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サイクロン・シドゥル被害から2年
09/12/24
25万の家族に笑顔が戻った
2007年11月にバングラデシュ南西部を襲った大型サイクロン・シドゥルの被害から2年。120万人、およそ25万世帯を対象とした赤十字の復興支援事業は2009年11月をもって終了しました。人々の生活には、災害の前のように復活する兆しが見えはじめています。
■2年間の軌跡
サイクロンの発災直後から、バングラデシュ赤新月社は国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)と協力しながら救援活動を開始。安全な水や食料、必要な医療や住まいを被災者に提供してきました。その後、連盟は「被災者の生活を立て直し、災害に強い地域づくりを行う」ことを目標に、住宅支援、生活再建、こころのケア、給水と衛生、緊急時の公衆衛生知識の普及といった復興支援事業を策定。最も被害の大きかったバングラデシュ南部のバルグナ県、バゲルハット県、パトゥアカリ県、ピロジュプール県の4県で支援事業を実施してきました。
皆様から寄せられた救援金の総額は1億1,900万円。この救援金を最大限被災者のために活用すべく、日赤は資金や物資援助に加えて、救援担当のスタッフ1名および保健事業を担当する看護師計3名を3回にわたり同国に派遣してきました。復興支援事業を開始してからは、緊急時の公衆衛生知識の普及、住宅支援、生活再建の3つの事業に焦点を絞って支援を行ってきました。
(写真)赤十字の支援によって戻った笑顔 ©IFRC
■地域に根ざした救急知識の普及
災害発生時に被災者を一人でも多く的確に救えるように、地域住民に救急法知識を普及させる取り組みを行いました。バングラデシュでは溺れた人を頭の上に掲げ、ぐるぐる回すという伝統的な救急法がいまだに一般の人に根付いています。しかし、今日ではそれが正しい処置方法でないことは周知の事実です。これは一つの例ですが、実際に伝統的な救急法のために死亡したというケースは少なくありません。
日本赤十字社はサイクロン発災1ヶ月後から看護師を派遣し、バングラデシュ赤新月社のスタッフやボランティアを通じて、災害時に地域で救急手当ができるよう、正しい知識の普及、指導を行ってきました。
派遣された一人、矢野佐知子看護師(大阪赤十字病院)は、2009年4月から7ヶ月の派遣期間で、12回のトレーニングを行うための人材登用と運営・資金管理、トレーニング後のフォローアップを行ってきました。最初は活動の中心となる地域ボランティアに対し、緊急時の公衆衛生について学ぶトレーニングを4日間コースで開催。その後、トレーニングを受けた総勢263受講者が自分たちの住む村に戻って活動することにより、村びとたちに基本的な知識が根付いていきます。知識の普及のみでなく、実際に交通事故の負傷者の傷の手当や溺水者への対応といった救助活動を行ったボランティアも多く、「正しい知識が習得できて嬉しい。今は周りの人たちに自信を持って説明できる」と意欲的に活動を行っています。
事業の終盤近くに行った訓練では、サイクロンが発生したという想定の下、トレーニング修了者が緊急時には何をしたらよいのか、ロールプレイをしながら知識と技術を身につけました。
ボランティアたちは現在も自分たちが住む地域を災害から守るために何をしていくべきかを考え、積極的に活動を行っています。
(写真)トレーニング修了者のモニタリングをする矢野看護師 ©日本赤十字社
(写真)トレーニング修了者(黄色いベスト)が参加したシミュレーション訓練 ©日本赤十字社
■災害に負けない住宅支援
シドゥルによって、バングラデシュ国内はおよそ50万戸の家屋が全壊したと言われています。救援活動時には、避難所を設置したり、簡易住居となるブルーシートを配付していましたが、これはあくまで暫定的な措置でしかありません。
復興支援事業では、事業対象地4県の中から特に経済的な事情により自力では家を建て直すことが難しいと思われる6,250世帯を対象に、サイクロンにも耐えうる構造の住宅支援を行ってきました。支援対象者には、家屋の建築や修繕に必要な道具と資金、トレーニングが提供され、自らが建築に携わります。
支援を受けるまでの間、避難テント生活を送っていた家族の中には、首都ダッカに住む長男のところに下の子どもたちを託さざるをえない人もいました。避難テント暮らしも過酷なものですが、親と離れ、都会で子どもたちだけで暮らすということは、さまざまな危険と隣り合わせでもあります。そんな家族にも赤十字の支援によってしっかりとした自分たちの家が手に入ってからは、ひとつ屋根の下で一家揃っての幸せな日々が戻ってきました。
■生活を立て直すための取り組み
たとえ住む家や公衆衛生の知識があっても、日々の生活のためには現金収入が欠かせません。しかし、被災によって今までの仕事や商売道具を失い、貧窮にあえぐ人が大勢いました。
赤十字は被災者が経済的に自活できるよう、5,000世帯に対して収入を向上させるための支援を行いました。
リキシャを引いて生計を立てていたアブドゥル・サァムさん(28歳)はサイクロンで家もリキシャも失いました。奥さんと2人の娘を養っていく術がなく、途方にくれていたとき、赤十字の生計再建事業の受益者として選ばれ、1万タカ(約1万2千円)を受け取ることができました。そのお金で中古のリキシャとヤギを買い、仕事を再開させ、今では以前の4倍以上の収入を得ることができるようになりました。「赤十字は緊急時には食料を、その後は生活を支援してくれて今はとても幸せです。」とアブドゥルさんは語ります。
バングラデシュは今年の5月にもサイクロン・アイラの被害に遭いました。シドゥルの経験から、いち早く、バングラデシュ赤新月社のスタッフやボランティアが被災地域で救援活動を行いました。シドゥルの復興支援は終わりましたが、この事業によってバングラデシュ赤新月社が得た知識と経験はこれからもずっと、災害の被害を最小限に食い止めるために活かされていくことでしょう。