東ティモール救急法普及支援事業 (神奈川県:鈴木賢一郎)

現地指導員に技術指導する鈴木係長

現地指導員に技術指導する鈴木係長

日本赤十字社では、アジア・大洋州地域の赤十字・赤新月社に対する救急法普及支援として、東ティモール赤十字社が行う救急法普及事業を2004年から継続して支援しています。
東ティモールは、2002年の独立直後の混乱から、長らく政府による十分な行政サービスが行き届かない地域でした。東ティモール赤十字社では、限られた人材と資材を活用して赤十字事業を推進しています。
日本赤十字社から通算4人目となる技術指導スタッフとして、首都ディリで行われた救急法指導員養成講習に参加するため、2009年9月に現地に派遣された神奈川県支部事業部救護課 鈴木賢一郎救護係長にインタビューしました。

どんなことを期待していかれましたか?その期待は成果として現れましたか?

初めての海外でのミッションであったので、期待よりも、正直、不安のほうがいっぱいでした。
単に知識や技術を伝達するのではなく、救急法の普及が、どの国の赤十字・赤新月社でも「人道」を具現化するための手段のひとつとして実施されていて、それが赤十字思想の普及であることを伝えたいと思っていました。
医療体制や救急体制の基盤が脆弱な地にあって、その場しのぎの手当であったり、民間療法にとらわれがちな印象を受けることもありましたが、救急法では、傷病者をよく観て、声をかけて、その人の持つ苦しみや痛みを軽減することが、最も重要だと繰り返し伝えました。
定められた要領に沿って講習を行うことが目的ではなく、相手の苦痛に向き合って手当を行うということが赤十字の救急法の目的であることを理解してもらえたと思っています。

東ティモールの人たちの反応はどうでしたか?

日常的に救急法を必要とする機会が多く、その時々によって状況が大きく異なる中で、必ず守ることと応用を効かせることを区別できるようになりました。
また、日本での救急体制や、紹介した新しい手当の方法を、自分達の生活や環境の中にいかに取り入れていくか、参加者間で夜遅くまで話し合いがなされて、伝えたことを実践しようとする意志を強く感じました。

現地で何か学んだこと、感じたことはありますか?

救急車もなかなか来ない、病院での治療も十分には期待できない環境の中で、赤十字のボランティアや職員が地域住民から求められるものがとても多く、その内容も多岐にわたっています。
受講者からは、「ヤシの木から降りられなくなった人をどうやって助けたらよいか?」「狭い溝にはまってしまった人をどうやって引き出せばよいか?」といった質問も受けました。
一見すると、救急法とは無縁の内容に聞こえますが、地域住民はそれだけ赤十字に期待しているといえるのではないでしょうか。
優しさ、強さ、安心感など、赤十字が人々に与えるものの大きさを改めて実感しました。

今後、この事業の発展をどのように期待していますか?

現地で一番気になったことは、車両優先の交通環境でした。
横断歩道もない中で、クラクションを鳴らされながら歩行者が道路を横断する環境は、危険なものに思えました。交通事故を目撃したことも何度もありました。
人々に、生命の尊厳を尊重するという赤十字の思想を広めることにより、交通事故の多い現状を問題視し、多少なりとも事故を減らせるのではないかと考えます。
最終的には、お互いを思いやる心が育ち、人間の苦痛を軽減するという赤十字の理念に通じるのではないかと期待しています。

最後に、社員・寄付者の皆さまに伝えたいことはありますか?

救急法を伝えるのも、手当をするのも、手当に必要な資機材を扱うのも、皆、人が行うことです。
直接会って、話し合い、共に学び、共感しながら、人が人を育て増やしていく、本事業を応援していただきたいと思います。