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救援・救護活動_国際

復興支援:エヤワディ川の風

08/10/07

死者行方不明者13万人以上という、未曾有の被害をもたらしたサイクロン・ナルギス発生から5ヶ月が経過しました。ミャンマー赤十字社は国際赤十字とともに、現在も10万世帯に対する生活支援物資の配布、簡易住宅および生計支援、そして水・衛生、健康に関する復興支援活動を展開しています。本号では、2008年7月から国際赤十字チームの一員として活動する吉田千有紀看護師(日本赤十字社和歌山医療センター)からの報告をお伝えします。

ボガレ病院の人々と吉田看護師

写真:ボガレ病院の人々と吉田看護師(中央右)©IFRC

エヤワディ川が流れるエヤワディ管区(最も大きな被害を受けた地域)は、まるで水の都のようなところで、いたるところに水路や川が網目のように広がっています。村と村の間を川が横切っているため、交通手段は船になります。乾季に入ると水量が減り、川のいたるところに中洲ができるそうです。村には湿地帯が広がり、マングローブや海老の養殖を行う地域もあります。しかし、サイクロンで漁業も農業も多大な被害を受けました。
先日、エヤワディ管区にあるボガレという地域に、医療救援物資を持って訪れました。この医療物資には、日本赤十字社が支援した医薬品セットも含まれていました。ヤンゴンからボガレまでの悪路を4輪駆動車で8時間かけて向い、ボガレに着くと今度は船での移動です。15人ほど乗れる船に荷物を分散し出発、船着場はぬかるんでいて、長靴を履いた足は尐しずつ地面に沈み底なし沼のようでした。
船上から広がる川面とマングローブの木、そして点在する村々、行きかう小舟に乗った人々との会話。「ミーグラバー(こんにちは)」と声を掛け合います。私がミャンマーに赴任して初めて覚えた言葉が川面に響きます。海に近いため湿気を帯びた潮風を受け船は進みます。船から見える家々の至る所に青や白のビニールシートがかけられ、子供たちが水浴びをしているのが見えます。岸辺にいる住民たちは履物をはいていませんでした。それは、船着場付近や見晴らしの良いところにお寺や修道院が建てられていることが多く、それらの場所は土足厳禁だからです。 「ビニールシートは雨の音が響いて子供たちが『サイクロンが来る』とおびえるので、草のマットを天井につけようと思うの」とある母親がマットを編みながら話していました。この地域の家は竹と大草で編んだ涼しげな造りのものなので、ビニールシートを使った屋根はあまり適さず、中は大変むし暑いし雨音が響きます。子供たちが安心できる家や簡易住宅の設置が急務だと感じました。

写真:デルタ地帯ピャポンの仮設小学校で、手洗い指導を受ける子どもたち。
©Nenita Briones/IFRC

写真:赤十字が村々を訪ねるときは、色々な目的がある。救援物資の配布、保健・衛生教育、行方不明になっている人々の写真を見せ家族の再会を助ける活動などです。
©Htein Win/MRCS

ボガレの町に着き、私たちは早速、ボガレ病院に医薬品セットを持って出かけました。副院長先生が迎えてくれ、「セットは村の助産師たちのいる保健施設に届けたい、そして、日本の皆さんにどうか感謝の気持ちをお伝えてください」と話してくださいました。この病院は50床ほどの規模の病院で、簡単な顕微鏡検査、レントゲン検査、小手術も行えるのですが、「ここのところ、停電続きで発電機の燃料も高価だから節電に心がけています」とにっこり微笑む病院の方々や治療を受ける患者さんの様子をみて、頭が下がる思いがしました。
翌日、ミャンマー赤十字支部の保健チームが実施する村の小学校での衛生教育に同行しました。やはり、小船で1時間かけて向かいます。船着場は村の修道院に作られているので、私たちは靴や靴下を脱いで足を清め村に入りました。「日差しが強いから」と地元の女性に「タナカー」という木を石の板でこすって作った汁を顔全体に塗りつけてもらいました。この「タナカー」はサンダルウッドという木のいい香りで、つけた感触はしっとりと冷たくて、こちらの女性が愛用する気持ちがわかりました。
村の修道院から約30分歩いたところに、小学校があり、約50名の子供たちが勉強していました。ミャンマー赤十字社は救援物資の配布とともに、蚊帳や衛生用品の使い方、手洗いの方法を村の住民に対して指導を繰り返しています。
「赤十字の人から蚊帳や魚の缶詰、シーツ、水の容器をもらったの」と得意げに私に見せてくれる子どもがいたり、「どうか、しまっておかずに使ってくださいね」と声かけると「ありがたいのでもったい」と話す初老の女性もいました。「蚊帳は吊り下げておかないと蚊帳ではなくてただの網になってしまいます、マラリアの蚊が増える季節に入るから、どうか蚊帳を使って寝てください。病気にならないようにね」と力説、なんとか同意を得られたようで、蚊帳の袋を開いてくださいました。衛生教育指導とともに、乾季に備えての水不足への対応とトイレの設置も計画しています。
「この村には、助産師もいないので、赤十字が定期的に行う巡回保健活動が歓迎されています。だから私にできる活動を続けたい」と調査に同行したミャンマー赤十字の若い女性医師の言葉が今も心に残っています。何かできることをしたい!という気持ちで活動を続けているボランティアや職員一人ひとりの力は大きなものです。国際赤十字は、この一人ひとりの力を合わせて、これから、エヤワディ管区にある13郡の現地調査を実施し、心的支援を含む健康・水・衛生事業、生計支援、簡易住宅支援の具体的な中長期計画の策定をミャンマー赤十字社とともに行っていきます。
エヤワディ川からの心地よい風を受け、赤十字の小船は今日も村々を回ります。

写真:ヤンゴンのミャンマー赤本社で救援物資を運ぶボランティア。世界中の赤十字・赤新月社から合計2,500トン以上の救援物資が届けられた。
©MRCS

写真:ビニールシート、台所セット、衛生セット、水タンクなどの救援物資を被災した村々へ届けたのもまた、赤十字ボランティア。
©MRCS

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