避難所をまわるシリア赤新月社の巡回診療ユニット ~内戦で苦しむ人びとの健康を守るために~

比較的平穏に見えるダマスカスの中心部。しかし、そこから20キロメートルほど離れると別世界が広がっています。そこでは、家や財産、また多くの場合は愛する家族をも失った国内避難民の人びとが、深い悲しみと厳しい現実に直面しています。

ダマスカス近郊のアル・アドリア共同学校は、約30世帯と136人の避難民の仮の住まいとなっています。各教室に敷かれた古いカーペットと壁際に積まれている寝具用のマットレス以外に、家具は見当たりません。キッチンとなっている教室にも、床の上に簡素で小さな調理器具が置かれているだけです。

シリア赤の巡回診療ユニット

シリア赤の巡回診療ユニット©Ibrahim Malla/IFRC

ここの避難民たちは、シリア赤新月社(以下、シリア赤)が運営する巡回診療ユニット(※)の訪問を毎週待ち望んでいます。

到着するや否や、その周りに多くの人びとが集まります。女性たちは、苛酷な状況により生じる健康上の問題を相談するために、列を作ります。

シリア赤巡回診療ユニット

シリア赤の巡回診療ユニットの周りに集まる人びと ©Ibrahim Malla/IFRC

※巡回診療ユニットとは、緊急時に直ちに出動できるよう予め整備された救急車両と巡回診療サービスに必要な器具・医薬品等一式のこと。

シリア赤巡回診療ユニット

診察の順番を待つ避難民の女の子たち ©Ibrahim Malla/IFRC

シリア赤のタレク・タニラ医師は次のように述べています。

「患者の7割は子どもで、ほとんどが呼吸器系疾患を患っています。一方、成人の患者の多くは、整形外科系または神経系の疾患や関節炎に苦しんでおり、女性患者の多くは婦人科系の問題を抱えています。また、シラミと疥癬(かいせん)も、人が密集して暮らす避難所ではしばしば発生する問題です」

避難所の人びとが抱える問題はさまざま

ジェイワーさん(35歳)にとって、巡回診療ユニットによる保健医療サービスは生きていくために不可欠なものとなっています。彼女には7人の子どもがおり、一番末の娘はまだ生後6カ月です。

シリア赤の巡回診療ユニット

巡回診療ユニット前で、末の娘とともに順番を待つジェイワーさん ©Ibrahim Malla/IFRC

「私は夫を交通事故で亡くし、13歳の息子のハッサンは重傷で苦しんでいます。息子は数カ所を骨折した上、ほとんどの歯を失いました」

ジェイワーさんはシリア赤のスタッフがハッサンくんの包帯を取り換えるのを見守ります。末の娘のシャハドちゃんもまた、病気を患い、巡回診療ユニットで検査を受けることになっています。

シリア赤の巡回診療ユニット

巡回診療ユニットで子どもの診察を行うシリア赤の医師 ©Ibrahim Malla/IFRC

ザハーさん(32歳)は、3人の血友病の子どもを抱えていますが、なかなか薬を手に入れることができません。以前は洋服の販売員をしていましたが、ここ18カ月もの間、家族とともにこの避難所で暮らしています。

「私たちの家と店は、めちゃめちゃにされてしまいました。ここへ来たのは、ほかに行く所がないからです。巡回診療ユニットのおかげで、とても助かっています。特に妻の妊娠中は世話になりました。出産のために病院にも運んでくれました」

しかし、避難所の人びとが抱えているのは、健康問題だけではありません。「ここに住む男性はみな、仕事がありません。私はとにかく、仕事を見つけたい。仕事がなくて恥ずかしい気持ちです」とザハーさんは話します。

子どもたちの心の健康にも寄与

シリア赤の巡回診療ユニット

親が巡回診療ユニットで診察を受けている間、心のケア活動に参加した子どもとシリア赤ボランティア ©Ibrahim Malla/IFRC

大人たちが診察を受けている間、子どもたちは、シリア赤の心のケアチームのボランティアとひとときの楽しい時間を過ごします。

ボランティアたちと遊ぶことで、子どもたちに笑顔が戻ります。わずかな時間、貧しさも苦痛も忘れ、お絵描きやお遊戯に夢中になり、子どもらしく遊ぶことができるのです。

シリア赤の巡回診療ユニット

笑顔でお絵描きを楽しむ子どもたち ©Ibrahim Malla/IFRC

ボランティアの一人、リナ・アボウ・アケルさんは、次のように語ります。

「毎週のこの場所での活動において私たちは、子どもたちの身体および精神にも効果のある活動を行うようにしています。自分の精神状態に気づかせ、悲しみに対処する方法を教えています。子どもたちが自分の感情を表現できるようになることは、とても大切なことなのです」

シリア赤の巡回診療ユニット

避難民女性に対し心のケアを行うシリア赤ボランティア ©Ibrahim Malla/IFRC

タニラ医師はこう説明します。

「シリア赤の巡回診療ユニットは、政府の保健サービスが全く届かない地域や、避難所の中にも、サービスを届けています。また慢性的な病気の治療薬も提供しています。さらに、人々にとって特に重要な心理社会的支援をも、このユニットは提供しているのです」

シリア赤のアッタール社長は、「この診療ユニットは、われわれの地区拠点や保健所が機能していないダマスカス郊外において、非常に役立つことが分かりました」と述べています。

シリア赤は現在、12基の巡回診療ユニットを稼働させ、全国の避難所に暮らす避難民へ保健サービスや薬を提供しています。国際的な支援を受け、さらに6基のユニットが国際赤十字を通じて整備されることになり、近日中に稼動を開始する予定です。

※この記事は国際赤十字・赤新月社連盟のニュース記事を元に、赤十字語学奉仕団の協力により作成しています。

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