話をすることで生活に変化~浪江町民健康調査

日本赤十字社(以下、日赤)は福島県いわき市で、福島第一原子力発電所の事故によって避難している浪江町民の健康調査と健康支援活動を続けています。日赤医療センターの黒川寛子看護師が8月17日~9月18日、活動に取り組みました。

三巡目を迎えた健康調査

日赤が2012(平成24)年10月に浪江町民の健康調査を開始してから3年。自宅への訪問や電話を通して話を聞く活動は三巡目になりました。一巡目、二巡目の調査の際は断っても、「やっと話せるようになった」と三巡目の調査を受ける人が増えています。

「気持ちが落ち着いて、自分のことを話せるようになるには、多くの時間が必要なことが分かりました」と黒川看護師は語ります。

家の中にいることが多く、元気のない姑

今回、お姑さんとお嫁さんの二人に話を伺う機会があり、お嫁さんの希望で別々の日に、異なる場所で会うことになりました。

最初に会ったお姑さんはあまり元気がありません。近所に話ができるような友だちはおらず、畑を作ったりすることもなく、家の中にいることが多い生活。外出は週1回のデイサービスくらいといいます。

黒川看護師が「何かできることを一緒に考えましょう。涼しくなったら散歩や畑仕事をしてみたらいかがですか」と提案しても、否定的な答えが返ってくるだけでした。

信頼し、支えあう姑と嫁

ところが数日後、お嫁さんはこう言いました。「看護師さんと話してから姑は変わりました。会った翌日に野菜の種を買いに行き、早速畑を耕して種をまきました。病院にも自分で歩いて行きます。いったいどんな魔法の言葉を使ったのですか」

詳しく話を聞く中で、このお嫁さんが家族の中で誰よりもお姑さんの心配をしていることが伺えました。またお姑さんもお嫁さんを大変頼りにしていることが分かりました。そう伝えると、「そんなことは今まで考えたこともありませんでした」と意外そうに、そしてうれしそうにほほ笑みました。

「話を聞くことが一歩進む手助けに」

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町民の自宅を訪問して健康や生活の様子を聞く黒川看護師(写真左)

家族であっても別々に話を聞く機会を持つことで、お互いに遠慮せずに話をし、また気持ちも整理することができて、生活や行動に変化が現れるという、印象的な調査となりました。

黒川看護師は1カ月にわたる活動を振り返って語ります。「私たちが町民の皆さんに寄り添ってじっくり話を聞くことによって、新たな一歩を進めるための手助けがきっとできると思います」