カンボジア救急法普及支援事業(山梨県:有坂泰志)

日本赤十字社(以下、日赤)は、アジア・大洋州地域の姉妹赤十字・赤新月社が実施する救急法等の普及支援事業の一環として、カンボジア赤十字社(以下、カンボジア赤)を2008年から支援しています。

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落雷の危険性について説明する有坂指導員(写真左)

同国の首都プノンペンで2014年、カンボジア赤の救急法指導者の知識・技術の向上を目的として、救急法技術研修が11月19日から3日間にわたり開催され、カンボジア各地から65人が参加しました。

今回、同研修にアドバイザーとして参加するため、日赤山梨県支部からボランティアとして初めて派遣された有坂泰志救急法指導員にインタビューしました。

有坂指導員について

私は以前、青年海外協力隊員として2年半ほど西アフリカのセネガル共和国に派遣され、農村部の巡回指導の活動を経験しました。今回のカンボジア救急法普及支援事業のための派遣は、ミッションを抱えての海外渡航としては2回目になります。

この派遣にあたって

今回の派遣は、人生初のアジア圏でした。

山梨県支部からはすでに、病院と支部から各一人ずつがカンボジアに派遣されていましたし、その際に他県支部からはボランティア指導員が参加していることも聞いてはいました。しかし、その後継任務に巡ってくるとは思ってもいませんでしたので、少なからず驚きましたが、もともと楽天的な私は「行けば何とかなる」的な性分なので特段の不安はありませんでした。

カンボジアの人たちの反応について

非常に強い「食い付き感」を受けました。

聞いたところによると、カンボジアでは交通事故による死者が年間2500人くらいに上るそうで、単純に比較はできませんが、人口の比率で考えると日本の数倍の命が失われていることになります。

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身近なものを使って溺者を救助するには?

また、交通事故以外でも、日常生活に多くの危険が潜んでいます。

雨期に発生しやすい水害による溺水や落雷、住宅地への浸水の際に水を避けて住宅に逃げてくる毒ヘビとの遭遇なども多いそうです。

そのため、救急法に関しても、外傷の手当ての中でも咬創対処、あるいは避雷行動、溺者救助などが、カンボジアの指導員にとって関心が高い内容でした。

現地で学んだこと、感じたことについて

指導する者としての「プロ意識」を感じました。

カンボジアの人びとにとって、「常にそこに厳然と存在する危険であり脅威」への対処を学ぶのが救急法。受講者が危険を実体験としてとらえにくいことの多い日本のそれとは、質的に異なるものを感じました。これは、ひとえに日本では救急車を依頼すれば数分で専門家が到着し、対応してもらえる社会が出来上がっている幸せが、享受できているからだと思います。

また、受講生にやさしい講習を行っているという印象も受けました。

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包帯による手当てのデモンストレーション

派遣中、現地のボランティア指導員による地方村落での講習会を見せてもらいました。

例えばその中で、道路上で倒れている人を発見した場合に、要救助者を挟んで離れたところに、木の枝を折り取ってきて置く処置を見ました。

これは、交通事故の場合、道路上に注意喚起のための印を置くことを表現していると説明してもらいました。

また、気道内異物の除去のデモンストレーションをする際にも、実際に「季節のフルーツ」を用意して、その実を喉に詰まらせる演技を導入として行っていました。これらは、受講生にとって講習に入っていきやすく、実際の場面で思い出しやすいという効果があるのではと感じました。

今後、この事業の発展について期待すること

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プノンペンの空港に設置されたAED

カンボジアでの、AED(自動体外式除細動器)の早期普及への貢献が、期待できると感じました。

日本では日常に溶け込みつつあるAEDも、カンボジアではまだほとんど設置されていません。

法律的な問題などあるそうですが、カンボジア赤がAEDの講習体系を確立して普及のめどが立てば、それがカンボジアでの標準的な指導方法となって普及に弾みが付き、法律的な部分もクリアできるかもしれないとの話でした。

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AEDの使い方を熱心に学ぶカンボジア赤の指導者たち

包帯法や搬送法など、過去に伝達の済んでいる手技については、カンボジア赤の指導員の技術は素晴らしいものがあります。

特に手当ての際の安全管理や搬送法などは、日本と異なる疾病・傷病構造を持ち、かつ救急車の支援が十分ではない土地事情を反映したものになっていると感心させられました。

今後私たち日本からの支援者は、一次救命処置や包帯法などに関する個々の技術を見せて伝えるといった支援もさることながら、もっとトータルな技術体系としての救急法を紹介する必要があると今回の派遣で感じました。

支援を受ける側の担当者や指導員は、日本から得る支援は常に自分たちの知識技術より先を行っており、お手本にすべきとしていることを感じたためです。

社員・寄付者の皆さまに伝えたいこと

私たちが協力している日赤の社費(寄付金)は常に、「今この時に困っている人」のために有効に使われています。

社員や寄付者の皆さんの中には、「日赤に寄付しているけど、どんなことをしているのかな?」という方もいらっしゃるかもしれませんが、赤十字は困っている人に手を差し伸べることが存在意義です。

日赤の事業に関しては、献血や病院の経営などは平時の事業として一般社会への認知度が高いですが、防災・救急法の講習会の実施や今回のような海外への技術支援も重要な事業の一つであり、これらは「お金だけでは決して解決のできない」ものなのです。

最後になりますが、今回ふつつか者の私ですが貴重な体験をさせていただきました。

私、そして私たちがカンボジアを訪問したことで両国のつながりが一層強くなり、カンボジアの救急法の普及に貢献ができていればと思います。そして、今後のカンボジア赤への支援事業の継続につながっていくことを願ってやみません。

それと同時に、あの東日本大震災の際にいち早く義援金を募り送ってくれたカンボジア赤に対するお礼に、わずかでもなっていればと思います。

ありがとうございました。

カンボジア救急法普及支援事業を含む赤十字の活動は、多くの赤十字社員の皆さま、寄付者の皆さまの善意によって支えられています。赤十字社員へのご参加についてはこちらを、赤十字へのご寄付についてはこちらを、ぜひご覧ください。