一人でも多くの人を支援したい~浪江町民健康調査

日本赤十字社(以下、日赤)は福島県いわき市で、福島第一原子力発電所(以下、原発)の事故によって避難生活を続けている浪江町民の健康調査を続けています。諏訪赤十字病院(長野県諏訪市)の大方晶子看護師が1月6日~2月7日、調査活動に取り組みました。

電話の向こうの思いと暮らし

大方看護師は活動期間中、家庭訪問による健康調査16件と電話での調査101件を行い、多くの町民の話を聞くことができました。「徐々に落ち着きを取り戻されているという感じを受けましたが、まだ不安を抱えながら生活されている方もいらっしゃいます」

家庭訪問のために電話で訪問予約を取りますが、「日赤なみえ保健室です。看護師が健康調査に伺います」と伝えても理解してもらず、断られることも。

こうした中で、以前訪問を断られた家庭に今回あらためて連絡を取り、震災直後から体調が思わしくなく外出もほとんどできない状態であることや、現在の生活の様子などについて、電話を通して聞くことができました。

今回も訪問調査はできませんでしたが「電話でお話を聞くだけでも健康支援につながるはず。それだけでもよかった」と大方看護師は前向きに考えました。

「こころのケアを必要とされる方はまだたくさんいます。これからもお話を聞きながら信頼関係を築き、一人でも多くの健康支援につなげていくことが大事だと思いました」

思いがけない言葉に励まされて

浪江町民の家庭を訪問して健康調査に当たる大方看護師(右奥)

浪江町民の家庭を訪問して健康調査に当たる大方看護師(写真右奥)

電話で話をした別の家庭では、夫婦共に復興関連の仕事をしています。

震災後「ご主人の不眠状態が続いている」ということを聞き、大方看護師が「大丈夫ですか」と声をかけると、奥さんは「大変だけど、頑張らなきゃいけないと思って…。でも、日赤の皆さんがいらっしゃることが、自分にとっての励みです」。

少しでも浪江町民への支援になればと活動に取り組んできた中でいただいた、思いがけない言葉。「本当にうれしくて、町民の皆さんのためにもっと頑張っていこうという気持ちになりました」と大方看護師は思いを新たにしました。

「浪江町の今をみんなに伝えたい」

地震で半壊状態となった家屋が残る浪江町内

地震で半壊状態となった家屋が残る浪江町内

今回の健康調査活動中、大方看護師は日赤広報担当による浪江町取材に同行しました。

太平洋に面する浪江町は県内では比較的暖かく、雪もめったに降らないといわれますが、この日は雪の中での訪問となりました。

原発事故直後から全町民の避難が続いている町内は、建物の壁は崩れ、家の中には家財が散らばるなど、震災当時の状態が今もそのまま続いています。

ある町民の好意で、家の中を見せてもらいました。たんすの中の衣類などが全部外に出ていたり、あちこちにネズミのふんがあったりという状態に、大方看護師は「これが現実なんだということをあらためて感じました。病院に戻ったら、自分が見たこと、感じたことを、みんなに話していきます」と語っています。

雪の中で防護服を着て除染に向かう作業員

雪の中で防護服を着て除染に向かう作業員

3年経過した今も震災当時のままになっているリビング