シリア情勢~もっとも被害の深刻な地域へ届く赤十字の支援~

事実上の内戦状態にあるシリアでは、政府軍と反体制派との衝突が16カ月にもわたり続いています。戦闘の勢いは止まる所を知らず、連日100人前後の市民が死傷するなど、深刻な被害が全土へ拡大しています。

安全を求めて隣国へ逃れる人の数も増え続け、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、7月20日までにイラク、ヨルダン、レバノン、トルコへ逃れた人びとは11万4894人に上ります。激しさを増す戦闘がこれ以上拡大すれば、国境を越えて被害が飛び火する可能性も否定できません。

命の危険と向き合いながら続く赤十字の活動

負傷者の救助へ急ぐシリア赤新月社医療チーム

負傷者の救助へ急ぐシリア赤新月社医療チーム ©Ibrahim Mall/SARC

シリア赤新月社(以下、シリア赤)と赤十字国際委員会(以下、ICRC)は、シリア国内で被害が最も深刻な地域で、唯一の人道機関として、危険な状況下で大きなリスクを負いながら活動を継続しています。

食糧・生活必需品の配付、負傷者の応急処置、救急車での負傷者の搬送、医療施設への医薬品や医療器具の提供、清潔な飲料水の供給など、活動内容は多岐にわたり、これまで約60万人に支援の手を差しのべました。

しかし、戦闘の激化に伴い、救援活動にあたるシリア赤スタッフやボランティアは自らの命が危険にさらされている状況です。ICRCは負傷者救護や救援物資配付などの活動が安全に行われるために、すべての当事者に一日数時間の停戦を要請していますが、その「停戦時間」が守られず活動が妨害されるケースが発生しています。

7月9日には赤新月の標章が付いた救急車が銃撃され、シリア赤のボランティアが命を落としました。これで、今回の紛争によりシリア赤のボランティア4人と事務局長の計5人が活動中に命を落としたことになります。いずれも戦闘下、助けを必要とする人びとに支援を行っている間に攻撃を受けました。

すべての人が無差別に攻撃の対象とされる残酷な状況下、救援者の身の安全が確保されなければ活動は成り立ちません。シリア赤のアブドゥル・ラーマン社長は「すべての戦闘当事者は、医療従事者と赤十字・赤新月の標章を尊重し、シリア赤のボランティアスタッフが何者にも妨げられることなく、安全に救援活動を行えるよう配慮しなければならない」と強く訴えます。

シリア赤新月社スタッフにより届けられる救援物資

シリア赤新月社スタッフにより届けられる救援物資 ©Ibrahim Mall/SARC

一方、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)は、連盟シリア代表部に調整員を派遣し、今後のシリア赤による救援活動への長期的な支援策を講じています。

連盟はシリア赤を支援するため、これまでに食糧1万8800食、マットレス1万2600枚、毛布3万2640枚、調理セット1万1388個、衛生キット2万2403個を提供したほか、救急車22台を配備するなど医療活動への支援を行っています。

しかし、シリア赤によると、いまだ支援を必要とする人びとは150万人に上ります。

連盟はシリアの深刻な状況を受けて、7月6日に国際社会に対して緊急支援要請を発出。シリア国内で増え続ける犠牲者計20万人を支援するため、約22億円の緊急支援を決定しました。

日本赤十字社は、シリア赤の救援活動を支援するため約1000万円の資金援助を行っており、人道ニーズの拡大を受けて新たに2000万円の資金援助を行うことにしています。