第44回 フローレンス・ナイチンゲール記章 日本から看護師2名が受章

2年に1度、顕著な功績のあった看護師に授与される世界最高の記章であるフローレンス・ナイチンゲール記章の受章者が、5月12日、赤十字国際委員会ナイチンゲール記章選考委員会(スイス・ジュネーブ)から発表されました。

今回は世界で32名が受章し、日本からは久常 節子さん、金 愛子さんの2名が受章されました。二人は、災害時の看護と看護教育の分野での功績が認められました。

これで受章者総数は1,411名になり、日本人の受章者総数は105名となりました。授与式は、年内に執り行われる予定です。

フローレンス・ナイチンゲール記章について

この記章は、紛争下において敵味方にかかわらず負傷者を保護する役割を担う赤十字が、1907年および1912年の赤十字国際会議で、顕著な功績のある世界各国の看護師に授与することを決定したのに端を発します。ナイチンゲール女史の生誕100周年を記念して、1920年(大正9年)に第1回の授与が行われました。それ以来、隔年でナイチンゲール女史の誕生日にあたる5月12日に赤十字国際委員会から発表されています。

受章資格を有する者は、平時または戦時において、傷病者、障がい者または紛争や災害の犠牲者に対して、偉大な勇気を持って献身的な活動をしたり、公衆衛生や看護教育の分野で顕著な実績を残したり、創造的・先駆的貢献を果たした看護師や看護補助者です。

同記章は、鍍(と)銀(ぎん)製アーモンド型メダルで、表面は燭(ともしび)を手にしたナイチンゲール女史の像と「1820~1910年フローレンス・ナイチンゲール女史記念」の文字があり、裏面には受章者名と、ラテン語で「博愛の功徳を顕揚し、これを永遠に世界に伝える」と刻まれています。

■本件に関するお問い合わせ先

日本赤十字社 企画広報室 松野・田坂 TEL 03-3437-7071

受章者のプロフィール

久常 節子(ひさつね・せつこ)さん

□高知県生まれ(68歳)
□東京都大田区在住
□現職:国際医療福祉大学 大学院 副大学院長

□主な功績:

昭和50年に福井県立大学看護短期大学の講師を始めたのを皮切りに、計20年間、看護教育に携わってきた。特に国立公衆衛生院では、フィールドワークを主体に保健師教育を展開し、保健師の実践能力向上に繋げる教育はもとより、実践地域の健康課題の改善を講じる方法を推進した。

平成7年1月に起きた阪神・淡路大震災では、厚生省医政局看護課長として、被災地の視察を踏まえて被災者に必要なケアを行政の中から提言し、当時はまだ知られていなかった被災者の「こころのケア」に関する支援を行うため、保健師や臨床心理士等をチームで派遣するという施策を整えた。平成23年3月に起きた東日本大震災では、日本看護協会会長として災害対策本部を直ちに立ち上げ、公共交通機関が機能しない中、延べ3,674名の災害支援ナースと支援物資を現地に送り出した。

平成5年に厚生省医政局看護課長に就任すると、保健師助産師看護法(保助看法)を一部改正し、男性に保健師資格取得の路を開いた。

また、平成17年6月に日本看護協会会長に就任し、看護師の過重労働を減らして患者に手厚い看護を提供するため、「患者7人対して看護師1人」の新たな看護職員配置を診療報酬に反映させた。また、平成21年には日本看護協会会長として保健師助産師看護師法および看護師等の人材確保の促進に関する法律を一部改正に導き、日本の看護職の永年の要望であった「新人看護師卒後臨床研修制度の努力義務化」を実現させるなど、その後の看護教育の発展に大きく貢献した。

受章者のプロフィール

金 愛子(きん・あいこ)さん

□宮城県生まれ(58歳)
□宮城県石巻市在住
□現職:石巻赤十字病院 副院長兼看護部長

□主な功績:

石巻赤十字病院並びに石巻赤十字看護専門学校に約36年間勤務し、「人道」を基盤として、「人を大切にし、信頼される看護」を実践してきた。宮城県沖地震が高い確率で発生すると予測されていたため、金氏は新病院の建設計画時に看護の視点から病院の非常用電源や給水設備、玄関フロアー壁に酸素供給用の設備を設置するなど設備面での対策を提案したほか、被災者の受け入れ体制などのマニュアルの策定と訓練、消防や警察など関係機関と連携したヘリコプターによる搬送訓練を実施するなど、極めて実践的な教育・訓練に力を注いだ。

平成23年3月に発生した東日本大震災では、被災を免れた石巻赤十字病院に通常の約20倍(1日あたり1200 名)以上の傷病者や避難者が押し寄せた。金氏自身も、この震災で夫を亡くし、自宅も失った被災者であったが、「あらゆる状況下で人間の命と健康、尊厳を守る」という赤十字の看護師としての使命を果たすため、病院を離れることなく献身的に職務を全うした。この東日本大震災において石巻赤十字病院で展開した救護活動では、金氏の提案によって地震対策のため設置された酸素供給用の設備等が押し寄せた負傷者の治療を行う際に威力を発揮した。また、日ごろの実践的な教育・訓練が生かされ、次々に発生する想定外の事態にも職員が冷静に力を結集して対応できたことが災害救護活動における他の模範となるものであり、その中心となった金氏の功績は顕著である。