世界を揺るがす気候変動 、「モデルビレッジ事業」でレジリエンスを高める

世界中で起きている気候変動を原因とした自然災害は、人道危機へと直結する危険性をはらんでいます。気候変動そのものを止めることは難しくても、自然災害に対するレジリエンス(立ち向かう力、回復する力)は高めることができます。日赤が今年スタートさせるルワンダでの支援事業のリサーチに同行した日赤福島県支部職員・高橋郁弥が、現地の様子をリポートします。

モデルビレッジ事業とは

ⓒAtsushi Shibuya / JRCS
リポーター 高橋 郁弥(たかはし ふみや)
1991年生まれ。日赤福島県支部にて赤十字の講習事業や救護活動に従事。赤十字救急法指導員、幼児安全法指導員、防災教育事業指導員。誰かの役に立ち、支えになる仕事をしたいと日赤に入社。「実際に現地に行き、人々と接することで初めて気づくことがある」と日々の業務から学ぶ。

貧しく脆弱(ぜいじゃく)な農村地域のレジリエンス(回復する力)を高めるため、ルワンダ赤十字社が始めた事業です。健康・衛生・水・暮らしなどの生活環境の向上を目指した取り組みを続け、現在、数カ国の赤十字社がこの事業をサポートしています。これまで日赤はルワンダの保健や防災の啓発事業を支援してきましたが、新たに「モデルビレッジ事業」に参入し、関係性を深めていきます。

MODEL VILLAGE REPORT #1 支援を待っている村

ルワンダで、他国赤十字社が先行して行っている「モデルビレッジ事業」。いよいよ今年から日本赤十字社も本格的に参入します。日赤が支援を予定しているのは南部(ギサガラ郡)の5つの村。そのうちの一つ、ニャビハマ村を訪問しました。この村では生活に必要な水を得るために片道約30分、20kgにもなるポリタンクを持って1日に何往復もします。苦労して運ぶ貴重な水は手や体を洗うには足りず、不衛生で病気にかかりやすい状況で、水くみのために学校にいけない子もいました。自分も一緒に体験したことで、子どもたちを水くみ作業から解放する支援が必要だと痛感しました。

MODEL VILLAGE REPORT #2  水と衛生

ⓒAtsushi Shibuya / JRCS

オーストリア赤十字社がモデルビレッジ事業を行ったキリンビ地区の村は水環境が劇的に変化しました。村に大きな貯水タンクが設置され、村人は水くみから解放されました。トイレも改良され、コンクリート製で悪臭もなく清潔に保たれています。簡易手洗い場も設置され、家の中に雑菌を持ち込まないよう徹底するまでに改善されました。支援以前は各家庭にトイレはなく、村人が穴を掘って周りを囲っただけの場所を共同のトイレとして使用。子どもが深い穴に落ちる危険性もあったそうです。ニャビハマ村との違いを目の当たりにし、水衛生の支援の重要性を思い知りました。

MODEL VILLAGE REPORT #3  教育・啓発

ⓒAtsushi Shibuya / JRCS

実はルワンダでは2012年から日赤による保健や防災の啓発活動が行われていました。その活動が新たにモデルビレッジ事業の柱の1つとなります。感染予防の啓発に効果を上げているのがモバイルシネマです。娯楽の少ない場所で手洗いの方法などを紹介したアニメ映画を上映し、楽しみながら村人たちに正しい知識を身につけてもらう工夫がされていました。また、山や丘の多いルワンダで無計画な森林伐採が進み、そこへ繰り返し豪雨が襲い地滑りが頻発しています。木を切らず煙も出ない環境に優しいバイオマス燃料へ切り替えることで、薪(たきぎ)を使わずに調理ができ、燃料を売って収入も得られるようになりました。

MODEL VILLAGE REPORT #4  栄養指導

ⓒAtsushi Shibuya / JRCS

モデルビレッジ事業では、子どもの栄養失調を防止する取り組みも行われています。母親や子供を集め、ルワンダ赤十字社のボランティアが牛肉、豆、ほうれん草や牛乳といった食材を調理して無償提供、バランスよく栄養を取ることで病気も予防できることを指導します。今の日本では考えられませんが、栄養バランスなど考えたこともなく、毎日毎食、豆料理を1品しか食べない家庭もあると聞き、知識の普及の大切さを実感しました。

MODEL VILLAGE REPORT #5  生計支援

ⓒAtsushi Shibuya / JRCS

地域の連帯を強化するモデルビレッジ事業には、共助のシステムが多く取り入れられています。個人で耕作地を持つことが難しい農民のために、赤十字が土地を借り、村人たちが管理や効率的な作業を学んで実践する共同菜園や、家畜を提供することで生計を立て直してもらい、家畜に子どもが生まれたら別の家に寄付するという仕組みがあります。村人同士が共同で貯金をし、必要なところに融資するグループも結成されるなど、地域のつながりが強いことに驚きました。これは、1994年に起きた大虐殺から今に至る過程で共助の精神が根付いたルワンダならではの成功例だということを忘れてはなりません。

ルワンダでのリサーチを終えて

東日本大震災の後、ルワンダ赤十字社から多くの支援をいただきました。その寄付は、厳しい生活の中から1食抜いた分のお金を寄付するなどして集められたものでした。支援へのお礼を各地で伝えると、「困ったときはお互い様だ」と誰もが答えます。ルワンダでは25年前に大虐殺があり、その影響で人々の心深くに助け合う精神が根付いています。そんなルワンダの方々に、支援の恩返しをする。日赤の本格参入によって、まだ支援が届いていなかった村の生活が変わることが、自分のことのようにうれしく感じました。

貧困な地域がさらに貧困化する… 気候変動が生みだす負のループ

ⓒAtsushi Shibuya / JRCS
日本赤十字社 国際部 開発協力課長  辻田 岳(つじた がく)

いま、世界のあらゆる地域で、これまでにない高温・干ばつ・豪雨が交互に来て、自然の気候に頼る農業が大深刻なダメージを受けています。ルワンダも例外ではありません。農村の貧困が進んだのは、気候変動により雨期のタイミングがつかめなくなり、いつまでも種まきができず、あるいは種まきしても流され…と、どんどん収穫量が落ちていったから。このように、脆弱(ぜいじゃく)な農業は、ダメージから回復できないまま次のダメージを受け、さらに食糧不足から子供達の栄養失調へ、という負の連鎖が起きています。赤十字は世界的な取り組みとして、脆弱な地域の回復力を高め、危機に立ち向かえるようになることを目指し、さまざまな事業を展開しています。そして日赤が毎年募集している「海外たすけあい」の寄付金が、この活動を支えているのです。

この記事は赤十字NEWS 2019年12月号の掲載内容をオンライン用に編集したものです。
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