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「ジャワ島中部地震」復興支援3周年を迎えて その1:
~身障者支援で得たもの~
ジャワ島中部地震 復興支援3周年を迎えて その1
09/05/21
2006年5月27日発生のジャワ島中部地震から3年。日本赤十字社(以下、「日赤」)は、皆様から寄せられた救援金をもとに、震災直後から緊急救援活動や被災者の生活基盤と地震により全壊・半壊した公共施設の復旧活動を行ってきました。また、発災1年後からは、支援が行き届かない身障者に対する自立支援と被災地全体の生活の改善を目的とした支援活動を展開しています。
現地に派遣している松永一(まつなが・はじめ)職員が支援を受けた一人の身障者、エナ・スルスティヤンシさんから話を聞きました。
■周囲の誤解と偏見
「専門学校を卒業した後、家庭教師をしながら充実した毎日を過ごしていたのですが、卒業から半年で震災に遭い、下半身不随のため車椅子生活になってしまいました。病院に4カ月入院し、その後リハビリ施設で3カ月を過ごしたあの頃は、本当に絶望しかありませんでした。」
「リハビリ施設を出て実家に戻りましたが、炊事をしている私のことを、近所の人が『身障者は何も出来ないのに、どうして親は家事をさせているのか』と言っているのを耳にしました。私は足が動かないだけで家事も出来るのに・・・。」
(算数塾を始めたエナさん。児童の椅子やホワイトボードの支援を受けました。©日本赤十字社)
■新しい人生の一歩を日赤が後押し
そんな中、現在のご主人と結婚。当初、「身障者の自分は彼を幸せに出来ない」と結婚をためらっていたエナさんに対し、彼は近所の人の身障者に対する偏見を取り除こうと必死にサポートしてくれました。
結婚を機にようやく今後の人生に前向きになれたエナさんに日赤の支援が届くことに。自宅に車椅子でも利用可能な衛生施設の設置が決まり、一人でもトイレ、シャワーの利用が可能になりました。また、身障者の社会復帰と収入向上を支援する日赤の生業支援で、ホワイトボードや椅子、パソコン等といった資機材の供与を受け、算数・パソコン塾を開業することに。これらの支援がエナさんの新しい人生の一歩を後押しする結果となりました。
(車椅子用の玄関前スロープ @日本赤十字社)
(車椅子でも利用可能なトイレを設置 ©日本赤十字社)
■自立と共に身障者への偏見もなくしたかった
「当時、まだ近所の人には“身障者は何も出来ない”という偏見が根強くあり、両親から自立したい、近所の人の偏見をなくしたいという思いで日赤の支援を受けました。」「塾を始めた当初、生徒は少なかったのですが、近所の人が授業を見に来てくれ、自分の子をすすんで通わせてくれるようになりました。おかげで自立と共に近所の偏見も少なくなりました。」「しかし、まだまだ社会には身障者への偏見が残っています。この支援をきっかけに、もっと街へ買い物、映画、食事に出かけて、身障者は健常者となんら変わらないと訴えたいです。」
(娘のパニャちゃんは1歳に @日本赤十字社)
■得られえたのは「前向きな気持ち」
復興支援においては、外国からの支援だけでなく、地域住民の理解、そして何より被災者自らの自発的な取り組みが欠かせません。今回のエナさんのケースでも「自立と共に身障者への偏見をなくしたい」という本人の強い意志なくしては日赤の支援も活きてきませんでした。
松永職員はこう言います。「支援の当初は、身障者の人たちから『資機材だけの援助でお金の援助はしてくれないのですか』とよく質問され、当初は困ったことになったな、と感じたものでした。しかし、他のNGOや村の協同組合、家族や親戚、近所の人など、実は資金の調達先は沢山あって、全く当てがないわけではないことがわかってきました。また、新しい商売の職種、お客さんのニーズの分析、他のお店との差別化等を一緒に相談して、この商売なら大丈夫、という時になっても、資金面で都合がつかないのは、本人のやる気と共に『身障者である自分自身が恥ずかしくてお金の工面を周りの人に言い出せない』ということに気付きました。つまり、偏見は他人からのものだけではなく、自分自身の中にもあるのだな、と感じた出来事でした。ですから『商売を始めるお金を工面しよう』と身障者のみなさんが言ってくれたことは、周りだけではなく自分の内にもある身障者に対する偏見との戦いの決意表明のように感じました。この支援をきっかけとして、身障者の人たちは収入を得るとともに、そうした前向きな気持ちも手に入れたのではないでしょうか。」
(「パニャ学習塾」 塾の名前は娘のパニャちゃんにちなんでいます。@日本赤十字社
)
独自調査によれば、エナさん同様、日赤の生業支援を受けた身障者のほとんどが以前より収入を向上させる結果となっています(下記参照)。被災者の自発性を促しながら復興支援を行ってきた日赤にとっても、本事業で身障者の収入向上に貢献するとともに、「自立したい、身障者への偏見をなくしたい」という身障者自らの強い気持ちを手助けできたのではないかと思います。
日赤のジャワ島中部地震復興支援も発災3周年を迎え、支援事業もいよいよ終盤です。日赤は、インドネシア赤十字社や身障者を支援する様々な地元の団体、州の社会福祉局と連携して、日赤の復興支援終了後も地元の人々の手で身障者の人たちへ支援が続くように、事業の報告や今後に生かせる教訓を伝えていく予定です。
参考情報:ジャワ島中部地震における日赤の身障者支援事業
1.身障者生業支援事業 321名の身障者に自営業を始めるための資機材を供与。91%の人が開業、収入が震災直後から2.4倍となり、89%の人が生活費に見合う収入を取得。
2.身障者世帯衛生設備設置事業 身障者120世帯に車椅子対応の衛生設備を設置。玄関前スロープや家屋と衛生設備を繋げる廊下等も設置。1と2両事業の対象者は53名。
3.特殊学校衛生設備再建事業 身障者の学校59校の衛生設備を車椅子対応にして再建。