看護師が話を聞くことに大きな意味~浪江町民健康調査

日本赤十字社(以下、日赤)は福島県いわき市で、福島第一原子力発電所(以下、原発)の事故によって避難している浪江町民の健康調査を続けています。松江赤十字病院(島根県松江市)の津森有香看護師が2月10日~3月7日、調査活動に取り組みました。

再び会った看護師に安心の笑顔

サイコロの出た面の質問に答えるという、自己紹介の方法を説明する津森看護師。健康サロンの参加者が打ち解けるために、さまざまな工夫を試みます

サイコロの出た面の質問に答えるという、自己紹介の方法を説明する津森看護師。健康サロンの参加者が打ち解けるために、さまざまな工夫を試みます

災害救護や復興支援の経験はまだありませんが、災害看護を志すという津森看護師は今回、自ら希望して町民健康調査に当たりました。

東日本大震災と原発事故から3年。避難している方がたが精神的に少しずつ落ち着いてきたことが伺え、訪問調査にも快く対応してもらえたと津森看護師。

「訪問調査は伺った家庭の生活状況などを見ながら、身体的・精神的な両面からの健康アドバイスができます。反対に電話での調査には、声や話し方などから推測して『この方は大丈夫かな?』『サポートが必要かな?』などと判断しないといけないという、難しい面がありました」

日赤が開催する『なみえ健康サロン』に参加されたある町民のお宅を偶然、訪問調査する機会がありました。津森看護師らが企画したサロンに初めて参加したこの方は、その日とても緊張しており、日赤のスタッフともほとんど話しませんでした。

しかし今回、健康調査のためにご家庭を訪問すると、とてもにこやかに「やー、よく来てくれたね」と歓迎。一度会った看護師の顔を見て安心したのか、終始おだやかな表情で話してくれたといいます。

「お金より、もとの生活に戻してほしい」

健康サロンで手作りボーリングを楽しむ町民の皆さん。「ちょっと変わった投げ方を」と後ろ向きに投げる姿に、参加者の笑顔と歓声があふれました。写真右奥が津森看護師

健康サロンで手作りボーリングを楽しむ町民の皆さん。「ちょっと変わった投げ方を」と後ろ向きに投げる姿に、参加者の笑顔と歓声があふれました(右奥が津森看護師)

調査をする中で、町民の皆さんからはいろいろな話が出ます。時には「実はまだ会社にも言っていないけどね」などと、周りにはあまり相談できない話をする方も。

「私たちだからこそ話してくれるのだろうと思います。避難している町民のお宅を私たち看護師が訪問したり、電話で悩みを伺ったりすることには、すごく大きな意味があるんだと感じました」

「お金よりも、元の生活に戻してくれたら、それでいいんだ」。津森看護師は今回の調査の中で、ある町民が語ったこの言葉が忘れられません。

町や自分たちの生活はこの先どうなるのか。それが分からないことによる不安やいらだち、悩み。町民の皆さんはそうしたさまざまな思いを抱えて暮らしていることを、あらためて思い知らされました。「このような言葉や思いは、町民の方がたに直接会わないと聞けません」

福島での経験を島根で伝えたい

当初、病院内で患者さんと話すことと訪問調査の違いに戸惑いがあったという津森看護師。活動を振り返って語ります。

「健康調査に参加したことによって、中長期のこころのケアがとても重要であることをあらためて感じました。今後は病院と地域をつなぐ災害時の支援活動に関わりたいと考えています。島根県にも原発があります。今回経験したことを病院に戻ってみんなに伝え、仕事に生かしていきたいと思っています」