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東日本大震災活動レポート

こころのケア

赤プリで暮らす福島避難者 日赤臨床心理士が見た苦悩

11/06/13

 3月末に閉館したグランドプリンスホテル赤坂(通称:赤プリ〈東京都千代田区〉)は現在、震災被災者の一時避難施設になっており、福島県などからの避難者約800人を受け入れています。日本赤十字社医療センターの臨床心理士、秋山恵子さんは、ホテルに設けられた健康相談室で週に2日、彼らの心理支援を行っています。避難者が抱える苦悩やそれを解消するために望まれる支援についてお話を聞きました。

■安住できない不安
 最初は話し相手になることで避難者のストレス軽減を図ろうと考えた秋山さん。しかし、投薬治療など精神科医によるケアが必要な方も見受けられ、思っていた以上に避難者の心には負荷がかかっていることを知りました。
 負荷がかかる一番の原因は「住まいが決まらないことにある」と秋山さんは指摘。現在身をおいている赤プリの避難所も6月末までの期限付きです。「“その後はどうするのですか”と聞くと、“考えないようにしている”と明るく言う人もいます。考えないようにすることも一つのコーピング(ストレス対処)メカニズムなのではありますが、住むところを拠点に、仕事や子どもたちの学校などがつながっていきます。それがなかなか決まらないことには、人々の生活は安定しにくいと思います」


■支える力を生きる活力に
 ホテルの生活環境にも秋山さんは不安を覚えています。受け入れる方々もいろいろな工夫をされていますが、どうしても提供される食事は3食ほとんどがレトルト食品と大差ないもの。外に行けばお店はいくらでもありますが、慣れない土地、ましてや都心のど真ん中に出るのをためらう高齢者は多いといいます。「避難所の食事で糖尿病などの持病が悪化するケースも。自炊できる環境が望まれています」
 ホテルでは1世帯ごとに個室が割り当てられているため、ほかの避難者がどんな生活をしているかわからないのが実情です。「ホテル内でコミュニティーを作る必要があります。グループでお茶を飲むとか、なんでもいい。誰がどうイニシアティブをとるのかが今後の課題です」
 普段勤務する医療センターでは、被災地から戻った救護班のストレスケアを担当している秋山さん。被災者を支える人をさらに支える存在が必要だといいます。「避難されている方にも、支えられるばかりでなく、自分が誰かを支えているという気持ちを大切にしてほしい。実際に避難者の中にはそうした気持ちを持って、ホテル近隣の保育園でボランティアを始めている方もいます。それは生きる活力にもつながります」

(写真:秋山恵子さんは「以前、親を失った子どもたち接するボランティアなどを通じてグリーフ(悲嘆)ケアを勉強していたことが今回役立ちました。家を失うことは家族を失うことと同じくらい辛いことです」と話します)
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