広大な大地の隅々まで支援を届けるために ~モンゴル赤十字社の取り組み~

ゾドの被害状況調査を行うモンゴル赤職員

ゾドの被害状況調査を行うモンゴル赤職員 ©IFRC

モンゴルの冬の平均気温はマイナス20℃程度。極寒の冬を迎えています。2020年1月2日、モンゴルの国土の50%以上がゾド(夏の干ばつと冬の厳しい寒さや大雪により引き起こされる自然災害)の被害を受ける可能性がある、とモンゴルの気象環境監視庁が発表しました。

モンゴル赤十字社(以下、「モンゴル赤」)は、1939年の設立以来、このような自然災害時の救護活動等を行っています。また、2016年にはモンゴル赤十字社法(同社の組織機構や役割を定める国内法)が閣議決定されるなど、国内での認知度を高めている社です。

災害救護活動をはじめ、地域の様々な人道ニーズに草の根レベルで対応しているのが各地に組織されている モンゴル赤の支部です。モンゴル赤は支援を必要とする人びとに迅速かつ継続的に支援を届けるために、国際赤十字・赤新月社連盟及び日本赤十字社(以下、「日赤」)と協力し、支部の体制を強化する事業に取り組みました。例えば、各支部が自力で活動費を集められるよう、ファンドレイジングのスキルアップを図るとともに、災害救護、ユース・ボランティア、社会福祉、保健衛生等の活動を自力で管理・運営できるよう、職員やボランティアのマネジメント能力を高める活動を実施しました。

今回は、日赤が同事業を支援した2015年7月1日から2019年12月31日までの活動や成果の一部をご紹介します。

各地域の活動拠点であるモンゴル赤十字社支部の強化

♦ 急激な都市化が進む地域で支援を必要とする人びとに(チンゲルテイ地区支部)

ベッドシーツを縫う赤十字ボランティア

ベッドシーツを縫う赤十字ボランティア

首都ウランバートルでは、都市部への人口集中が加速し、市街地が拡大しています。チンゲルテイ地区支部はウランバートル内の支部の一つで、この地域では約18%の人々がゲル地区と呼ばれる居住区に住んでいます。ゲル地区では人口流入により住居がひしめき合っているのに加え、電気などのインフラ整備が進んでおらず、暖をとるために火をおこすことで発生する火災が多く、同支部は被災者に救援物資を配付する活動などを行っています。

人びとのニーズに応えるために、活動資金の調達は不可欠。同支部では、日赤の支援で2016年に整備した裁縫設備を使ってシーツや救急セットを入れるポーチ等を作成・販売し、支部の収入としています。同支部が2018年に裁縫で得た収入は、2015年の約1.6倍でした。また、ゲル地区の人々の裁縫の職業訓練の場ともなり、個人の技術習得に繋がっています。

♦ アクセスが困難な場所に住む人びとにも支援を(ドルノド県支部)

社会福祉センターのボランティアとガンボルド事務局長

社会福祉センターのボランティアと
ガンボルド事務局長(左)

ドルノド県はモンゴルの最東部に位置し、ロシア連邦と中華人民共和国と国境を接する、北海道の約1.5倍の大きさの県です。ゾドや洪水の被害をほぼ毎年受けており、県内の人びとの支援にモンゴル赤ドルノド県支部の存在は欠かせません。同支部は、日赤の支援で2019年に社会福祉センターを設立しました。同支部のガンボルド事務局長によれば、広大な県内の隅々まで支援を届けるために、支部職員は冬には2~3日かけて遊牧民の住居まで訪れることもあります。同センターでは住民の健康管理や増進を図るだけでなく、モンゴル赤の認知度の向上や政府の助成により支部の収入を増やすことで、遠方に住む人々にも支援を拡大するための基盤を整備することが目的です。

地域のニーズに沿った活動の提供を支えるボランティア

ユース・ボランティアのソミヤさん ユース・ボランティアのソミヤさん

ボランティアのタニヤさん ボランティアのタニヤさん(右手前)

ソンギノ・ハイルハン支部ボランティアのソミヤさんは、大学に通いながらユース・ボランティアとしてゲルに住む一人暮らしの高齢者を訪問し、冬に備えてゲルの壁を補修をする等の活動を行っています。「ボランティアとして技術や知識を向上し、人々の役に立てるようになったことを本当に嬉しく思っています。大学の仲間と活動をできることが嬉しい」、と笑顔を見せます。

「自分たちの活動により喜んでくれる人々の姿を見るのが嬉しい。赤十字でボランティアをすると、困っている人々を助けることができ、コミュニティに恩返しすることができる」と語るダルハン・オール支部ボランティアのタニヤさんは、地域の方たちと手芸品を作成しながら、集まった人々との交流も楽しんでいます。

災害などのリスクにさらされた時、真っ先に対応するのは外部からの援助ではなく、そこに住む人々です。地域の人びとが赤十字に求めるサービスを、自立的・持続的に届けられる力を着実に養ってきたモンゴル赤。本事業を通じて強化された各支部の資金源や、人材を基盤に、今後も地域のニーズに沿った活動を持続的に提供していきます。

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