島々に支援を届けるために~パプアニューギニアで見た、災害対応を支える現場~
パプアニューギニアは、600を超える島々が広く点在する国です。サイクロンや洪水、地震などの自然災害がたびたび発生しており、2026年4月には、サイクロン「マイラ」による大きな被害が出たため、赤十字は現地で支援活動にあたりました。
今回は、2026年6月から国際赤十字・赤新月社連盟(以下、IFRC)パプアニューギニア国事務所に事業管理要員として派遣された、日本赤十字社医療センターの水野看護師が現地で経験した業務の様子をお伝えします。
オフィスでの訓練も災害対応に通じる
派遣開始時、パプアニューギニア赤十字社はサイクロンの被災地への支援を続けながら、並行して職員や赤十字ボランティアが、災害発生時の情報収集や役割分担、支援の進め方を確認する訓練や研修を行っていました。迅速な災害対応の準備は、オフィスでも行われているのです。IFRCも、災害対応に従事する同社の支援を行っていました。
職員向けに行った災害時のこころのケアの研修では、「3年後の自分たちの組織」をテーマに議論したり、文化に即したガイドラインを作成したりするなかで、未来に向けたアイデアが次々と出されました。
意見交換を行う職員たち©IFRC/PNGRCS
話し合った内容を発表©IFRC/PNGRCS
支援を支える「倉庫」と日頃の備え
災害対応に欠かせないのが、毛布や生活必需品、衛生用品などの救援物資を保管する倉庫です。物資をあらかじめ備蓄し、数量や保管状況を確認しておくことで、必要なときに被災者へ届けることができます。
サイクロン「マイラ」への対応では、備蓄されていた救援物資が活用されました。その後、パプアニューギニア赤十字社とIFRCが、今後の災害に備えて物資の補充と搬入を行いました。
搬入作業では、日本でもおなじみのバケツリレーのように互い違いに並び、物資を受け渡す方法を紹介しました。参加者から「その方が楽に作業ができそうだ」という声が上がり、互いに学びながら作業を進めました。
倉庫管理をチームで行う水野要員(中央)©IFRC/PNGRCS
救援物資をバケツリレーで倉庫へ搬入する様子©IFRC/PNGRCS
フィールドに足を運んで見えた、支援を届ける難しさ
2026年7月、サイクロン「マイラ」の被災地域で行われた支援後モニタリングに参加し、ミルンベイ州の3地域で住民やボランティアへの聞き取りを行いました。ミルンベイ州も多くの島々からなり、遠隔地への移動は船に限られる場合があります。海の状況によっては移動できず、最も遠い島までは最大48時間かかることもあります。
住民からは、支援物資の毛布が子どもたちの防寒に役立ったことや、住宅修復用の工具セットが生活再建の助けになったことが語られました。一方で、物資の配布には時間がかかったという声も聞かれました。

被災地の方に聞き取りを実施©IFRC/PNGRCS
物資だけでなく、仕組みと人を備える
今回の派遣を通じて、大洋州の島々で行われているさまざまな災害対応支援について知ることができました。災害対応には、救援物資だけでなく、それを届ける仕組みや職員・ボランティア・地域住民にとってわかりやすい明確な手順、そして行動できる人材が欠かせません。さらに通信やインターネットが十分に使えない状況も想定し、オフィスと現場が情報を共有できる方法を整えておくことも重要です。
地域の地理や文化、活動環境に合わせて支援を考え、平時から訓練、物資管理、人材育成を積み重ねることが、人びとのいのちと暮らしを守る力になります。
インタビューの中で聞いた、地域の住民の「これからの活動がより良くなるように、私たちの声を届けてほしい」という言葉が印象に残っています。この言葉は、支援を受ける人々の思いを未来につなぐ大切な声です。こうしたつながりが過去から未来へ受け継がれ、赤十字の理念を共にする仲間と活動を続けられることは、決して当たり前のことではありません。私もこの大きなつながりの一員として、今回得た学びを次の支援へとつなぎ、未来へ続く赤十字の活動に貢献していきたいと思います。
パプアニューギニアをはじめとする大洋州地域では近年、気候変動の影響がますます深刻化しています。サイクロンや干ばつなどの災害が激甚化し、その発生頻度も増加しています。多数の島が点在するため、物流や通信のアクセスも限られ、災害への対応力にも課題があります。日本赤十字社はIFRCとともに、大洋州地域の支援を継続していきます。