カンボジア救急法普及支援事業 (香川県:大林武彦)

現地指導員に技術指導する大林係長

現地指導員に技術指導する大林係長

日本赤十字社では、アジア・大洋州地域の姉妹赤十字・赤新月社が実施する救急法等の普及支援事業の一環として、カンボジア赤十字社が行う事業を2008年から支援しています。

カンボジア内戦に終止符が打たれたパリ協定から20年。

復興目覚しい同国に、首都プノンペンで開催された現地指導員対象のトレーニングのため、日本赤十字社から2人目の技術指導者として、2010年10月に派遣された香川県支部 事業推進課 大林武彦 事業推進係長にインタビューしました。

一番伝えたかったのは、「優しさ」でした

どんなことを期待していかれましたか?その期待は成果として現れましたか?

日本赤十字社は、2008年に最初の指導者(山梨赤十字病院 望月ひろ美 看護師長)をカンボジアに派遣し、救急法指導員を養成しました。今回の私のミッションは、彼らに対して技術指導することでした。

カンボジアに行く前は、現地の指導員の皆さんに、助言や新しい教授法などを伝えることが出来るのか、また、皆さんに受け入れられるのかなど、期待と不安が入り混じっていました。しかし、実際に現地でトレーニングを始めると、私の話に必死に耳を傾け、テクニックを見逃がすまいとする指導員の方々の直向きな姿勢に、私の不安は一瞬で消え去りました。

彼らのこうした姿勢に助けられ、トレーニングは終始和やかな雰囲気の中で行うことが出来ました。

カンボジアの人たちの反応はどうでしたか?

現地指導員の皆さんのトレーニングへの参加意識は高く、指導実習の際、多くの質問が飛び交います。また、デモンストレーションの実習の場面では、指導員が技術を誤るとその場で他の指導員から指摘があがり、相互に研鑽している様子が伺えました。

お昼休みに一人の指導員からの質問で、傷病者の保温の方法を説明をしていると、他の指導員の皆さんも集まってきて、自主的に練習を始めました。このように、現地指導員は非常に積極的で、意識確認や体位変換など細かなテクニックひとつひとつに対しても、意見や質問が次から次へと飛び交い、講習時間を変更せざるを得ないほどでした。

トレーニング最後日の参加者へのアンケートでは、私の技術をもっと見たい、習いたい、といった感想を多くいただきました。このような指導員の皆さんの熱心な姿勢に触れて、この国での支援事業が大変効果的であることを実感しました。

現地で何か学んだこと、感じたことはありますか?

カンボジアでは、普段、私たちが日本で普及している救急法技術が必ずしも適用できないケースが多くあります。

私たちにとっては当たり前な、救急車による医療機関への搬送サービスは、プノンペン特別市などの大都市のみしか整備されておらず、人々の経済的状況によって、受けられる治療が異なることもまた事実です。毒ヘビや地雷、大都市での顕著な交通量の増加に伴う車の事故、富裕層を狙った強盗や、国土の多くを湿地や湖、河川が占めることによる水の事故など、日本とは救急法が必要となる背景も異なります。

また、特に地方部では民間伝承や旧来的な価値観を持つ方々も多く、医学的根拠がないと思われる手当による症状の悪化や、たとえ救命のためであっても異性間での人工呼吸に抵抗を示されるなど、カンボジア全土から集まった指導員たちから、日ごろの普及の苦労を聞くことができました。

今後、この事業の発展をどのように期待していますか?

救急法の普及は、単に知識や技術だけを人々に伝えるものではありません。
 それは、「苦しんでいる人を救いたい」という気持ち、「優しさ」の普及です。

カンボジアの人々が元来持っている人懐っこい、優しい気持ちを行動に移すための手段として、救急法がカンボジア全土に普及していって欲しいと願います。

最後に、社員・寄付者の皆さまに伝えたいことはありますか?

カンボジア赤十字社は、技術・財政の両面から、引き続き日本赤十字社の支援を必要としています。講習の資器材もまだまだ十分とは言えない状況です。

今回のミッションを通じて、同じアジア・大洋州地域の一員として、本事業のように姉妹社に継続的に手を差し伸べることも、我々、日本赤十字社の重要な使命であると実感しました。

こうした事業は、全国の社員・寄付者の皆さまによって支えられています。今後も、日本人が昔から培っている思いやりのこころを世界中に発信出来れば素晴らしいと思います。