ウイルス

輸血用血液製剤に混入する原因

輸血による感染症のひとつにウイルス感染があります。日本で輸血による感染が確認されているウイルスとしては、HBV、HCV、HIV、HTLV-1、Human Parvovirus B19、HAV、HEV等が知られています。また、これらの他に、海外ではDengue Virus、WNV、Chikungunya Virus等の輸血感染例が報告されています。

輸血用血液製剤にウイルスが混入する原因としては、次の2つが考えられます。

1) 献血者が献血血液のスクリーニング検査対象ウイルスに感染しているが、ウイルス濃度や抗原濃度、抗体価が当該検査の検出感度未満のため検出できない場合
2) 献血者が献血血液のスクリーニング検査を実施していないウイルスに感染しており、かつ無症候性の場合

日本赤十字社が行っている対策

海外からの帰国(入国)後4週間は献血を辞退していただくなど、問診により、感染リスクのある献血者からの献血をお断りしています。

全ての製剤で保存前白血球除去を実施しています。

ウイルスの感染率、輸血患者が発症した場合の影響等を考慮して、以下のウイルスについて血清学的検査や核酸増幅検査(NAT)を実施しています。
HBV、HCV、HEV、HIV、HTLV-1、Human Parvovirus B19

令和2年8月より、HEVの個別NATを導入しました。
医療機関向けお知らせ「輸血用血液製剤の添付文書改訂のお知らせ」(令和2年8月)

HBV感染既往の献血者からの感染を防止するため、2012年8月にHBc抗体検査の判定基準を厳格化しました。

医療機関向けお知らせ「血液製剤の更なる安全対策の実施について」(平成24年8月)

血清学的検査やNATで使用する試薬や機器を常に見直しています。2014年8月からはHBV、HCVおよびHIVについて、2020年8月からはHEVについて献血者の検体を1本ずつ検査する個別NATを導入し、さらなる高感度化を図りました。

輸血用血液との関連性が高いと考えられたウイルス感染症例

輸血が原因と考えられたHBV、HCV、HIV感染者数は以下のとおりです。

HBV_HCV_HIV_2003-2022.png

2003年以降、HBV、HCV、HIV以外のウイルスで輸血による感染が確認された症例数は以下のとおりです(報告年による集計)。Parbovirus B19については飛沫感染の可能性も否定できません。



HAV HEV HGV ParvoB19
2003 1 1
2004

2

2005 1 3
2006 1 1
2007
2008 2
2009 1
2010 1
2011 1
2012 4
2013 1

2014

4

2015

3 1

2016

3

2017

4

2018

7

2019

5 1 2

2020

6

2021

2022

なお、CMVについては、保存前白血球除去製剤の導入以降、小児以上の患者に感染した症例の報告はありません。新生児患者の感染例は報告されていますが、輸血が原因と特定されたものはありません。

医療機関での対応

  • 輸血による感染症のリスクをゼロにすることはできませんので、患者への十分な説明と同意の取得(インフォームド・コンセント)をお願いします。
  • 医師が感染のリスクを考慮し、感染が疑われる場合などには、関係学会のガイドライン等を参考とし、輸血前後の感染症検査を実施をお願いします。また、遡及調査のため輸血時の検体保管の実施をお願いします。
  • 輸血後に、患者の感染症マーカーが陽転化した場合は、速やかに赤十字血液センター医薬情報担当者までご連絡ください。
  • 献血者や他の患者からの感染症情報を入手した場合は遡及調査させていただきますので、ご協力をお願いします。