"命を救う技術"があることを、多くの人に、伝えていきたい

赤十字とわたし_no.003/日赤佐賀県支部 水上安全法・幼児安全法 指導員 大渡千恵さん

「プールや水遊びは楽しい。私も水が大好きです。けれど、水は命を奪う怖いものにもなります。自分や周りの命を守る、水との楽しい付き合い方ができたらいいな、と思って指導しています」(大渡さん)

プールにポテトチップスの袋を投げ込むと、子どもたちは歓声をあげて我先にと手をのばし、袋をおなかにのせて上手に水に浮かびます。

ポテトチップスの袋が浮き袋になる。ペットボトルや、スーパーの袋、ランドセルも。このように身近な物の浮力を借りながら、姿勢のバランスをとり、できるだけ長く水に浮き続けるためのテクニック「浮いて待て」は水上安全法の指導内容の1つです。私は水上安全法指導員として、10年間この指導を行っています。そして10年間、同じメッセージを講習の最後に伝えています。「今日学んだことを生かして、自分の命を守り、お友達や家族の命も守ってください」。

赤十字の講習の1つである「水上安全法」は、水の事故防止と、もしもの時の対処法を学ぶ講習です。夏になると、プール指導の一環として学校から指導要請があり、出張講習を行います。子どもたちが自分の、そして周囲の命を守る技術を学べる貴重な機会です。

しかし、指導員になりたての頃に残念に思ったのは、プール指導は天候で中止になることが多いこと。プールの中止はわずか1日のことでも、子どもたちが水の事故から身を守る術を学ぶ機会は、一生なくなるかもしれない。そこで、プール指導ができなくても講習ができるプログラムを企画しました。私は大学で幼児教育を学び、保育園・幼稚園の先生をしていました。なので、子どもが喜ぶゲームを考えたり、わかりやすい絵を描くことが得意。その特技を生かして、大きな紙にイラストを書き、ラミネート加工してマグネットをつけた「パネル」を作り、水上安全法を学べるクイズを考えました。

このパネルを使った講習は好評で、赤十字ボランティアの仲間からも依頼され、幼児安全法でもパネルを作成、佐賀県支部の他の指導員もこのパネルで講習を行うようになりました。

いざというときに・・・

いざというときに命を救える、そのスキルと勇気を持った人が増えることを願っています。命を救うというと大げさに聞こえるかもしれません。また、医師でもないのにそんなことは無理だと感じる方もいるかもしれません。しかし、目の前で誰かが事故に遭ったり、急に倒れたりしたとき、命をつなぐことができるのはその時すぐ近くにいる人です。私も、「一次救命処置」を学んでいて良かったと思う場面が何度もありました。

例えば8年前、車で走行中に、バイク事故が起きたばかりの現場に遭遇しました。そのバイクの運転手は30代くらいの男性。車を追い越そうとしてガードレールに衝突し、事故の衝撃で地面にたたきつけられ、意識がありませんでした。現場にいた人々は立ちすくんで動けず、歯科医師の方が救急車を呼び、心配して寄り添っていました。このような場合、救急法では心臓と肺の動きを止めないように胸骨圧迫(心臓マッサージ)・気道確保・人工呼吸、そしてAEDを行うことが一次救命処置の最優先事項と学びます。私はすぐに手順どおりに心肺蘇生を開始し、私に続いて処置に加わった看護師の方と交代しながら胸骨圧迫を続け、救急車を待ちました。

こういったことは、いつどこで、どのようなきっかけで起こるか分からず、家族や大切な人の身にも起こるかもしれません。救急車が来るまでの間に心肺蘇生やAEDなどの救命処置を行えば、救命の可能性は約2倍になるというデータがあります。いざというとき大切な人の命を守るために、一人でも多くの人が“命を救う技術”を身につけ、当たり前に実践される、そんな社会になることを願って、ボランティアで指導員を続けています。

大渡さんってどんな人?

原香織さん(日赤佐賀県支部 参事 兼 講習普及係長、支部の講習担当)

大渡さんは、アイデアとエネルギーにあふれ、「赤十字は自分の居場所」と活動に取り組んでくださいます。私が信頼する講習指導員でもあります。赤十字の講習は、技術だけでなく誰かを救うために行動を起こす“勇気”も育てるものだと思いますが、彼女は間違いなく技術も勇気も育てる指導員です。

鈴木容子さん(日赤佐賀県支部 奉仕団支部指導講師、ボランティア仲間)

楽しくわかりやすい講習をするために、手作りの資材など前準備を工夫する姿にいつも感心します。講習だけでなく、災害時には防災ボランティアとして幅広く活躍されており、リーダーシップとメンバーシップの両方を持ち合わせ、明るく元気で頼もしい姿は、私たち指導員の自慢できる仲間です。

松石健児さん(日赤佐賀県支部 水上安全法 指導員、ボランティア仲間)

水上安全法の指導員を養成する講習は男性でも音を上げるほどハード。その講習で知り合った時から彼女のタフさに感心しています。世話好きで、彼女がいるだけでその場が明るくなります。ライフセーバーや救急救命士は命をあずける仲間をバディと呼びますが、彼女は心から信頼できるバディです。

この記事は赤十字NEWS 2019年8月号の掲載内容をオンライン用に編集したものです。
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