シリーズ「気候変動の影響と人道」

第4回 研修キット(Climate Training Kit)の紹介

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モンゴル赤十字社のゾド被害に対する早期警戒・早期行動の取り組み。モンゴルの気象庁と連携し、被害が予想される地域に家畜への被害を抑止する救援物資などを被害が出る前に、予め対象コミュニティに配布する。©IFRC

本シリーズでは、複数回にわたり、「気候変動×人道」をテーマとして読者の皆様とともに理解を深めていきます(前回記事はこちら)。第4回目の本号では、気候変動の影響に対し、赤十字が取り組んでいくために国際赤十字気候センターが開発した「気候変動に関する研修キット(Climate Training Kit)」の紹介をします。

研修キットの概要

今年に入り、国際赤十字気候センターは世界に拡がる191の赤十字・赤新月社の活動を後押しするため、気候変動に関する研修キット(Climate Training Kit)の内容を更新しました。
この道具は、赤十字の活動に携わる人向けに気候変動問題に関する国際赤十字の標準的な活動や考え方について触れ、各国の赤十字・赤新月社が防災・減災や保健衛生などの幅広い分野での活動を通じて、気候変動の影響を伴う人道課題にさらに取り組んでいくことを目的に作られています。この研修キットは中身そのものが発展途中の段階で、今後も引き続き内容が更新されていく見込みです。

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フィリピン赤十字社のボランティアが昨今の異常気象等について自分たちの地域でできることを議論し、気候変動に適応していくための行動計画を作成した。©IFRC

内容の構成としては以下の大きく4つのトピックスに触れています。
 モジュール1.気候変動を理解する
 モジュール2.赤十字の気候変動に対する取り組み
 モジュール3.赤十字の政策協議やパートナーシップ
 モジュール4.若者による気候変動に対する取り組み

研修キットの内容

モジュール1「気候変動を理解する」は、さらに内容が2つに分かれています。一つは、現在の科学で言及されている気候変動に関することは何で、その影響はどういったことか、もう一つは各国で気候変動によって引き起こされているリスクについてどのように調べれば良いかということです。ここで学ぶテーマは多岐に渡りますが、気候変動の影響が人間のいのちと健康、尊厳を脅かし、自国で気候変動の影響によって助長されている(以前は顕在化していなかった)リスクは何なのだろう、とまずは自分達で調べてみる、そして理解しようとする姿勢が大切だというメッセージが伝わってくる内容になっています。

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中南米の国、ニカラグアでは地域で気候変動に関するゲームに参加し、ゲームをきっかけに地域の曝される課題についての議論に発展した。©IFRC

モジュール2「赤十字の気候変動に対する取り組み」は、この研修キットの中で最もボリュームがある内容になっており、内容は5つに分かれています。具体的には、気象情報を活用した早期警戒行動の実施、防災・減災の考え方を軸とした災害対策の実施、実際に気候変動の影響による変化を感じている地域の人々の声を聞いて活動につなげていくための調査活動の実践方法、都市化と気候変動リスクへの対応、そしてジェンダーや社会包摂といった観点からの気候変動リスクをどのように捉え、活動に変換していけば良いのかといったことを学ぶことができます。

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アフリカの国、マラウイでは政府の社会保障政策にかかる方針の改訂を検討する会議にマラウイ赤十字社が参加し、人道的観点からより気候変動の影響を受けやすい人々の声を反映した社会保障政策の必要性を訴えた。©IFRC

モジュール3「赤十字の政策協議やパートナーシップ」では、気候変動への対応という観点から、赤十字活動が市民社会や行政とどのように協働し、あるいはその取り組みの中でどのような考え方が大切になってくるのかを学ぶことができます。これはそれぞれの国で置かれている赤十字・赤新月社の状況やその国の発展度合いによっても異なるため、一概にすべての赤十字・赤新月社の標準とは言い切れない側面もあります。しかし、今後さらに活動を意義のあるものにしていくため、国際赤十字の中で考えられる要素が凝縮している内容となっています。
 モジュール4「若者による気候変動に対する取り組み」では、若い力を結集して、気候変動に対して取り組むことができる点や、実際に世界の赤十字・赤新月社の若いボランティアたちが考えていること、あるいは取り組んでいることに触れつつ、具体的な活動を学ぶことができます。

ご報告:第7回アフリカ開発会議(TICAD7)での赤十字の貢献

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ユニバーサルヘルスカバレッジをテーマとしたサイドイベントにて発言するアズ・シィ事務総長。
本イベントのモデレーター読売新聞の田村専門委員による記事はこちら(読売新聞のサイトに移動します)

8月末に横浜で開催された第7回アフリカ開発会議には、赤十字を代表して赤十字国際委員会(ICRC)のマウラー総裁、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)のアズ・シィ事務総長が出席しました。
8月29日のテーマ別会合「気候変動・防災」では、災害時の早期警報と早めの行動が重要であり、次の災害時に住民が自分たちで対応できるよう活動していること、アフリカ53カ国の300万人の赤十字ボランティアがコミュニティで災害から人々を守るために活躍していることに言及。彼らは政府や行政の重要なパートナーとなることを述べました。また、河野外務大臣も出席した8月30日の全体会合「平和と安定の強化」では、各国政府やアフリカ連合の課題解決への取組みに敬意を表するとともに、人間の尊厳の大切さ、また各国赤十字・赤新月社による活動の強化を約束しました。

news no37‗climate change4.pdf