支援を必要としている国、アフガニスタン

 1970年代から断続的に続く紛争によって、アフガニスタンは政治・経済・社会インフラのあらゆる面で打撃を受けています。それは今でも人々の生活に影響を与え、復興と安定への道のりを険しくしています。経済平和研究所の「2019年世界平和指数」において調査対象の163か国中最下位、また、人口の80%以上が一日1.9ドル以下*で生活しているとの統計があり、依然として最も多くの人道課題を抱える国の一つです。(*世界銀行が定義する国際貧困ライン)2019年には、紛争により発生した国内避難民が46万人を超える一方、イランをはじめとする周辺国からの帰還民は50万人を数え、すでに厳しい状況に直面しているコミュニティの人道ニーズは増加の一途をたどっています。

そのような情勢の下、アフガニスタン赤新月社(以下、アフガン赤)は、人々の命と健康、安全な暮らしを守るために、不可欠な存在です。遠隔地を含む国内全土34州すべてに州支部を構え、コミュニティに根差した活動基盤を持つことに加え、赤十字の基本原則の中でも特に、「公平・中立・独立」を体現するアフガン赤は、政府や他の支援団体がアクセスできない場所にも分け入り、活動を行うことができます。2019年は、様々な事業を通じて、580万人の人々に支援を届けました。

それを可能にしているのが、活動の最前線に立ち、地域住民一人ひとりに働きかけ支援を行う、ボランティアの存在です。彼らは普段からコミュニティに寄り添い、課題をくみ取っているため、平時にも緊急時にも、今何が必要なのかを誰よりも理解して迅速に行動に移すことができます。アフガン赤の一員として研修・訓練を受けた3万人のボランティアのネットワークが存在するからこそ、どんなに活動が困難な場所でも、人々に信頼され受け入れられ、継続的な支援を行うことができるのです。

アフガニスタンの今と未来を担う「若いちから」

アフガニスタンの人口の約60%は若年層(5〜34歳)、またアフガン赤のボランティアも約60%が1329歳で構成されます。彼らはアフガン赤と地域住民との間の架け橋の役割を務めており、アフガニスタンの未来を担う「若いちから」の育成が、より安全で豊かな社会をつくるといっても過言ではありません。

日本赤十字社は、アフガン赤の活動の担い手である青少年ボランティア(ユース)の育成を通じてアフガン赤の組織強化および地域保健分野強化を目指し、2016年より国際赤十字・赤新月社連盟を通じて支援を行ってきました。2019年は、リーダーシップ育成研修や災害対応研修、無償献血の推進やHIV/エイズの予防啓発等の保健衛生研修などに、約5,400人のユースが参加し、知識とスキルを習得しました。

 

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 アフガン赤中央ユースクラブのメンバーたち@ARCS

首都カブールにあるアフガン赤本社中央ユースクラブの代表を務めるアフマド サイーク・ハゼムさんはこう話します。「アフガン赤のユース活動で自分の家族や地域の役に立つ知識を学ぶことができて、誰かのためになれることが自分に居場所や生きる意味をくれました。自分一人では難しいかもしれないけれど、同じ志を持つ仲間たちと一緒になれば、この国にポジティブな変化をもたらすことができると信じています。」

ハゼムさんをはじめ、アフガン赤の研修を受けたユースたちはその後、学校でのクラブ活動や課外授業、地域のイベントなどを通じて約37,000人の同世代の友人や家族、地域の人々に対して、防災、保健衛生などの知識や人道価値を普及しました。彼らの日々の地道な取り組みがアフガニスタンにおけるHIV症例数の減少と献血者数の増加にもつながっています。研修を受けたユースも、彼らを通じて知識を得た友人たちもみな、「私たちの国には助けを必要とする人がたくさんいます。自分の生活も大変だけれど、少しでもこの国の未来をよりよくする力になりたい。」と目を輝かせ、口をそろえて熱く語ります。紛争や貧困、災害など厳しい環境に生きる彼らだからこそ、穏やかな世界を切に願い、身近な人を守るため、また地域社会をより良くするため、積極的に行動を起こしているのです。

加えて、アフガン赤は2019年に実施した様々な研修で、女性ボランティアの参画を積極的に推進しました。アフガニスタンでは、経済面、安全面の理由から7〜17歳までの370万人が学校に通っておらず、そのうち6割が女性と言われています。また、女性の17%が15歳の誕生日を迎える前に結婚しており、教育や雇用の機会を失い、支援を必要としています。そのような背景にあって、災害時や健康・衛生の課題に対する女性ボランティアのサポートは、女性にとって、安全かつ安心して必要な支援を受けられることにつながります。2019年の研修では多くの女性ボランティアが参加した結果、アフガン赤の女性ユースボランティアの割合が20%から35%まで大幅に増加、大きな成果を上げました。

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 救急法を学ぶ青少年ボランティア@IFRC

 積極的に講習に参加する女性ボランティア@IFRC  

深刻化する気候変動の影響から立ち上がる「地域のちから」

アフガニスタンというと、「紛争」や「貧困」が真っ先に思い浮かびますが、近年、ある問題が深刻化しています。それは気候変動です。アフガニスタンでは年間400万人以上が洪水、干ばつ、地滑り、雪崩などの自然災害によって影響を受けており、その数は紛争で支援を必要とする人の3倍にのぼると言われています。とりわけ干ばつと洪水による問題は深刻で、農地や家屋、公共インフラ、道路、そして人命に深刻な被害を及ぼしています。

日本赤十字社は、2020年7月より、アフガニスタンにおいて気候変動が引き起こす人道ニーズに対応するため、5年間の気候変動対策プロジェクトを開始しました。気候変動そのものを止めることは困難ですが、災害に備えリスクを軽減し、また平時から適応能力を高めることはできます。住民が自らの力で、気候変動の影響に対応できるよう、防災・減災、学校安全、生計支援に至るまで包括的なアプローチを組み込んだ取り組みです。

もちろん、ここでも人々に寄り添い、活動の最前線にいるのはアフガン赤のユースボランティアです。彼らは、アフガニスタンの課題をより多くの人に伝えるため、一つの動画を作成しました。 (本動画はRed Cross Red Crescent Magazine/赤十字・赤新月マガジンの協力により作成されました。同マガジンについてもっと知りたい方はこちら(英語サイト)

彼らの熱意ある継続的な活動が、アフガニスタンのより良い未来へつながるように、日本赤十字社も引き続き協力していきます。

●日本赤十字社の新型コロナウイルスに対する活動はこちらをご覧ください。

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