落ち着き始めた生活と寂しさ~浪江町民健康調査

日本赤十字社(以下、日赤)は福島県いわき市で、福島第一原子力発電所の事故によって避難している浪江町民の健康調査を続けています。前橋赤十字病院(群馬県前橋市)の大澤忠看護師が8月18日~11月14日、また大阪赤十字病(大阪府大阪市)院の溝邉真由実看護師が10月14日~11月14日、調査活動に取り組みました。

町民の生活を見守り続けたい

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健康調査についての会議に参加する大澤看護師(写真左)

大澤看護師は2012年12月~翌年1月にもいわき市で活動し、今回は二回目。

「前回は皆さんのやり場のない怒りが、ひしひしと感じられました。でも今回は、現在の生活を主にして大事にしていこうという思いが感じられます。子どもがいる家庭では進学などもあり、子ども優先で生活を考えているようです。新たな仕事に就いて働いている人も多く、生活は少しずつ落ち着いてきています」と町民の現状について指摘します。

庭の小さなスペースに野菜を作るなど、元の暮らしを取り戻そうとしている町民もいます。

中長期にわたる支援は、支援する側が積極的に対象者を変えるということではないと大澤看護師は考えています。「町民の話を聞いて、必要な時は医療機関などにつなぎますが、基本的には皆さんを見守っていく姿勢です」

看護師などを中心とした日赤の調査活動。「機会があれば病院外にも活動をアピールしていきたい」と大澤看護師は語ります。

誰かと話すことの大切さ

溝邉看護師は大阪赤十字病院では産婦人科勤務。普段は新生児と母親以外に接する機会はなく、調査活動には戸惑うことも多かったと言います。「でも、『話を聞いてもらえてよかった』『来てもらえてよかった』という町民の皆さんの反応が、自分にとって大きな励みになりました」

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いわき市内にある浪江町民宅を訪問して話を聞く溝邉看護師(写真右奥)

いわき市での生活は落ち着いてきていますが、心の中にある寂しさを穴埋めするのはなかなか難しいこと。

そのために「誰かと話すことが、町民の皆さんにとってとても重要です」と、溝邉看護師は町民宅を訪問して話を聞く健康調査の大切さを指摘します。

「家族はいわき市に家を建てて住むと言うけれど、自分は踏ん切りがつかないし、そのことを家族にも話せない…」。そうした悩みを抱えた町民が、日赤が市内に設けた『なみえ保健室』を訪ね、スタッフに相談するということもありました。

「今回の貴重な経験について救護班を志望する職員の研修などで報告し、今後に生かしていきたい」。溝邉看護師は今そう考えています。

日赤がいわき市で暮らす浪江町民を対象にした取り組みを始めて、2年が過ぎました。これからも、健康調査や健康支援活動などに取り組んでいきます。