いのちを守る子育て支援~幼児安全法講習を保育園で開催

子どもの死亡原因で最も多い『不慮の事故』。多くの乳幼児を預かる保育園でも、子どもたちの思わぬ行動などによる事故は少なくありません。

日本赤十字社(以下、日赤)は、子どもたちの生活を見守る保育士の方がたに事故予防や応急手当、一次救命処置を含む『幼児安全法』を学んでいただくことで、保育の安全を高めていこうという取り組みを、全国保育園保健師看護師連絡会とのタイアップ事業として今年度からスタートしました。

その第1回の講習が8月2日、埼玉県熊谷市の「なでしこ保育園」で開催され、保育士ら31人が参加。のどに物が詰まった際の対応法などを確認した後、心肺蘇生とAED(自動体外式除細動器)による一次救命処置を体験しました。

保育の現場を想定した実践的な講習

チームを組んで繰り返し学習した一次救命処置

なでしこ保育園は5年前にAEDを設置。以降、毎年職員を対象にした研修を重ねていて、今年も7月に研修会を行ったばかりです。

そうした中での講習会開催について、同園の門倉文子理事長兼園長は「緊急時にきちんと対応していくためには、何度も繰り返し受講し、しっかり自分のものにしていく必要があります」と意義を強調。

また、同園で看護職に就く飯田佳代さんは「園には2人の看護師がいますが、私たちが席を外していることもあります。園に務めるすべての職員が誤嚥(ごえん)時の対応やAEDの使い方を身につけておくことが、子どものいのちを守るためには大切です」と指摘します。

乳幼児に起こり得る事故を想定した今回の講習では、乳幼児の気道の太さを円筒で確認し、どんな玩具や食べ物がのどに詰まりやすいかを学びました。

誤嚥の際は、呼吸の異常音(狭くなった気道を空気が通ろうとするために生じる音)を観察し、背中をたたく前に、幼児に自分で咳をするよう促します。異常音の実演をすると、参加者からは「知らなかった」と驚きの声が上がりました。

心肺蘇生も人工呼吸を大人の場合よりも重視(※)する必要がある点に留意しながら実習しました。

講習会に参加した2歳児を担当する伊藤千春さんは、「給食で魚の骨を詰まらせる子どもは少なくありません。のどに物が詰まった際には、まずどんな呼吸なのかを観察することなど今日は役に立つ勉強ができました」と感想を寄せてくれました。

  • ※乳幼児は溺れたり誤嚥による窒息が原因で心肺停止することが多いため、心肺蘇生時には体内に酸素が少なくなっている可能性があります。そのため大人の場合よりも早めに人工呼吸を行い、体内に酸素を送り込むことが必要とされています

3年で全国854保育園に普及

指導を行う同連絡会の並木会長。「保育士が学んだものを、今度は保護者に伝えていくことも大切です」

日赤が今回タイアップする全国保育園保健師看護師連絡会は、保育園で働く看護職を中心とした組織です。

全国854保育園の約1000人が参加していて、園児の事故予防や健康管理、保護者への指導などの活動を行っています。

タイアップ事業では、日赤と同連絡会が持つそれぞれのネットワークを生かし、幼児安全法を保育園に普及。保育士の救命スキルのアップを図ることで、不慮の事故から一人でも多くの子どものいのちを救っていくことを目的としています。

同連絡会の会長を務め、幼児安全法指導員として日赤埼玉県支部にも所属している並木由美江さんは、「保育を取り巻く現状は、低年齢児の保育や夜間・長時間保育、認定保育園の新設など、保育の場を増やして待機児童を減らす動きの中、看護師のいない保育園も多く、職員の安全教育に関する講習が求められています。」と今回のタイアップ事業の意義を強調。「継続した取り組みとしていくために、より現場に則した実践的な講習を心がけていきたい」と抱負を語っています。

タイアップ事業は今年度にモデル事業として実施した後、来年度から3年計画で同連絡会の会員が所属する全国の保育園に広げていく予定です。