トップメッセージ

- 日本赤十字社 社長
大塚義治

1970(昭和 45)年東京大学法学部卒業、厚生省に入省。同省官房長、保険局長などを経て、厚生労働事務次官に就任。退官後、2005(平成 17)年4月から日本赤十字社副社長を 14 年あまり務め、2019(令和元)年7月に社長に就任。

共感を呼ぶ理念のもとに

私が赤十字の一員となったのは15年ほど前ですが、そのときの「衝撃」は今も鮮明に記憶しています。
その年に開かれた愛知万博で、数多くのパビリオン中で最小だった赤十字パビリオンが大ブレークをし、最も人気の高いパビリオンとなったのです。
若者を含むこれほど多くの人々が、赤十字に関心を寄せてくれている。その理由とは、いったい何なんだろう、と私は考えさせられました。
それは、「苦しんでいる人々を見過ごせない、手を差し伸べたい」 、「人間のいのちと健康と尊厳を守る」という、赤十字の簡素で力強い理念が、人種や文化や地域を問わず、時代をも超えて、広い共感を呼ぶからではないでしょうか。
赤十字は、今から約160年前、アンリー・デュナンという一人のスイス人青年実業家の戦場での体験から生まれました。「傷ついた兵士はもはや兵士ではない、人間である。人間同士としてその尊い生命は救わなければならない」というデュナンの提唱は世界中に広がり、私に言わせれば、わずか160年の間に、赤十字の国際組織(国際赤十字・赤新月社連盟)に加入する国・地域は、今や192にのぼっています。

-- 愛知万博の赤十字パビリオン(国際赤十字・赤新月館)では、プラネタリウム方式のシアターでの映像ショーなどで、戦争、自然災害、疾病で苦しむ人を救うために人種、民族、宗教を超えて助け合う世界の人々の姿が展示された。

多くの人々に支えられてきた赤十字、その重み

日本赤十字社は、創立以来140有余年を経て、現在では、災害救援をはじめ、医療や福祉、ボランティアの組織化や救急法等講習の普及等、「人間のいのちと健康と尊厳を守る」ために様々な事業を展開しています。これらの事業は、赤十字の理念に共感し、その活動資金を出資してくださる約18.2万人の個人会員の方々や約8.3万の法人会員、約117万人のボランティア、年間のべ約504万人にものぼる献血者の存在などによって支えられています。そうした人々の想いをさらに広げ、連携の輪を作り、具体的な活動につなげていくことが赤十字の役割だと考えています。
今日に至るまでには、何度も深刻な困難に直面しましたが、これを乗り越えてくることができたのは、赤十字の諸先輩たちの揺るがぬ信念と献身的な努力によるものです。この歴史と伝統は、何にも代え難い貴重な財産です。私たちには、これをきちんと継承していく責任があります。

-- 災害対応の機動力を高めるために実施された救護訓練の様子。

変わりゆく社会と新たな課題への挑戦

しかし同時に、現代社会は、激しい変動の真っ只中にあります。人口構造の変化、人や技術や情報などのグローバル化の進展、激動する国際政治経済情勢、地球温暖化など自然環境の変化といった中で、多様で新しい人道問題も次々に生まれてきています。
私たちは、こうした変化に、柔軟に、的確に対応していかなければなりません。そのために重要なことは、我々に求められているのは何かという問題意識を常に持ち、仲間たちと自由で活発な議論を交わし、そのうえで、新しい課題に果敢に挑戦していく姿勢であると考えています。
私たちには、赤十字の旗の下に活動する仲間と、私たちの活動に期待し、信頼してくれている多くの人々がいます。そうした人々の期待と信頼に応えるために、これから新たに加わってくれる仲間たちとも手を携え、変化の激しい現代社会における様々な人道問題に、ともに挑戦し、歩みを進めたいと思っています。

記載の数字は2022年3月、4月時点のものです。
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