアメリカNational Healthcare Safety Network Biovigilance Component Hemovigilance Module Surveillance Protocolに記されている定義があります。呼吸不全を伴う心不全である点では一致していますが、現時点でコンセンサスの得られた定義は存在しません。

表3:ISBT Haemovigilance working partyによるTACO診断基準(2018年)

輸血中または輸血後12時間以内に、「急性または増悪する呼吸障害」と「肺水腫の所見(下記AまたはB)」の両方またはどちらかがあり、下記の条件のうち3つ以上を満たすものをいう。

    • 急性または増悪する呼吸障害(呼吸促拍、息切れ、チアノーゼ、酸素飽和度低下など)
    • 下記所見(いずれかまたは両方)に基づく急性または増悪する肺水腫
      ・症状・理学所見 (ラ音の聴取、起坐呼吸、咳嗽、III音の聴取、ピンク色の泡沫状痰(重症例)などの所見)
      ・胸部X線や、心エコーなど非侵襲的方法による心機能の評価 (循環負荷による肺水腫のX線写真所見:胸水、VPW(vascular pedicle width)の拡大、進行性の肺葉血管の拡大、気管支周囲の浸潤像、両側性のKerleyライン、結節状陰影を示す肺胞水腫、心陰影の拡大)
    • 患者の基本的な病態では説明できない心血管系の所見の変化(頻脈、血圧上昇、脈圧拡大、頸静脈怒張、心陰影拡大、末梢浮腫など。血圧はしばしば脈圧の拡大を伴って上昇するが、特に急性の心虚脱の場合は低血圧が前面に出ることもある。何単位も輸血するような場合は血圧をモニターすべきである。)
    • 過剰輸液(正の水分バランス、利尿薬投与や透析による症状の改善、輸血前後の患者の体重変化(通常は体重が増加するが、利尿後は減少することもある))
    • BNPやNT-pro BNP値が年齢別の基準値以上、または輸血前の1.5倍以上の上昇はTACO の診断の補助となる。TACOの診断に有用なNPの正常値というのはなく、輸血前後のNP値の変化が有用である。

図3:TACO 副作用発現時間(2018年)
TACO_2018.png

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