南部アフリカ地域感染症対策 2019年度事業報告     ~支援が最も必要な地域で、支援の意義を実感して~

サブサハラアフリカのHIV感染者数=世界の約67%
同地域の感染者2,560万人/全世界の感染者3,790万人(2019年, 国連合同エイズ計画)

 日本赤十字社は、南部アフリカ地域におけるHIV/エイズ等の感染症対策をはじめ生計支援や教育など包括的な活動を強化するため、2003年より国際赤十字・赤新月社連盟を通じて支援を行っています。2019年度は、HIV感染率が世界ワースト10位内であり人道ニーズが非常に高い3か国(ナミビア、エスワティニ、マラウイ)にて、子ども達や貧困層への支援、地域での啓発活動、現地赤十字社の組織強化などの活動を支援しました。今号では、その活動の一部をお届けします。事業の詳細はコチラ

ナミビア “エイズ孤児等支援~自信がついて成績も伸びたよ~”

ナミビアの国名はナミブ砂漠に由来し、先住民の言葉で「何もない」を意味します。ナミビア赤十字社はエイズ孤児や貧困世帯の子ども達への幅広い支援を行いました。例えば、6歳から17歳までの150人の子ども達への、マットレス、ブランケット、通学セット(制服、バッグ、靴)、衛生キットの配付や、キッズクラブ(児童保育)を通じた学業や生活全般の支援、カウンセリングなどの心理的支援、安心して眠れる場所がない子ども達のためのシェルター建設などです。これらの取り組みは、子ども達の自信や生活の質を高めて、健やかな成長を促すだけでなく、欠席や中退の防止、成績の向上など教育の面でも効果をもたらしています。子ども達の元気な笑顔こそ、ナミビアの将来を築くかけがえのない財産です。

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満面の笑みで衛生キットをもらって喜ぶ子ども達。中にはタオル・洗剤・石鹸・トイレットペーパー・歯ブラシセットなどが入っています。©IFRC

  キッズクラブの学業支援の一環で、子ども達が宿題を手伝ってもらっているところ。©IFRC

エスワティニ “啓発活動~楽しみながら学んでいるよ~”

2018年に現地語で「スワジ人の場所」を意味する国名に改名したエスワティニ。15歳以上のHIV感染率が27.3%と世界で最も高い国です。特に青少年の新規感染率が高く、若年層への周知と行動変容の促進が課題となっています。エスワティニ赤十字社は診療所の運営を通じて、ヘルスデーやサッカー大会などの機会を活用し、一度に何百人もの若者に対して啓発活動を展開しました。感染症についてのグループワークや子ども達への衛生キットの配付、HIV検査・子宮頸がん検査を実施し、陽性者には診療所での治療を促しました。若者の間での情報拡散という効果もあり、一人ひとりが正しい知識を得ることで、自分や他者の不本意な感染や妊娠の予防に繋がっています。

ここで、現地の人々の声をご紹介します。

「行政区の長として青少年と触れ合うなかで、この赤十字によるイベントは最も立派な取り組みの一つと言えます。子ども達が楽しみながらHIVの予防や性暴力防止などの大切な知識を学べるからです。サッカーのイベントも、子ども達が試合に夢中になっているのがわかります。今度は子ども達がサッカーの練習をしている時に診療所の方々に来てもらい、もっと多くの情報を伝えてほしいです」—R.ヴィレイン氏(行政区長)

「私は抗HIV薬を飲用しており、娘も同じです。夫はおらず、娘の世話をするために仕事を辞めました。空腹時に抗HIV薬を飲むとお腹が痛くなるので、12歳の娘は食べ物がないと抗HIV薬を飲むことを嫌がります。娘がキッズクラブに入って食料パックを受け取ることができ、大変ありがたいです。娘は食べ物が十分に提供されることをとても喜び、今では歯ブラシや洗面用具、時計が入った衛生キットをもらって、時計を見ながら薬の服用の時間を教えてくれます。食料配給の継続を願っていますし、その活動をしてくれる赤十字に本当に感謝しています」                  —ジャブ・ヴィラカティさん(HIV患者、母親)

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青少年ヘルスデーの参加者たち。性暴力や子供の権利、治療の継続など様々なトピックを議論しました。©IFRC

学校や地域で直面している課題を発表しているところ。写真の子ども達は学校での暴力や差別を挙げました。©IFRC

マラウイ “就学支援~大学に進学して変化も起こせるよ~”

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教材や文房具の一式を受け取る生徒©IFRC

現地語で「光・炎」を意味するマラウイ。マラウイ赤十字社は、中等教育課程にある13歳から17歳までの50人の生徒に対して奨学金制度を適用し、授業料の無償化、教材や文房具の提供を行いました。マラウイの教育制度では、中等教育過程を終了すると最終試験の受験資格が与えられます。2019年度は試験を受けた4人のうち3人が合格、そのうちの一人は極めて好成績であったためマラウイ大学メディカルスクールへの入学が認められました。

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          左の写真のフランク・ジュマさんが、まさにその人。農村の出身で、彼が小学校に入ってまもなく父親が亡くなり、母親は二人の子どもの教育費も払えず生活は困窮していました。マラウイ赤十字社の奨学金制度を知った母親が申請し、中学校に入学してから、奨学金を受け取ることができたのです。フランクさんのマラウイ大学への進学は、一家にとっての明るい未来への第一歩となりました。

サブサハラアフリカの感染症対策はこの10年間で成果を上げており、HIV新感染率とエイズ関連の死亡率は全体的に下降傾向にあります。今回ご紹介した3カ国でも30%台の減少が見られました。その一方で、少女や若い女性の新規感染率は、全体的にもまた同世代の男子感染率と比較しても依然として高く、顕著な男女格差が問題となっています。新型コロナウイルスへの感染拡大の背後で、依然として人々の脅威となっている様々な感染症。日本赤十字社はこれからも、現地の課題とニーズに即した包括的な支援を継続していきます。

●日本赤十字社の新型コロナウイルスに対する活動はこちらをご覧ください。

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