赤十字国際会議の開催レポート

国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)総会が2019年12月4日~7日、代表者会議が8日、赤十字国際会議が9日~12日、スイスのジュネーブで開催されました。 今回の会議のテーマは“Act Today. Shape Tomorrow.”(今、行動し、明日を創ろう。) 特に、赤十字国際会議は4年に一度開催される赤十字の最高議決機関として位置付けられるもので、今回で33回目になりました。これには世界中の赤十字社・赤新月社、赤十字国際委員会(以下、ICRC)、連盟、ジュネーブ条約締約国の政府、他の国際機関やNGOから計約2,000名の代表者が一堂に会し今後4年間の人道的課題への取り組みについて議論を交わしました。

オープニングセレモニー~約10日間の長い会期の始まり!~

会議は、まず連盟総会から、オープニングは会議参加者の黙とうから始まりました。2019年も多くの赤十字ボランティアや職員が人道支援の最中に命を落としたためです。紛争のさなかであっても、赤十字マークをつけて人道支援に従事している人びとは攻撃の対象にしてはいけません。これはジュネーブ条約(国際人道法)において厳格に定められたルールです。

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オープニングセレモニーでは、新しい仲間の2社(マーシャル赤十字社とブータン赤十字社)の連盟加盟承認が行われ、連盟の加盟社は192社に!また、人道支援に多大な貢献を果たした赤十字関係者に送られる連盟創設者の名前を冠したヘンリー・ダヴィソン賞が前連盟会長の近衞名誉社長に送られました。(映像参照)

現在からより良い未来へ Strategy2030(国際赤十字・赤新月社連盟2030年戦略

 今回の連盟総会の議論の中心になったのが、向こう10年間の連盟の指針となるStrategy2030の採択でした。
 これは、「A Platform for Change(変革への足掛かり) Local Action(地域の行動)、Global Reach(世界に届く)」の副題のもと、気候変動長期・複雑化する移民問題等の現代の人道課題へ赤十字がより効果的・効率的に立ち向かうための新しい戦略です。

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<ビジョン>
世界の赤十字ネットワークを結集し、すべての人々のより良い未来を創造する変革を。そして、より良い人道を実現する。

<3つのゴール>
①人々は危機を予測し、立ち向かい、素早く復興する
②人々は安全・健康的で尊厳ある生を営み、栄える
③人々は包摂的かつ平和な地域社会のために結集する

<5つの主要課題>

気候変動・環境危機、災害、健康問題、移民問題、「誰一人取り残さない」(女性や子供、障がい者等弱い立場の人を必ず考慮する)

<7つの変革>
 1. 各国で赤十字を地元のコミュニティにとって強くて有効な存在にする
 2. ボランティアの力を最大限に生かす
 3. 説明責任を果たし、信頼を確実なものにする
 4. 国際的なネットワークを効果的に活用する
 5. コミュニティ、特に弱い立場の人々の声を人道支援に繋げる
 6. デジタルの時代に適応する
 7. 持続可能な財政体制を整える

100年を超える歴史を持ち、192社の各国赤十字・赤新月社からなる巨大な組織、国際赤十字・赤新月社連盟。加盟社の一社である日本赤十字社を含め、世界的なネットワークであり、且つ、人々やコミュニティに寄り添う存在であり続けるために、赤十字の真価が問われています。

世界の赤十字と政府で決めた約束事

一連の会議の最後をしめくくった赤十字国際会議で誓約された8つの決議のうち主なものは以下のとおりです。

1. 国際人道法の国内での取り扱い:より的確な国内適用に向けて
 2. 武力紛争や自然災害などの影響を受けた人々の心のケア
 3. 行動する時:感染症の発症や世界的流行に対応するための協働
 4. プライバシーの尊重(個人情報の保護を含む)を踏まえた安否調査
 5. 誰も置き去りにしないための気候変動への対応に資する災害対策法
 6. 国際赤十字・赤新月運動の人道活動における女性と指導者
 (各決議の詳細はこちら

紛争、自然災害等による被災者はもとより、人道支援活動に携わる職員やボランティアの心のケアも重要であること、気候変動に対応した防災力の向上など、国内で日赤がすでに展開する活動に直結するものもあれば、今後さらに強化すべきものも含まれています。これらは、政府へのメッセージであるとともに、赤十字へのメッセージでもあります。

ユースの力で!核兵器禁止条約発効に向けて

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世界の赤十字・赤新月社の活動を支えるボランティアの約半数がユース(連盟のユースの定義は5歳~30歳まで)。今回の会期中にもユースによるユースのための会議が連盟総会に先立って開かれ、連盟におけるユース委員会の代表を決める選挙も行われました。日本赤十字社の代表団に加わった田中友美乃さん(神奈川県赤十字国際奉仕団)と足立春香さん(大阪府青年赤十字奉仕団)も世界の仲間たちとの議論に加わりました。
 今回、足立さんはユースを代表して核兵器廃絶にむけて「この問題の議論を若い世代がリードしていくこと」の重要性を壇上で発表。その力強いメッセージに会場の参加者からは温かい拍手やコメントが寄せられました

Act Today. Shape Tomorrow

時代の変化に伴い、社会課題や表現の方法も変化していきます。今回の会議でも資料はすべてスマートフォンのアプリを利用し、紙媒体の印刷物はほとんどありませんでした。気候変動の脅威を体感する3D映像や脱出ゲーム等、五感で体験するコンテンツも多く盛り込まれていました。次回の国際会議が開催される2023年、私たちはどのような世界に生きているのでしょう。今回の会議を通じて赤十字や政府間で交わされた約束事、これらを実際の行動として実現するためには、苦しむ人々のニーズを察知し、人々の理解を得るための行動、創意工夫が各国赤十字・赤新月社に求められます。

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