コロナ禍で役に立った!日赤の協力が生きる村の感染対策

 日本赤十字社(以下、「日赤」)は、災害時に現場に駆け付ける救援活動のイメージが強いかもしれません。しかし、その一方で、人道危機が生じる前から貧困や災害で苦しむ人々やコミュニティに寄り添い、いのちや健康に関わるリスクの軽減を図る開発協力にも取り組んでいます。

 本号では、日赤が過去に開発協力で支援した人々がいまコロナ禍に向き合い活動する様子をインドネシアとネパールからご紹介します。

インドネシア:あのとき、自分たちの防災組織を作ったからこそ

今回1.jpg

ラワンアグン村の防災組織で村の消毒作業にあたる防災リーダーのプラボさん©PMI

 日赤は、インドネシア赤十字社と2016年4月から4年間にわたり、スマトラ島ベンクル州の村々で、防災リーダーを育成するなど防災体制の強化を目指した支援を行ってきました。同州のラワンアグン村で防災リーダーとして活動するプラボさんから日赤に近況が届きました。

 「私たちの村に防災組織が立ち上がってはや4年が経ちました。活動の中心は防災の啓発活動や避難誘導、訓練など村に必要な災害対策を進めること。これまでの活動実績が認められ、私たちの防災組織は、村の政府から活動予算を獲得するまで成長しました。コロナ禍のいまは、防災組織の仕組みを生かしつつ、村の感染対策にも取り組んでいます。

 プラボさんは続けます。「私たち防災リーダーがいま取り組むのは、政府の支援だけでは行き届かない人々に対する草の根の感染対策です。具体的には、村内のモスクや学校など公共施設の消毒作業を行っています。また、マスク着用の必要性や手洗いなど感染予防の確かな情報を村民に普及啓発する活動を行っています。私たちがいま村の行政と連携しつつ必要な感染対策を実施できているのは、防災組織の体制があり、これまでの活動実績や住民との信頼関係があったからこそです。」

今回2.jpg

 防災リーダーとして人の役に立ちたいというプラボさんをみて、9歳になった娘のディーバさん(写真右上)も動き始めました。プラボさんから正しい手洗いを学んだディーバさんは、すぐに学校の友達や近所に住む人々に父親と共に感染対策を普及し始めました。

 「娘の世代も巻き込んでこのような活動が出来るのは、日赤の支援を通して防災組織を作ったからこそ。日本の方々に向けて改めて感謝をお伝えしたい。」プラボさんの取り組みは続きます。

ネパール:学んだことで最も弱い立場に置かれた人々の救済を

今回3.jpg

自分たちで予め用意しておいた災害救援基金を利用して米や豆スープなど食糧支援を行うドルバさん(左)©NRCS

 日赤は、コミュニティ防災事業や地震からの復興支援事業を通じてネパール赤十字社と協力し、防災体制の強化に取り組んできました。

 日赤の支援を受けて発足したグルミー郡アマラワティ村の防災組織で指揮を執るのは、発足時からのメンバーであるドルバさん。救援活動や防災の意識啓発活動などを学び、災害対策の活動を推進してきました。

 訓練を受けたドルバさんが推進してきた活動の一つに、洪水など自然災害で被災した住民が速やかに元の暮らしに戻れるよう被災者に現金や物資を支援する災害救援基金の積み立てと運用があります。ドルバさんらは、防災の普及活動と併せて、災害救援基金運用のために、災害前から取り組みの賛同者や地方行政の寄付者などから少額のお金をこつこつ積み立ててきました。

「私たちはすでに移動制限を伴う都市封鎖(ロックダウン)でひどく影響を受け、生活の糧を失った世帯や高齢者世帯に対し、準備してきた災害救援基金を利用して米や豆スープ、塩などの食糧支援を行うことができました。」ドルバさんは活動を振り返ります。

 ドルバさんらが育んできた災害救援基金を通じて食糧支援を受けたタルシさん(83歳)は、村に住む最年長の一人です。タルシさんは、「パンデミックの状況となり、生活の糧が絶たれ、空腹の日々を過ごしていました。ドルバさんらの取り組みのおかげで、ご飯が食べられます。本当にありがとう」と目に涙を浮かべながら答えました。

今回4.jpg

一戸一戸、戸別訪問して感染症の知識や感染対策を伝える赤十字ボランティア©NRCS

 地理的に起伏に富む同国では、山あいの地域に位置するコミュニティも少なくありません。このような地域で支援が届けられるのは、ドルバさんのように地元に根付いた赤十字ボランティアがコロナ禍でも活動の手を緩めなかったことが大きいのです。

 また、感染対策の面では、支援により新たに設置された手洗い場を訪れ、感染対策のパンフレットを受け取った住民の一人からは次のような声が聞かれました。

 「私は、新型コロナウイルス感染症のリスクについてあまり知らなかったため、そもそもマスクを着けることにとても抵抗がありました。でもネパール赤十字社のボランティアから感染対策の重要性を学んだ後は、その意味を理解できたので、普段からマスクを着けるようになりました。友人などにも感染対策を講じる大切さを伝えていきたいと思っています。」

 最後になりましたが、今年もNHK海外たすけあいにご協力いただき、心より御礼申し上げます。お寄せいただいた皆様のお気持ちは世界各地で必要とされる方々にお届けします。

今回5.jpg

本ニュースのPDF版はこちら