話を聞くことも大事な支援~浪江町民健康調査

日本赤十字社(以下、日赤)は福島県いわき市で、福島第一原子力発電所の事故によって避難している浪江町民の健康調査を続けています。名古屋第二赤十字病院(愛知県名古屋市)の池内智春看護師が2月3~28日、活動に取り組みました。

町民の思いと生活はさまざま

町民の家庭を訪問して血圧を測定する池内看護師(左)

町民の家庭を訪問して血圧を測定する池内看護師(写真左)

池内看護師は東日本大震災の際、宮城県石巻市で二度にわたって救護活動を行ったほか、北イラク戦傷外科病院で医療活動に従事した経験があります。

「いわき市に行く前は、震災と原発事故から3年近くたっていることもあって、町民の方がたも少しは落ち着かれたのではと思っていました。調査でさまざまなお話を聞いて、人によって、家庭によって、千差万別であるとあらためて感じました」

新しいコミュニティーの中で友人をつくって生き生きと過ごしたり、乳幼児や学校に通う子どもがいる家庭ではいわき市内に土地を買って家を建てたりと、町民の中には前向きな方がたが多くいます。

一方、震災前は三世代の大家族で暮らしていたのに、震災後は離散してしまい今は祖父母だけの二人暮らしであるとか、「婿が建てた家に世話になっていますが、いずれどこかに家を建てなければいけません。でもどこに建てたらいいのか分からないし、補償もどうなるか明確でありません」という方もいます。

先行きが見えないことが強いストレスに

震災直後は、「除染をして5年後、10年後には浪江町に帰れる」といわれていたため、多くの町民は「帰る」という将来を考えていました。しかし、2年、3年と時がたつにつれて、「帰る」と明確に答える町民は減りつつあるようです。

こうした中で「もう戻れないんじゃないか」「みんなが戻るならいいけれど、自分だけ戻っても、一人じゃ生きていけない」「戻ろうと思ってがんばっているけれど、無駄なことかも」「自分一人だけ取り残されていくのでは」という複雑な思いや不安を持っている方もいます。

「先行きが見えないことから、強いストレスを抱えている方が多いように感じました」と池内看護師は語ります。

「聞いてくれて、ありがとう」

氷川きよしさんの楽しい歌に乗せて全身を動かす「ズンドコ体操」に、みんなが笑顔。正面右側が指導する池内看護師

演歌歌手・氷川きよしさんの楽しい歌に乗せて全身を動かす『ズンドコ体操』に皆が笑顔。正面右側が指導する池内看護師

健康調査では以前お話を聞いた方から、その後の経過を伺うという活動も行っています。

「健康上の問題や悩み、相談ごとなどは特にない」と回答されていた方にあらためて尋ねると、以前は触れなかったような話を伺うことがたびたびあります。

「年月が経ったからこそ、胸に秘めた思いを語れるようになったのかなと思います。同時に、この活動に携わってきた日赤のスタッフが長い時間をかけて信頼を得てきたから話していただけたのだろうし、『日赤なみえ保健室』が町民の皆さんの中に行きわたりつつあるのかもしれません」

訪問先では30分~1時間ほど自分から話された後、「ああ、よくしゃべった。聞いてくれて本当にありがとうね」と言う方も。

池内看護師は取り組みを振り返って語ります。「今回の調査活動で、話を聞くだけでも支援になるんだということを学びました。また、中長期にわたる活動の大切さも実感できました」

東日本大震災から3年。日赤は健康調査など浪江町民に対するさまざまな支援活動に、これからも取り組んでいきます。