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東日本大震災活動レポート

こころのケア

顔が見える活動で生まれた信頼
岩手県支部の「こころのケア」、6カ月の軌跡

12/02/22

 「人生では、自分でどうしても解決できない困難に直面することもあります。そんなとき、“自分は努力が足りない”“自分は無力だ”と思っていませんか」
 テープから音楽とともに流れる落ち着いた男性の声。横になり目を閉じた参加者は、すっかりリラックスモードに入った様子です。
 日本赤十字社岩手県支部は2011年9月10日から、毎週土曜日、県の臨床心理士会と協力して、宮古市中里地区の仮設住宅の集会所で「皆さんが元気になる活動」を展開しています。2月4日は血圧測定や健康相談、音楽をかけてのリラクゼーションなどを実施。午前の参加者が午後の回にも顔を出すなど、好評ぶりがうかがえます。

中里地区の仮設住宅で単身者に割り当てられたのは、四畳半一間の部屋。友達を招いてお茶を飲むスペースもありません。入居者同士の交流の場として集会所があるものの、周りが知らない人ばかりということもあって、集まりはよくありませんでした。そんなとき、岩手県支部は社会福祉協議会からコミュニティーづくりの依頼を受け、本活動を始めたものです。

工夫凝らした企画にリピーター増

 「始めたころは10人ぐらいでしたが、今は午前と午後の回合わせて40人ぐらいが参加してくれるようになりました」
 活動をコーディネートしてきたのは岩手県支部の阿部幸子参事。協力してくれる奉仕団の特長を生かして、編み物、読み聞かせ、お話など毎回違った企画を立ててきました。単に物を届ける支援と違い、お互いの顔が見えて、人間関係を築いていけることに本活動の利点があると阿部参事は言います。
 活動の様子はその都度写真に収め、次の集まりの時にミニアルバムで披露します。「自分が映っている写真があれば自由に持っていってもらっています。それが次回も来ようというきっかけにもなるし、とても喜ばれています」(阿部参事)

入居者の気持ち尊重した息の長い支援へ

 一方で、男性やこれまで参加したことのない人に、どうやってアプローチしていくかが今後の課題です。2月4日も、男性向けに将棋を3セット用意していましたが、男性の参加者はゼロ。朝方に仮設住宅全戸を回って参加を呼びかけたという雫石町赤十字奉仕団の南野イクさんは「家にいても応えてくれない方がいて、なかなか難しいです」と苦労を語ります。

 阿部参事(右写真)は「家も仕事もすべて失った人々にとってみれば、前向きな気持ちなんてまだまだ持てないと思います。その中で、今まで一度も経験したことがない町全体の再建をやっていくのは大変なこと。外からの働きかけで、少しでも入居者の方々の力になれればと思っています」。