「最後まで自宅で過ごしたい」その思いを叶えるために~赤十字安謝じんぶん学校の挑戦

日本赤十字社(以下、日赤)が沖縄県那覇市で運営する高齢者福祉施設、日赤安謝(あじゃ)福祉複合施設は、特別養護老人ホームを中心に、ショートステイやデイサービス、居宅介護支援等を展開しています。

同施設のデイサービスセンター今年から、「赤十字安謝じんぶん学校」を開校し、学校方式によるデイサービスの運営を開始しました。

このユニークな取り組みと、その背後に秘められた思いをご紹介します。

「赤十字安謝じんぶん学校」とは?

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技術の授業で沖縄の伝統工芸『紅型染め』に挑戦!

『じんぶん』とは、沖縄の言葉で『知恵』を意味します。

赤十字安謝じんぶん学校(以下、じんぶん学校)は、デイサービスのご利用者に自身の健康を守るための知恵を身につけていただこうと、さまざまな授業を提供しています。

デイサービスで学校とは、一体どのような授業が行われているのでしょうか。

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漢字ドリルに取り組む学生の眼差しは、真剣そのもの

じんぶん学校の一日は校歌斉唱から始まります。続いて朝の会を開催し、健康長寿体操を行った後の午前中は全体授業の時間です。

全体授業は、その日の給食食材の特徴や栄養について学ぶ栄養学や生活習慣病などの疾病の特徴や予防対策について学ぶ健康学、分解された漢字の推理ゲームやイラストの間違い探しなどを行う脳トレーニングの三科目で、曜日ごとに時間割が決まっています。

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調理の授業は仕上げの盛り付け中。食べるのが楽しみです

授業で使用する資料や教材は、すべて教師役を務める職員の手作り。学生であるくご利用者に分かりやすいよう、工夫を凝らしながら準備しています。

給食の時間を挟んで、午後は個別授業の時間です。学生は国語や社会、理科、調理、音楽、技術などの多彩な科目の中から好きなものを選んで受講します。

国語の授業で漢字ドリルやペン字、理科では園芸に挑戦したりと積極的に取り組みます。

施設外が教室になることもあります。これまでに社会の授業で城址巡り、技術の授業で那覇市伝統工芸館での紅型(びんがた)染め体験など、さまざまな課外授業が行われました。

じんぶん学校リーフレット(PDF:947KB)

「最後まで自宅で生活したい」という希望に応えたい

日赤安謝福祉複合施設はなぜ、じんぶん学校というユニークなデイサービスを始めたのでしょうか。そこには、職員たちの苦悩がありました。

デイサービスご利用者が近年、有料老人ホームに入居するケースが急激に増加。その中には、「最後まで自分の家で生活したい」という希望を持ちながら、身体・認知的なレベルの低下により、自宅での生活を断念された方が多くいらっしゃいました。

「これまでのような支援では、最後まで自宅で過ごしたいというご利用者の希望を叶えることができない」―この事実に衝撃を受けた職員たちは、どうすればご利用者の希望に応えることができるのか、幾度も話し合いを重ねました。そしてたどり着いた答えが、「自分の健康は自分で守る。そのためのじんぶんを、ご利用者の皆さまに身につけていただく必要があるのではないか」というものだったのです。

こうして、じんぶん学校という新しい挑戦が始まりました。

楽しく前向きに授業に取り組むご利用者

じんぶん学校は利用者の皆さまにも大好評で、喜びの声を多くいただいています。

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修了証をもらって笑顔のご利用者。頑張った証しです

「赤十字安謝じんぶん学校の体育(リハビリ)の授業を受けるようになり、足腰が強くなって、とてもうれしい。これからも頑張りたい」

「デイサービスを利用するときに、ほかの数か所でも体験しました。その時、学校の授業方法でいろいろ学べると聞き、赤十字安謝じんぶん学校に決めました。今では、音楽の授業(三味線)で課題曲を2曲弾けるようになることを目標に頑張っています」

「学校のない日は一人で家にいて淋しくなります。学校に来るとほかの生徒も大勢いて、とても楽しい」

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社会の授業では、城址巡りにも行きました!

「社会の科目の課外授業で、城址を見学しました。教師をしていたので、懐かしい気持ちとわくわくする気持ちになりました」

「ほかの生徒と一緒に食べる給食はとてもおいしい」

「一年に一度表彰してもらえるので、また頑張ろうと思う。」

「70年ぶりに学校に通うようになって、うれしい」

「家族からも頑張ってと応援され、とてもやる気が出ました」

ご利用者の皆さまが、多くの人と関わりながら楽しく前向きに授業に取り組み、じんぶんを身につけていく様子が目に浮かぶようです。

試行錯誤を重ね、職員のスキルアップにも

じんぶん学校は、その運営に携わる職員にもある変化をもたらし始めています。

同施設で働き始めて9カ月になる玉寄咲紀(たまよせさき)介護職員は、じんぶん学校が自身のスキルアップにつながっていることを実感している一人です。

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自身の成長も実感している玉寄職員

「話をすることは大好きなのですが、人前に出るのはとても苦手でした。それが今では、先輩やご利用者の助けもあり、堂々と授業を進めることができるようになりました。

赤十字安謝じんぶん学校では、朝のチャイムが鳴って校歌斉唱から始まり、授業の一環の脳トレ・健康学・栄養学を学ぶ授業があります。私たち職員も教える立場として試行錯誤するので、スキルアップにもつながります。ご利用者は学生に戻ったような気持ちになり、若いころに学校に行けなかった方がたからも『毎日来るのが楽しい』とうれしい声をいただいています。私たちも一緒に楽しい日々を過ごしています。

これからもご利用者とともに楽しむ授業、学ぶ授業に取り組んでいきたいと思います」

じんぶん学校はこれからも地域とつながり、ご利用者の皆さまが最後まで住み慣れた自宅で生活できる環境づくりに、全力で挑戦していきます。