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東日本大震災活動レポート

医療支援

不安な心に日赤看護師が寄り添う
浪江町民への健康調査

12/11/22

 「母から受け継いだ大切な実家がある浪江に、何がなんでも生きて帰らなくちゃ」
強い口調で訴える本間伸子さん(62)の思いを、北見赤十字病院の彌富(やとみ)祐樹看護師が真剣な表情で受け止めます。日本赤十字社は2012年10月から1年間の予定で、福島第一原発事故によりいわき市に避難している浪江町民約2,000人を対象に、日赤看護師による訪問健康調査を始めました。不慣れな土地での生活にストレスを抱える町民に寄り添い、心の叫びに耳を傾けながら彼らの健康を見守る取り組みです。

(写真左:健康調査事業の拠点事務所は、赤十字血液センターいわき出張所の会議室に設置)

「浪江の仲間に会いたい」

 本間さんは東日本大震災前に母親を亡くし、現在はいわき市の借り上げ住宅に一人で暮らしています。いわき市に来た当時は、「避難民」「税金も払わずに住んでいる」などの心ない言葉を浴びせられることもあり、「“私だって好きで浪江町を離れているわけじゃない”と心で反論したわ」と悔しい思いをしたことを明かしてくれました。
 現在は積極的に地域ボランティアに参加しているという本間さん。「震災を経て、助け合いが大事だって痛感したんです。被災したペットの世話などに関わり始めました。前は仕事一辺倒だったのに」と、いわき市での新しい生活にも慣れてきている様子です。
 今一番望んでいることは、ばらばらになってしまった浪江の仲間たちとの再会。「まだ連絡が取れない友人もいます。行政で、散らばってしまった浪江町民の連絡先をまとめた電話帳をつくってくれたらありがたい」と話します。

(写真中:本間さんの話に耳を傾ける北見赤十字病院の彌富看護師(右)と日本赤十字看護大学の守田教授(奥)。自宅を訪問して聞き取り調査を行うため、地図上で訪問先を一軒一軒探す。聞き取りは二人一組で)

一語一句、聞き逃さない構えで臨む

 10月中旬から健康調査を行っている彌富看護師は看護師歴8年目。避難されている方々の生活はこれまでニュースなどで見聞きしていたものの、「“ずうっとよその家に泊まりにきている感じ”という避難されている方々の思いや、地元住民とのあつれきなどを聞いて、事態の深刻さを感じます」と語ります。
 避難してきた方々のお宅を訪ねる際、彌富看護師が心がけているのは心のそばに寄り添う姿勢。「どんな思いで話してくれているのか、何を一番伝えたいのか、一語一句、聞き逃さないように気をつけています」
 今回の訪問健康調査について、日本赤十字看護大学の守田美奈子教授は、「悩みとともに、望んでいる支援も具体的に話してくださるので事業の手ごたえはあります」と本事業の成果に期待を寄せます。そのうえで今後のカギになるのは「連携」と指摘。「把握したニーズからどういう支援につなげていくかを、日赤と行政が連携して、それぞれが活動できる部分を模索して見つけていかなければ」と、始まったばかりの事業の先を見据えます。

(写真上:健康調査事業は新しい試みのため、連携の枠組みづくりから始める必要があると語る守田教授)


中長期的な支援に

 この健康調査で明らかになった個人の方々の健康問題は地域の保健師に引き継がれる一方で、調査によって浮き彫りになった課題は関係機関への提言、そして日本赤十字社による中長期支援の形成に役立てられます。