赤十字と核兵器

核兵器の廃絶に向けた赤十字の歩み

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©Australia Red Cross/Louise Cooper

広島・長崎に原爆が投下されてから2015年8月で70年を迎えます。現在もなお、世界には約1万6000を超える核兵器が存在しており、その脅威はいまだ完全に拭い去ることはできません。

赤十字は、第二次大戦後からいち早く原爆問題を取り上げ、国際会議等の場で核兵器の使用禁止を求める決議を採択してきました。

さらに一歩踏み込んで2011年11月、「核兵器が使用された場合、誰もその犠牲者を救うことはできない」という視点から、「核兵器廃絶に向けての歩み」と題した決議を採択しました。

戦後70年、そして広島・長崎への原爆投下から70年というこの節目の年に、改めてこの問題に目を向けていくことが求められています。

広島・長崎被ばく70周年を迎えて

現在、原爆の恐ろしさや当時の様子を後世に伝える被ばく者の数は減少しています。そのため、被ばく者に代わって原爆の経験を伝承していくことが必要とされており、それと同時に核兵器の非人道性を強調し、核兵器の廃絶へと向けた取り組みが求められています。

国際赤十字としてのかかわり

赤十字代表者会議

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2011年赤十字代表者会議で演説する朝長万左男 日本赤十字社長崎原爆病院院長(当時)

2011年の国際赤十字・赤新月運動代表者会議(以下、赤十字代表者会議)では、核兵器の使用禁止を強く訴える決議が採択されており、日本赤十字もこの決議の共同提案社30社のうちの一つです。

この決議の中では、「核兵器廃絶に向けての歩み」が話し合われ、それは以下のようなものでした。

1.核兵器の使用によってもたらされると予想される計り知れない苦痛や、それに対する十分な人道的援助能力の不在、そして核兵器使用を阻止する絶対的な必要性を強調する。

2.国際人道法の基本原則と両立しうるような核兵器の使用が想定できないことを確認する。

3.すべての各国政府に対して次のことを訴える。

①核兵器の適法性に関する各国政府の見解のいかんにかかわらず、核兵器が再び使用されることがないように保証すること。

②核兵器の使用を禁止し、廃絶するために、早急かつ決定を伴う交渉を、誠意をもって行い結論を導くこと。

※世界中の赤十字・赤新月社と国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、赤十字国際委員会(ICRC)が集い、2年に1回開催される国際会議

核兵器廃絶へ向けた4カ年計画

日本赤十字社など5カ国の赤十字社が、核兵器の廃絶に向けて共催する国際会議が2013年5月15~17日、広島市で開かれ、向こう4年間の行動計画案を策定しました。

会議は、2011年の赤十字代表者会議で採択された決議「核兵器廃絶に向けた歩み」の履行をめざして開かれたもので、世界24の赤十字・赤新月社、赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)の代表らが参加しました。

2011年の決議は、核兵器をめぐる近年の世界情勢の変化などを背景に、「核兵器の使用は国際人道法の定める理念と両立しない」「もし核兵器が使用された場合、その結果に対応できる人道的援助能力が欠如している」との見解を世界に示しました。

今回の会議ではこの決議を受けて、各国の赤十字・赤新月社がウェブサイトなどに国際赤十字としての立場を自国の言語で表明して関連資料を掲載することや、国内で啓発活動に取り組むことなどを内容とする行動計画案が策定されました。

4カ年計画についてはこちらをご覧ください(PDF:216KB)

核兵器廃絶に向けたこれまでの世界の動き

ICJ(国際司法裁判所)勧告的意見

国連は1994年12月、総会で「いかなる事情の下においても、核兵器の威嚇または使用は、国際法上許されるか」について、ICJに勧告的意見を要請することを決議しました。

ICJは1996年7月、「核兵器の威嚇または使用は、武力紛争に適用される国際法の諸規則、特に国際人道法の原則および規則に一般的には違反するだろう」としながらも、「国家の存亡そのものがかかった自衛の極限的な状況の下では、合法であるか違法であるかを裁判所は結論できない」とした上で、「すべての国が核軍縮交渉を誠実に行い、それを達成する義務がある」と宣言しました。

オバマ大統領によるプラハ演説/国際連合事務総長潘基文の5つの提案

その後、潘基文(パンギブン)国連事務総長が2008年10月に行った核軍縮に向けた5つの提案や、オバマ大統領が2009年4月にプラハで「アメリカは核兵器のない平和で安全な世界を希求する」と表明した演説などにより、核兵器廃絶は夢物語ではなくなりました。

潘基文国連事務総長による5つの提案

①すべてのNPT締約国、とりわけ核保有国が軍縮の義務を履行すること。核兵器禁止条約の交渉開始も考えるべき。

②安保理常任理事国が核軍縮プロセスにかかわる安全保障問題の協議を開始すること。

③包括的核実験禁止条約(CTBT)、核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)、非核兵器地帯、国際原子力機関(IAEA) 追加議定書などを通じ、「法の支配」を強化すること。

④核保有国が説明責任および透明性を強化すること。

⑤他の大量破壊兵器の廃絶を含む、核軍縮の補完的措置が必要であること。

NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議

2010年5月のNPT再検討会議における「核軍縮のための行動計画」で、「すべての国が常に国際人道法を含むすべての国際法を順守する必要性を再確認する」という文言が盛り込まれました。

5年おきの再検討会議は今年2015年に開催される予定です。昨年5月のNPT再検討会議準備委員会ではオーストリア政府などの主導により「核兵器の人道的側面に関する共同声明」が発表され、16カ国が賛同しました。そこでは、まさに赤十字が主張した「核兵器がもたらす人道的な惨禍に人類は対応することができるのか」が、テーマに掲げられています。

この決議は、国際人道法に基づく人道機関である赤十字としての核兵器に対する立場を明確に示したもので、核兵器廃絶を論じる潮流のなかで、赤十字の主張が世界的なメッセージとなったという点でも重要です。

核兵器の人道的影響に関する国際会議

各国政府や市民社会、赤十字運動の構成員などが集まり、2013年3月(ノルウェー・オスロ)、2014年2月(メキシコ・ナヤリット)、2014年12月(オーストリア・ウィーン)の3回にわたり、核兵器の人道的影響に関する国際会議が開催されました。これらの会議では、核兵器が使用された場合に医学的、環境・気候変動的に大きな影響を及ぼすことや国際人道法を含む、医療法、環境法的適合性の問題、さらには核兵器管理における指揮統制のぜい弱性から生まれるリスクなどについて議論を続けてきました。

昨年12月の第3回ウィーン会議を主催したオーストリア政府は北大西洋条約機構(NATO)加盟国でありアメリカの核の傘の下にありながら、積極的に核兵器廃絶に向けて活動しています。なお、オーストリア政府は今回の会議の成果として、核兵器の禁止に向けた「オーストリアの誓約(プレッジ)」を発表し、各国政府に対して賛同を求めています。

「オーストリアの誓約」についてはこちらをご覧ください(PDF:180KB)