100年以上の歴史を持つ国際協力基金「昭憲皇太后基金」の配分決定~約1,858万円を8カ国に~

赤十字国際委員会、国際赤十字・赤新月社連盟で構成される昭憲皇太后基金合同管理委員会は、今年度の同基金の配分先を決定しました。カーボ・ベルデ、ナイジェリア、コスタリカ、スリナム、ラオス、東ティモール、モルドバ、モンテネグロの各赤十字社に対し、総額約1,858万円(15万100スイスフラン)が配分されます。

第94回 昭憲皇太后基金支援事業

1. カーボ・ベルデ赤十字社 (アフリカ)

フォゴ火山噴火で被災した子どもへの教育支援 約256万円(2万640スイスフラン)

同国フォゴ島の火山噴火(2014年11月2日)によって、家屋や学校、観光施設などインフラが甚大な被害を受け、また、農作物にも深刻な影響を受けました。

同島民約37,000人のうち1,500人余りが溶岩の影響を受け、その中には1歳未満の乳児から11歳までの子どもが含まれていました。教育分野で、経験豊富なカーボ・ベルデ赤十字社は、これらの子どもたちへ、学校の机や椅子などの教育資材、食糧、身体検査やこころのケアといった支援を学校が再建されるまでの6カ月間計画しています。

2. ナイジェリア赤十字社(アフリカ)

交通事故被害者への支援および救急法講習の実施 約215万円(1万7,400スイスフラン)

ナイジェリアでは、毎年交通事故によって3,000人が命を落とし、約10,000人が負傷しています。ナイジェリア赤十字社では、こうした交通事故の被害者をはじめ、災害や社会的暴力によって傷ついた人びとへの迅速な支援活動を展開しています。

また、同国では医療施設への利便性がよくないため、基本的な保健医療さえ受けることのできない地域では、救急法の知識が特に重要となっています。ナイジェリア赤十字社では、救急法の講習を継続して実施するとともに、同国内全域における交通事故の被害者に対する支援を計画し、交通事故に対する一般市民への啓発も行っていきます。

3. コスタリカ赤十字社(中央アメリカ)

貧困による社会問題の解決に向けたコミュニティー支援 約248万円 (2万スイスフラン)

コスタリカの湾岸地域は貧困が社会的に深刻な地域です。麻薬取引や多くのギャングの存在が、家庭内暴力を含む暴力、性的虐待、10代の妊娠、売春、人身売買の増加を助長しています。こういった問題を解決するために、地元政府は公的機関やNGO、その他生活の質の改善により貧困を解消させるために取り組む団体との連携に力を入れています。

コスタリカ赤十字社は、こうした問題に対するコミュニティーの活動に寄与しており、その活動の焦点として若者が抱える問題、保健、社会福祉、リーダーシップの育成、人道的価値の啓発といった分野で活動しています。

4.スリナム赤十字社(南アメリカ)

多発する交通事故防止に向けた啓発活動の実施 約226万円(1万8,300スイスフラン)

スリナムでは、自動車の数が急増しており(約50万人の人口に対し25万台)、交通安全に対する訓練、啓発が喫緊の課題となっています。

政府は、国家的交通安全プラットフォームを設立し、スリナム赤十字社はそのメンバーとなっています。個人や労働者、救急法を必要としている団体等に講習を行うことが、同赤十字社の最も重要な活動となっています。

スリナム赤十字社は、交通事故の減少、深刻さの軽減のために、特に若年層に対する交通安全の学習が必要と考え、責任ある行動や安全に向けての良い習慣を身につけるよう啓発しています。

5.ラオス赤十字社(アジア)

交通事故被害者の救護のためのボランティアの育成 約177万円(1万4,300スイスフラン)

ラオスでは、重大な交通事故が深刻な関心事となっています。公共の無料救急サービスは2つしかなく、その一つをラオス赤十字社が担っています。

公共の救急サービスの不足が、交通事故による路上での死亡率が高い要因となっているため、同赤十字社は、緊急の医療処置や救急法を行うボランティアの能力向上に取り組んでいます。

こうした必要とされるサービスの提供と救急法等の講習を行うことにより、活動資金の確保を目指しています。

6.東ティモール赤十字社(アジア)

救急法講習を中心とした自立的資金造成計画の実施 約236万円(1万9,050スイスフラン)

東ティモール赤十字社は、近年、自立的資金造成計画の一環として、有料の救急法等講習を実施しています。現在、こうした講習は外部の有料の会場を利用していますが、今後は既設のビルをリフォームし、救急法用の研修室を設置するとともに、傷みやすい資材の管理庫としても活用することとしています。

新たな研修室の完成により、同赤十字社の評価が高まるとともに、救急法講習の実施者として社会での認知度も上がります。また、資材の提供や講習の実施により各地域の支部組織の能力強化にもつなげていくこととしています。

7.モルドバ赤十字社(ヨーロッパ)

児童への暴力抑止のための啓発活動 約267万円(2万1,600スイスフラン)

モルドバでは、児童に対する暴力が蔓延しており、これが社会全体に悪影響を及ぼしています。最近の統計では、同国内の児童のうち25%が親から、3%が教師から暴力を受けており、約10%が性的虐待を受けているといわれています。これには、高い失業率や低い投資環境、国際社会における巨額の債務、汚職の蔓延などが要因として挙げられます。

モルドバ赤十字社では、地域の支部を通じて子どもや若者、教師、地域の有力者、行政当局など関係者とともに暴力予防強化を計画しており、この事業によって、市民社会に対して子どもたちが直面しているリスクへの啓発を行っています。

同赤十字社は、行政当局やNGO等パートナーと連携し、児童に対する暴力を予防するとともに幼少期に受ける暴力が及ぼす影響に関する啓発を行うため、キャンペーンや情報提供、公共のイベント等を行うこととしています。

8.モンテネグロ赤十字社(ヨーロッパ)

複合的に発生する災害の被災者に対する支援活動 約233万円(1万8,810スイスフラン)

モンテネグロでは、地震や危険レベルの極寒状況、豪雪、鉄道や自動車事故といったさまざまな災害・事故に見舞われています。加えて、同国の学校は暴力的な場所へと変容しています。

こうした中、モンテネグロ赤十字社は、1994年以来、災害被災者へのこころのケアなど重要な役割を担ってきました。この事業の焦点は、人道的価値を推進することであり、若者の間での暴力を絶つことです。

今日の開発援助の先駆けとなった昭憲皇太后基金

昭憲皇太后基金は、明治45年(1912年)にワシントンで第9回赤十字国際会議が開催された際、昭憲皇太后が赤十字の平時事業を奨励する思し召しをもって国際赤十字に10万円(現在の3億5千万円相当)を寄付されたことを機に創設されました。本年3月31日時点での基金総額は約18億5,730万円(1,500万スイスフラン)で、この基金から生じる利子を配分しています。

赤十字が戦時の活動を中心としていた時代に、災害対策、保健衛生、血液事業、青少年赤十字活動など、今日の開発援助を先取りする本基金の創設は極めて画期的なことでした。また、同基金は皇室をはじめとする日本からの寄付金によって成り立っています。

運営と配分は昭憲皇太后基金合同管理委員会が行い、毎年、昭憲皇太后のご命日にあたる4月11日に配分しています。これまでの配分は大正10年の第1回から今回までで、合計約14億8,180万円(1,280万スイスフラン)、配分先は161の国と地域に上ります。

世界中の災害・感染症などに苦しむ人びとの救済や福祉の増進、防災、病気の予防など、時代を先取りした率先的な人道支援は世界で高く評価され、深い敬意と謝意が寄せられています