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アジア太平洋地域における緊急事態への備えと対応の強化に向けて
10/06/25
自然災害の被災地や紛争地において人道支援に携わる職員へ、現場で必要となる知識や技術の研修を提供する国連難民高等弁務官(UNHCR)のe-センター*が開設されて10年。これを記念するシンポジウムが2010年6月10日、東京の国連大学本部で行われました。
シンポジウムの第2部では、外務省、NGO、国連などの立場からそれぞれ「アジア太平洋地域における緊急事態への備えと対応の強化に向けて」というテーマでディスカッションが行われました。日本赤十字社からは国際救援課長の菅井智が参加し、赤十字の活動を次のように説明しました。
世界に186ある赤十字社・赤新月社では、それぞれの国にけが人の治療や救援物資の配布にあたる救援チームを配備しています。活動には日ごろから訓練された多くの赤十字ボランティアが携わることが特徴的です。アジア・大洋州地域においては、北京、スバ(フィジー)、クアラルンプール、バンコクに周辺の国々の救援活動を調整し指揮する事務所が設置されています。この事務所を中心に、近隣の国々の赤十字社が常時訓練を行い、いざという時には、迅速に海外からの救援チームを派遣できる体制が整っています。同じ赤十字の理念を持ち、文化の違いが少ない近隣の国々から駆けつけたスタッフは、共に協力して被災者により良いサービスを提供することができます。そして、アジア・大洋州地域の中心拠点はクアラルンプールにあり、2万世帯分の救援物資11品目が備蓄されています。
国連人道問題調整事務所(UNOCHA)アジア・太平洋地域事務所長のテリエ・スカヴダル氏は「この地域では、世界の災害の4割が発生し、スリランカ、パキスタン、アフガニスタンなどに見られるように、世界の紛争の3分の1が発生している。また、新型インフルエンザや地球温暖化により巨大化する台風など新たな脅威も発生している」と最近の傾向を説明し、この地域で災害への備えが進んでいることを紹介しました。例えば、1970年にバングラデシュを襲ったサイクロンの死者数は30万人に上りました。その後、避難シェルターの建設など災害への備えを進めたことにより、2007年の大型サイクロンでは死者数3,400人に留まりました。スカヴダル氏は、地域内の情報共有や連携を促進し、災害への備えと対応能力を強化したいと述べました。
e-センターのコーディネーター、マイケル・デラミコ氏は、「緊急支援が良い結果をもたらしたかはどう判断すべきか?」という質問を投げかけ、国際人道法や人権法に基づく水準を満たすような支援(人間としての尊厳を守るために、最低限の生活レベルを回復できるような支援)を行うべきと主張しました。
最後に会場から「人道支援団体であるNGOが軍隊とともに支援活動にあたることは良いのか?」という質問があり、「安全確保や物資の輸送の面で軍隊との協働が良い場合もあるが、それぞれの団体で熟慮すべき」「赤十字は人道の根本原理を守るために、軍隊と行動を共にすることはできる限り避ける」といった意見が出されました。
国際的な人道支援を取り巻く環境・技術・システムなどは10年間で大きく進歩しています。一方で、自然災害やパンデミックなど新たな脅威も発生しており、ますます努力して行く必要がある、とシンポジウムは締めくくられました。
*e-センターは2000年に国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所内に設立されました。詳しくはe-センターのページをご覧ください。