家庭訪問で知る本当の思い~浪江町民健康調査

日本赤十字社(以下、日赤)は福島県いわき市で、福島第一原子力発電所の事故によって避難している浪江町民の健康調査と健康支援活動を続けています。秋田赤十字病院の佐藤由夏看護師長と仙台赤十字病院の土井陽子看護師が6月8日~7月3日、活動に取り組みました。

思いを語ってストレスを軽減

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家庭訪問による健康調査の結果を記録する佐藤看護師長(写真左)

佐藤看護師長は「今回の調査活動によって、報道などでは伝えられていない、浪江町民の本当の思いを知ることができました」と語ります。

健康調査のために訪問した60歳代後半の男性の思いが、忘れられません。

「震災で物を失った、大切な人を亡くした悲しさはもちろんですが、何世代にもわたって築き上げてきた街や、隣近所とのコミュニティーが崩れてしまい、もう元に戻らないことに町民が大きな喪失感を持っていることに気づかされました」

家族がばらばらに住まざるを得ない現実、以前住んでいた地域ごとにまた集まることができない復興住宅の現状では、失ってしまったコミュニティーを改めて築くことは難しいようです。

1カ月近い活動を振り返って、佐藤看護師長は語ります。「専門職である日赤の看護師・保健師が健康調査することで、町民の皆さんは胸にしまったそれぞれの思いを吐露することができます。それによってストレスを軽減し、精神的な苦痛から起きる身体的症状の悪化を抑えられるのではないかと思います」

前に進むためには、時間が必要

土井陽子看護師20150608-0703.JPG (2カラム画像(枠なし):322x210px)のサムネイル画像

浪江町民の自宅を訪問して健康調査に当たる土井看護師(写真右)

土井看護師は、津波で大きな被害を受けた宮城県石巻市の出身。「震災後、全国からたくさんの支援や励ましを受けたので、役に立つことがあればと参加しました」

80歳代のご夫婦を訪問した時のことです。以前、日赤の健康調査に「(いわき市内に)家を新築したけれども、自分の家のような気がしない」と答えていた奥さんが、今回の訪問では第一声で「ようやくここが自分の家だと思えるようになりました」。

土井看護師はこの一言で、二人が前に進むことができるようになったと強く感じました。

また津波で義母を亡くしたという男性は、助かった自分を長く責め続けていました。今回の健康調査で「震災から4年が経ち、最近ようやく自分を受け入れることができるようになった」と語っていたのが印象的でした。

「震災や原発事故によって生じた心の問題を解決するには、時間が必要であり、その時間は人によって異なることをあらためて知りました」と、土井看護師は強調します。

日赤は浪江町の皆さんに寄り添いながら、これからもさまざまな支援を続けていきます。