命を落としたボランティアの逸話:シリア内戦 ~家族の悲しみと誇り~

支援物資を届ける車両に駆け寄るテント暮らしのシリア難民

イラクの難民キャンプで、支援物資を届ける車両に駆け寄るテント暮らしのシリア難民 ©IFRC

内戦勃発から2年半が経った今もなお、混迷を極めるシリア。毎日数百人もの人びとが、犠牲になったりけがを負ったりして苦しんでいます。

これまでの犠牲者は約10万人。また家を破壊されたり、危険な状況から身を守るために、家を後にして避難している人は、国内で425万人。周辺国へも210万人が流出しています。

一方、自宅にいても、日々の食料や水、生活物資、十分な保健医療サービスなどを得られずにいる人びとも依然として多く、680万人が支援を必要としています。

こうした人びとの苦痛を少しでも和らげ、また生活の基盤を失った人びとが最低限の生活を送ることができるように、シリア赤新月社(以下、シリア赤)のスタッフとボランティアは、支援活動を続けてきました。

苦しんでいる人びとのために自分が行動したい、という強い志と赤十字活動への誇りを胸に、自らの命を危険にさらしながら、日々任務にあたっています。

シリア赤の救急スタッフ

24時間体制で人びとの救命活動にあたるシリア赤の救急スタッフ ©Ibrahim Malla/IFRC

国際人道法は、赤十字・赤新月のマークをつけて人道支援活動を行う者を武力攻撃の対象にしてはならないことを明確に規定しています。

しかし実際には、たいへん悲しいことに、この2年半の間で22人ものシリア赤スタッフ・ボランティアが活動中に命を落としました。

国際赤十字は、一般市民はもちろん、人道支援を提供する者への武力攻撃についても強く非難し続けると同時に、内戦の当事者などとの対話を続けていますが、それでもなお、犠牲は増え続けています。

今回の赤十字国際ニュースでは、内戦下で命を落としたシリア赤ボランティアのご家族のインタビューをお届けします。

~シリア赤 取材報告~(インタビュアー:シリア赤 ヴィヴィアン・タウメー)
「息子が爆撃に巻き込まれ亡くなった日のことは一生忘れない」

2008年にシリア赤のボランティアに加わったカリーム・ジャボールは2012年12月、シリアのジャラマナという地区で、自動車の爆発により負傷した人びとを病院に搬送しようとしていた最中に命を落としました。

私たちシリア赤取材班は、カリームの父親に自宅に招かれました。

カリームの父親。目に涙を浮かべ、息子の思い出を語る。

目に涙を浮かべ、息子の思い出を語るカリームの父親 ©Ibrahim Malla / IFRC

父親は涙を流しながらも、私たちを温かい言葉で歓迎してくれました。家の中の至るところにカリームの写真があり、まるで彼が私たちとともにそこにいるような感覚を覚えるほどでした。

カリームの父親は私たち一行の写真家イブラヒムに目を向けて言いました。

「あなたを見ると息子の姿が浮かびます。息子はいつもあなたのことを話していたからね。いつも言っていましたよ、『僕の行くところにはどこでもイブラヒムのカメラがついて来てくれるんだよ』と」

人びとのために、信念をもって活動していたカリーム

人びとのために、信念をもって活動していたカリーム ©Ibrahim Malla/IFRC

彼は、息子の命を奪うこととなる爆発が起きた日を、そしてカリームが負傷者の救助に向かった時のことを忘れることはありません。

カリームの友人ラミも、同じ活動中に亡くなりました。その衝撃はたいへん大きく、双方の家族は耐えがたい心の傷を負いました。カリームは彼の家族にとって、たった一人の息子でした。

信頼・尊敬されるシリア赤のボランティア

一家の親しい友人は語ります。「ボランティアたちは武器を携行することはありませんが、自らの命を携えて活動しています。そして彼らがこうして自分自身の命をかけて活動に参加しているのは、他の人びとの命を救うためなのです。シリア赤のボランティアの働きはこの地域のすべての人に知られており、すべての人の尊敬を受けています」

カリームの父親は加えて、彼の親戚が手を骨折したためシリア赤の救急センターへ同行した際に目の当たりにした、ボランティアたちのプロ意識について、「私は医者ですから、そこのスタッフがいかに自分たちの責務を高い専門性をもって果たしているかをすぐに理解しました」と話します。

子どもたちに話しかけるボランティア

子どもたちに話しかけるボランティア ©Ibrahim Malla/IFRC

この危機的な状況下で、ボランティアがあらゆる恐怖や苦悩、困難に直面しながらも活動している姿勢は、広く支持されています。それはシリアの若者たちの間で明らかな社会現象となって現われています。

ボランティアたちの存在とその働きが、さらに多くの若者たちの活動への参加を強く促しているのです。

私たちがインタビューを行っている間も、砲弾の爆発音で何度か会話が遮られました。同僚が受信したメールによると、それはカルム・スマディという地区の近隣で起きた迫撃砲の爆撃によるものでしたが、幸い負傷者はいませんでした。

カリームの母親が話を続けます。ある日カリームが帰宅すると、突然何本ものボトルを水でいっぱいにし、冷蔵庫に入れました。「母さん、みんな冷たい飲み水がなくて困っているんだよ」と言ったそうです。近所の避難所で暮らす避難民のために、その冷たい水を持って行こうとしていたのです。

このような家族の悲しみの声というのは、多くの場合、人びとに共有されないままになってしまうものなのですが、今回私たちは、カリームの思い出を、彼の愛する家族と分かち合うという貴重な機会をいただくことができました。

※この記事は国際赤十字・赤新月社連盟の記事を元に、赤十字語学奉仕団の協力により作成しています。

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