東ティモール救急法普及支援事業(東京都:堀内英明)

現地指導員にアドバイスをする堀内氏

現地指導員にアドバイスをする堀内氏

日本赤十字社では、アジア・大洋州地域の姉妹赤十字・赤新月社が実施する救急法等の普及支援事業の一環として、東ティモール赤十字社が行う救急法の普及事業を2004年から継続して支援しています。

「アジアの最貧国」のひとつと言われる東ティモールは、2002年の独立直後の混乱から、長らく政府による十分な行政サービスが行き届かない地域でした。東ティモール赤十字社では、限られた人材と資材を活用して、救急法の普及をはじめとする赤十字事業を推進しています。

日本赤十字社から通算6回目の派遣となる技術指導スタッフとして、首都ディリで行われた救急法指導員研修会に参加するため、2012年10月に現地を訪れた日本赤十字社東京都支部 総務課 堀内 英明 総務係長にインタビューしました。

「苦しんでいる人を救いたい」という気持ちは同じ

どんなことを期待していかれましたか?その期待は成果として現れましたか?

研修会最終日に現地指導員と

今回の東ティモールへの救急法指導員としての派遣目的は、現地の救急法指導員の方々の研修会に参加することでした。この派遣事業には、日赤から過去5名の指導員が派遣され、技術指導をしております。派遣前は、東ティモールの救急法指導員に対し、何ができるのだろうかと自分の役割がはっきりしませんでした。

しかし、事前の準備として、日本の救急法の知識と技術だけは、しっかり再確認し、現地の方にお見せできるよう準備を整え、今回の派遣に望みました。

現地に着いてから、本社職員を通じ、東ティモール赤十字社の救急法担当者に、今回の研修会において、我々日赤に何を期待しているか確認しました。すると、日本の救急法の技術を見せてほしい、また、彼らの救急法の技術に対し助言がほしいというものでした。そして、研修会の進め方については、日赤の指導員が主導して進めるのではなく、東ティモールの救急法指導員が主導して進めるということでした。

実際、彼らの研修に3日間参加しましたが、救急法講習教本の内容についての修正では、彼らの中の指導員(看護職)が中心となり、参加した指導員と表現やその解釈について熱く議論していました。

技術については、まず彼らがデモンストレーションし、その後、日本のものをお見せしました。その中で、こちらが日本の技術をお見せすると、彼らは近づいて食い入るように見て、聞いていました。こちらも下手な技術は見せられないという気概を持ってやりました。その後の質問では日本では当たり前に教えていることについて、なぜそうするのかという観点で質問されました。

日本の技術をお見せした後は、現地の指導員が再度、日本の技術と同じことを参加者の前でデモンストレーションしました。その後、彼らの技術との違いや疑問点があれば、さらに質問をしてくるという姿勢がありました。また、日本の技術で、彼らが納得し、理にかなっていると考えるものは、自分達の技術として取り入れようとしていましたので、我々日赤が研修会に参加した一定の成果はあったのではと思います。

東ティモールの人たちの反応はどうでしたか?

現地指導員の方々は、明るく、フレンドリーな雰囲気を持つ方々ばかりでした。語学ができない私でも片言の英語で昼食時に現地の生活などについて歓談もできました。

また、現地の救急法担当者はじめ指導員の方々は、3日間の研修に一生懸命取り組んでおり、東ティモールの救急法の知識と技術は今まさに発展し続けていると強く感じました。仲間の指導員の説明や実技指導に対して厳しい目線で指摘したりしていましたが、決して険悪な雰囲気ではなく、ユーモアのある実技や説明で参加者を笑わせる指導員もいて和やかな場面もあり、メリハリのある研修でした。

東ティモールには、日本では駅や商業施設で見かけるようになったAED(自動対外式除細動器)がありませんでした。普及していないAED(自動対外式除細動器)のデモンストレーションをしたときも、デモンストレーションが終わった後、いくつもするどい質問がありました。また、興味を持っていただいたのか、日本から持参したAEDを練習用に置いていってほしいということも言われました。AEDに関しては、意外と簡単だという感想をいただき、日本で実技指導したときに一般の方々に持ってもらうのと同様の感想を持ってもらいました。

今後、東ティモールの救急医療体制の整備に伴い、国内の疾病事情に合わせ、AEDを東ティモール赤十字社が普及する役目を担う日が来るのではないかと思いました。

現地で学んだこと、感じたことはありますか?

今回の研修会では、現地の指導員の方々の実技指導法を見ることができました。その中で、傷病者の観察方法、包帯法および搬送法でこのような方法もあるのかと感心することがいくつもありました。同じ救急法の技術でも国によって違いがあるのを実感しました。

東ティモールでは、救急医療体制が整備されているのは、まだ都市部の一部のようで、東ティモール赤十字社の指導員の方々が事故現場で応急手当したのち、病院へ運ぶ役目を果たしているということも聞きました。

実際、2002年の独立以降、車が爆発的に増えているようで、交通事故が毎日のように起きているということでした。実際、東ティモールの滞在中に、交通事故後と思われる現場を見ることがありました。

また、今回、首都ディリから離れたリキサ地方へ視察に車で3時間ほどかけて行きましたが、道路などのインフラが整備されておらず、雨季には川ができ通行できなくなる、このような病院もないところで急病になったり大怪我をしたらどうなるのだろうと思いました。

このような中では、救急法の知識と技術が必ず役に立つと感じましたので、東ティモール赤十字社による救急法の普及の必要性を感じました。

今後、この事業の発展をどのように期待していますか?

国それぞれで経済事情、救急医療体制の国内事情は異なります。しかし、「苦しんでいる人を救いたい」という気持ちは他の国でも同じだと感じました。

東ティモール赤十字社の努力だけでは、どうにもできない国内事情はありますが、救急法普及事業はまだまだこれから広がりがあるものと期待しています。

最後に、社員・寄付者の皆さまに伝えたいことはありますか?

東ティモール赤十字社は、救急法の国内普及体制を整備するには、まだまだ十分といえません。彼らの救急法に対する熱意を感じることができましたが、経済的な面で救急法担当者の人材不足、また救急法講習資材や、救急法担当者の業務に必要な資材も不足しています。

観光旅行で気軽に行けるような場所ではありませんが、同じアジア・大洋州地域の仲間として、東ティモールの方々は日本人と友好的な関係が保てる親しみやすい性格を持った方々です。

これからも引き続き、この仲間の赤十字事業の発展に協力していくことが、日本赤十字社にとっても必要と感じました。この支援事業はもちろん、今回の派遣も含めて全国の社員、寄付者の皆さまのおかげで実現していることです。

友好の証として、同じ赤十字の仲間として、同じアジア・大洋州の一員としてこの事業を継続していくことで、東ティモール国内で苦しんでいる人を一人でも多く救うことができると思います。

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東ティモール救急法普及支援事業を含む赤十字の活動は、多くの赤十字社員の皆さま、寄付者の皆さまの善意によって支えられています。赤十字社員への参加についてはこちらを、赤十字への寄付についてはこちらを、是非ご覧ください。