輸血過誤防止

― 輸血に関連した過誤の原因と過誤防止 ―

輸血過誤とは

輸血に関連した、輸血前、中、後に発生する好ましくない、または意図しない事象を総称して「有害事象」といいます。

有害事象には、輸血用血液による「副作用」の他、以下の1~6のような輸血実施時の人的な「過誤および手順の逸脱」が原因の輸血過誤が含まれています。輸血過誤の多くを占めるのは、主に1および2です。

  1. 間違った製剤の輸血
  2. 患者・製剤の照合間違い
  3. 不適切・不要な輸血
  4. 過剰輸血
  5. 過小輸血・失血死
  6. 保管管理の間違い

輸血医療現場で生じる人的・事務的誤りに起因する過誤が「輸血過誤」ですが、そのまま輸血が実施された場合、患者に重篤な有害事象を生じさせます。 輸血過誤として多く発症している「間違った製剤の輸血(ABO不適合輸血など)」と「患者・製剤の照合間違い」の原因および「輸血過誤の防止対策」について紹介します。

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ABO不適合輸血とその原因

輸血過誤のなかでABO不適合輸血は、患者の血液型と異なる血液型の輸血用血液製剤を輸血する過誤であり、患者に深刻な健康被害を与えます。最大の原因は、その発生症例数の50%以上を占める「患者・製剤の照合間違い」です。症例数は少ないものの「輸血検査検体の採血間違い」も重篤な結果を生じています。

ABO不適合輸血の主な原因

(厚生労働科学研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業
「医療機関内輸血副作用監視体制に関する研究」より)

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ABO不適合輸血の過誤防止対策

ABO不適合輸血の過誤防止には、輸血にかかわる医療従事者それぞれが常に注意することが必要ですが、以下のような過誤防止対策があります。

(1)検査技師: 血液型判定ミスや血液型誤入力を起こさぬよう検査のトレーニングとダブルチェックを徹底する。
(2)看護師: 患者の取り違え、バッグの取り違えの対策として、照合確認と実施確認を必ず2人で行う。
(3)医師: 血液型の誤記入やバッグの取り違え防止策として、輸血管理部門や看護師とダブルチェックを行う。

また、過誤の約半数は、時間外、緊急時に発生しているという調査結果もあることから、そのような状況における手順のシミュレーションの実施、手順の見直しをすることが重要とされています。

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「患者・製剤の照合間違い」の事例紹介

財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部の事業第17回報告書より「患者・製剤の照合間違い」の原因となった「手順の逸脱」の発生状況と過誤防止対策について概要を紹介します。

事故の内容

  1. 医師は、患者Aの血液製剤実施の指示を出した。
  2. 看護師は、輸血部から患者Aの血液製剤を持ってきた他の看護師とともに、ナースステーションで血液製剤と伝票の患者氏名、血液型の照合を行った。
  3. その後、看護師は、患者Bのベッドサイドに行き、その患者が患者Aであるかを照合せずに接続した。
  4. 2時間後医師が患者Bのベッドサイドに行き、指示していない血液製剤が接続されていることに気付いた。

事故の背景

  • 指示出し・指示受けの問題
    輸血予約を手術室で行い、指示記載がカルテにされていない。
    また準夜で手術帰室した患者のベッドサイドで別の患者の指示を口頭で行っている。
    ICUの看護師も指示受けをした者が明確になっていないため受け持ち看護師の思い込みが是正されなかった。
  • 口頭指示の問題
    マニュアルでは口頭指示は極力避けることになっており、指示受けには、指示内容を復唱することになっているが、復唱されていなかった。
    フロアーで複数の看護師がいる中での指示出しが曖昧であった。
  • 輸血準備の問題
    輸血マニュアルでは、2名以上で輸血、伝票、患者カルテの血液型結果をみて声出し確認になっているが、今回の2名の看護師は患者カルテの確認を行わなかった。
    受け持ち看護師が思い込んでいる患者のカルテとの照合を行っていれば、氏名違い、血液型違いに気付くことができた。
  • 輸血実施の問題
    受け持ち看護師は思い込みで当該患者への輸血を実施しており、ベッドサイドでベッドネーム、輸血、伝票との照合を行わないまま輸血を接続した。
    実施前確認の基本に沿ってベッドネーム、輸血、伝票の確認が行われれば最後に間違いに気付くことができた。

改善策

事故の背景は「手順の逸脱」であり、以下の改善策をとることにより過誤防止が期待できます。

血液センターの医薬情報担当者が医療機関にお届けしている「輸血情報」でも同様の内容を情報提供しています。

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