シリア情勢~戦闘激化、人道支援を急ぐ赤十字~

2010年末から2011年にかけて、中東や北アフリカで民主化を求める市民が連鎖的に立ち上がった「アラブの春」。シリアでもアサド政権退陣を求める抗議活動が繰り返されており、政府側はこうした動きに武力で対抗しています。

このような武力衝突はシリア全土にわたり激化しており、これまでに1万4000人が死傷する深刻な事態となっています。

今年6月、戦闘が激しさを増していることを受け、国連はシリアが内戦状態にあるという認識を示すとともに、現地での国連停戦監視団の活動を一時中断しました。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告によると、5月末時点での隣国(イラク、ヨルダン、レバノン、トルコ)への避難民は7万8137人に上っており、今後もさらに増え続けることが懸念されます。

戦闘地で続く赤十字の懸命な救援活動

このように、シリア国内での人道支援活動が極めて困難な状況にある中、赤十字は数少ない人道機関として懸命に活動を進めています。

シリア赤新月社は赤十字国際委員会(以下、ICRC)と緊密に連携しながら、負傷者の応急手当てや救急車の派遣、避難する市民への手助け、食料や毛布の配付など、これまでに50万人への緊急支援を実施しました。高まる人道ニーズに対応するために、今後は支援規模を拡大し、毎月10万人を対象に食糧配付をはじめとする生計支援を行うことにしています。

ICRCは、すべての当事者に対して、人道支援活動を行う赤十字関係者の安全確保を申し入れるとともに、国際人道法の諸規定が守られるように強く呼びかけています。しかし、活動が妨害されるケースも見られ、今年3月には支援物資を積んだトラックと救急車が政府軍制圧地区への進入を拒まれる事態が発生しました。

こうした状況の中、ケレンベルガ―ICRC総裁は昨年6月以降シリアを3回訪問し、負傷者救護のための時間停戦の具体化や収容所へ拘束されている人びととの面会など、人道支援活動の拡大を政府に申し入れました。ICRCは今後も活動を拡大し、離ればなれになった家族や抑留されている被害者の調査、そして再会支援にも力を入れていきます。

シリア赤新月社が配付する初期治療キットを受け取る子ども

シリア赤新月社が配付する初期治療キットを受け取る子ども ©Ibrahim Mall/SARC

一方、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)は、事態収束の兆しが見えない中、ICRCのほかに、世界食糧計画(WFP)、UNHCR、欧州委員会人道援助局(ECHO)などの人道機関とも情報交換を行いながら、シリア赤新月社による救援活動を支援しています。

同時に、同赤新月社の活動をサポートするため、連盟ジュネーブ本部はベテランの管理者を中東・北アフリカ地域代表部(レバノン・ベイルート)へ派遣し、今後見込まれるさまざまなニーズへの対応強化を図っています。

また、隣国ヨルダンではシリアからの避難民に対する救援物資や食糧配付、医療支援活動がヨルダン赤新月社により行われており、連盟は同赤新月社を支援するため、毛布やキッチンセット、衛生セットなどを提供するとともに倉庫用大型テントを配備しました。

日本赤十字社の対応

日本赤十字社は、赤十字が行うシリアを含む中東、北アフリカ地域での救援活動に対して、これまでに2000万円の資金援助を行いました。シリアでの人道支援ニーズの拡大を受けて、新たに約1000万円の資金援助を行います。