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プレスリリース
日赤医療チーム第1班が帰国報告会を行いました
10/02/26
日本赤十字社は、2月23日、ハイチ大地震の被災者救援のために、約1カ月間医療活動を行ったチームの帰国報告会を行いました。テント型仮設診療所にて、皮膚移植手術なども含む治療にあたった岡村、大規模予防接種キャンペーンに携わった関塚、それらの活動を事務管理や技術面で支えた森、山田、そして通訳と広報を担当した五島がそれぞれ、報告しました。最後に、これまでにも多くの大災害の救援活動に携わってきた粉川が、雨季に向けて仮設住宅の再建など復興を急ぐ必要があるが、同時に国際赤十字としても経験がない都市型の大規模災害で、復興には様々な課題があることを報告しました。
■変化する医療ニーズに応えて
日赤医療チーム第1班はハイチの首都ポルトープランスで、約15,000人が避難生活を送るキャンプの隣に、1月24日からテント型の診療所を開設。簡単な手術を含め、1日約100人前後、2月17日までに計1,721人の患者を診療しました。
岡村直樹医師(熊本赤十字病院)は外傷で右足の皮膚を失った3歳の男の子に、足の付け根の皮膚を移植する手術を施しました。岡村医師は「本来は、被災地でも特殊な手術は病院が担うが、その多くが倒壊して患者を受け入れられなかった」と言います。
地震による外傷やトラウマなどの患者は全体の16%にとどまり、日を追うごとに糖尿病などの持病や頭痛、下痢などの通常疾患を治療するケースが増えています。
診療所には日赤職員だけでなく、医師や看護師や薬剤師ら15人のハイチ人スタッフが加わっており、今では中心的な役割を果たしています。日中の気温が35度を超える厳しい条件の中、スタッフ全員で日々変わる患者のニーズに対応しています。
(写真)診療所内で手術にあたる岡村医師
避難生活が長引き、感染症が懸念される中、ハイチ政府と世界保健機関(WHO)はポルトープランスの避難民キャンプを対象に予防接種を計画し、赤十字が実施にあたりました。
診療所を受診するすべての外傷患者に破傷風ワクチンを接種。避難民キャンプではハイチ赤十字社のボランティアが接種を行い、日赤の医療スタッフはその活動をサポートしています。避難民キャンプでの予防接種を開始した2月6日から10日間で、21,865人に破傷風やジフテリア、百日ぜき、はしか、風しんといった予防接種を行いました。
実際に、避難民キャンプでの予防接種にあたった関塚美穂看護師(名古屋第二赤十字病院)は、「キャンプはトイレなどの衛生設備が不足し、感染症が発生すると、たちまち広がる危険が高い」と予防接種の必要性について語ります。
(写真)避難民キャンプでの予防接種キャンペーン
■チームを支える「裏方」たち
日赤の医療チームメンバーは、医師や看護師だけではありません。事務管理担当として活動に従事した森正尚(日赤大阪府支部)の最初の任務は、医療活動に必要な資機材を現地に届けること。発災から1カ月あまり、ポルトープランスの空港はマヒ状態で、隣国のドミニカ共和国から人や物資をハイチに移動させる他に、手段がありませんでした。資機材が無事到着し、診療所が立ち上がってからも、医療活動に必要な現地スタッフの採用に奔走し、通訳担当の五島三保子(日赤本社)とともに面接を行ったり、雇用のための手続きなどを行ってきました。
また、現地で安全を確保するために欠かせない通信手段や診療所運営のための電気供給を行うのもチームの仕事です。技術担当の山田悌士(名古屋第二赤十字病院)は、通信機器や発電機の設定管理を行い、チームの活動を側面から支えてきました。こうした「裏方」の働きがあって、初めて医療チームは現地で活動することが可能となるのです。
これから、ハイチでは例年よりもやや早く4月頃から雨季を迎え、7月にはハリケーンシーズンに突入します。日赤は今後も医療分野を中心に活動をすると共に、被災者向けの仮設住宅支援やハリケーン対策といった活動にも目を向けていきます。
■見えてきた復興支援に向けての課題
ハイチは今回の大災害に見舞われる前から何十年間と貧困と政情不安に苦しみ続けてきた国です。首都に全人口の約3割が集中していたことが都市のスラム化をまねき、貧困層を生み、今回の地震による被害状況をさらに悲惨なものにしてしまったとも言えます。
報告会は日赤代表として1月18日に被災地に赴いた粉川直樹(日赤本社)による、赤十字としての復興支援の関わり方の話で締めくくりました。
国際赤十字は緊急医療活動を6カ月間継続させ、復興支援を3年間行うことを計画しています。仮設住宅の建設においては赤十字が主導的役割を担っており、国連など他の援助機関との調整を行います。
「国際支援の空白期間をつくってはいけない」と粉川は続けます。各国の援助機関が救援活動を終えて国に帰っていく中、赤十字は震災前から活動してきた組織として、長期的に支援を続けていくという視点が必要なのです。
もともと国民の4割しか医療サービスを受けられていなかったハイチの状況が改善するにはそれなりの時間と労力がかかるでしょう。災害多発国、脆弱な政府、貧困問題、といったハイチの特異性に鑑みると、復興に向けての課題は少なくありません。これらの課題をひとつでも多く解決すべく、中長期的な復興支援を考えると同時に、被災者のニーズに応えて緊急活動を行い、復興まで切れ目のない支援を行っていくことは赤十字の使命なのです。
■報告者プロフィール
【医療チーム】派遣期間:1月17日~2月21日
1.岡村直樹(医師)熊本赤十字病院
派遣歴:スマトラ島沖地震津波05年、ジンバブエコレラ救援08年など
ハイチでは、第1班外科医として治療の中心的役割を果たした。
2.関塚美穂(看護師)名古屋第二赤十字病院
派遣歴:イラン地震04年、インドネシア保健医療支援05年、タンザニア難民支援08年
診療所内での診察と予防接種キャンペーンを担当。
3.山田悌士(技術)名古屋第二赤十字病院
派遣歴:イラン地震03年、スマトラ04年、ジンバブエコレラ救援08年など
テント設営、浄水機や発電機の設置、その他ハード面のメンテナンスを全般に担当。
4.森 正尚 (事務管理)日赤大阪府支部
派遣歴:インド地震01年、イラン地震04年、ミャンマーサイクロン08年など
現地スタッフの雇用、ロジスティクス(必要物資の調達、輸送確保)などを担当。
5.五島三保子(広報/通訳)日赤本社
派遣歴:カンボジア97年、コソボ99年、アフガニスタン02年、ヨルダン紛争犠牲者支援03年、
ジャワ島中部地震(救援~復興)2006年などフランス語通訳、メディア対応を担当。
【日赤本社職員】派遣期間:1月16日~2月1日
6.粉川直樹(日赤代表として外部との活動調整を行う)日赤本社、国際部参事
派遣歴:カンボジア79年以後、ソマリア、ネパール、などに駐在。エルサルバドル地震01年、イラン・バム地震03年、スマトラ04年、中国四川大地震、ミャンマーサイクロン08年など数々の被災地で緊急救援に携わる。06年~07年は国際赤十字アジア大洋州地域事務所で災害対応部長として勤務。ハイチでは、日赤医療チームの活動場所の選定にあたり各方面との交渉を行った。
■本件に関する問い合わせ先
日本赤十字社 企画広報室 松本、浦 TEL :03-3437-7071 FAX :03-3437-7091