コロナ禍の弱者を支える、イタリア赤十字社のボランティア 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が依然として蔓延しているイタリア。人道支援の最前線で活動するイタリア赤十字社の事業局長ロベルタ・フサッキアからのリポートです。

感染ピーク時にホームレスの健康調査を行うイタリア赤十字社ボランティア看護師

欧州でも感染者数の多いイタリア  一時は死者が世界最多となり…

COVID-19の感染は、世界中で今もなお拡大しており、予断を許さない状況です。イタリアは感染者数が24万3736人、死者数が3万5017人を超え※、一時は死者数が世界最多となり、医療崩壊の危機に見舞われるなど、欧州の中でも被害が大きい国の1つです。現地のイタリア赤十字社(以下、イタリア赤)はCOVID-19感染の発生当初から最前線で活動しており、その中には24時間体制で1日平均600件にも及ぶ救急搬送も含まれます。

※7月17日時点

COVID-19関連の活動に、4万4000人以上のボランティアが参加

イタリア赤のCOVID-19への対応で重要な役割を担っているのがボランティアです。これまでに4万4000人以上のボランティアがCOVID-19関連の支援事業に参加し、空港での検疫、ホームレスや貧しい人々の健康調査、非常事態宣言下での支援物資の配布、電話でのこころのケアや多言語での情報提供支援などを行ってきました。

IT系企業で働く22歳のボランティア、ルドヴィカさんもその1人。彼女はイタリア赤の施設で受付を担当し、陽性患者と最初に対面する業務を務めています。ルドヴィカさんの胸を締め付けるのは苦しむ患者たちの姿だけではありません。時には陽性で隔離中の夫に会わせてほしいという80歳の女性からの悲痛な声に耳を傾けることも。ウイルスがもたらす受け入れがたい出来事、そして感染への不安に直面しながらも、ルドヴィカさんはマスクと手袋を着けた姿で施設の受付に立ち、患者とその家族たちを支え続けています。

(動画には英語字幕がついていますがYouTubeでは設定により日本語字幕も表示可能です)

また、弁護士のマルコさんもイタリア赤のボランティアとして支援活動に従事。外出が困難で薬局に行けない人々のために、医薬品を自宅へ届けるのが彼の役目です。マルコさんは「私たちが想像力を働かせ、相手の苦しみに思いを寄せることができれば、より良い世界へ変えていける」と、ボランティア活動に力を注ぐ日々を送っています。

イタリア赤は食料品や医薬品を届ける救援活動も行いました。その中にはホームレスへの食事、貧困層へのフードバスケットなどの配付もあり、はじめは1500セットほどだったフードバスケットの配付数が、ニーズの高まりにより1ヶ月足らずで5万4000セットにまで増加しました。

私たちの強みは、広範囲に強力なボランティアのネットワークを持っていることです。北から南までイタリア全土に広がる600以上の支部のおかげで、COVID-19の危機でも強力な救援活動を展開することができました。これまでと変わらず、すぐに対応し、最も支援の必要な人々を助けるために献身的に行動してくれたボランティア。彼らは私たちの組織の中核であり、COVID-19への対応でボランティアのすばらしい価値をあらためて実感しました。

イタリア赤十字社事業局長ロベルタ・フサッキア