シリーズ「気候変動の影響と人道」

第1回 気候変動とは何か:

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キリバス赤十字社のユースボランティアが、気候変動の影響で荒廃したと考えられる海岸沿いに高潮被害の抑止効果も期待されるマングローブを植林する。気づき、考え、実行するという赤十字の心を持った若い力は、気候変動への緩和と適応でも世界中で活躍している。©IFRC

「気候変動」という言葉を聞いたことがありますか?メディアを通じて、よく耳にするという方も多いと思います。あるいは、聞いたことがある単語だけれども、あまり詳しくは知らないという方も中にはいらっしゃるかもしれません。

一体、気候変動とは何が原因で、現状はどうなっているのでしょう。そこに、赤十字の普遍的な価値観である「人道」はどのように結び付き、多様なアクターの中で赤十字が何を行い、何を発信していくのか。赤十字国際ニュースでは、これから複数回にわたり、「気候変動×人道」をテーマとして取り上げ、読者の皆様とともに理解を深めていきたいと思います。

気候変動:いま、一体何が起こっているのか

「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018(環境省他)」では、気候という言葉を説明するにあたり、次のように表現しています。

“気候とは、一般に「十分に長い時間について平均した大気の状態」のことを指し、一方で気象とは、「大気の状態や大気中で起こる全ての現象」のことをいいます。”

国立研究開発法人国立環境研究所が運営する「気候変動適応情報プラットフォーム」では、IPCC第5次評価報告書を踏まえ、気候変動の原因について次のように紹介しています。

“私たちが日々の暮らしの中で排出している温室効果ガスにより、地球の平均気温が上昇しており、 今後も平均気温が上昇するにつれて、極端な気象現象が増えることはほぼ確実であると考えられています。”

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産業革命以降、地表の平均気温が上昇している傾向が読み取れる。IPCC 2007より引用。

この異常気象とも言い換えられる「極端な気象現象」が私たちの肌で感じている直近の課題の正体ではないでしょうか。そして、気候という長い目で見たときの大気の状態の変化が引き起こすと考えられている種々の気象現象とそれに伴って起きる災害こそ、人々の安全や安心できる暮らしに暗い影を落としているのです。





※IPCCとは、国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略。1988 年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された組織。

国際社会と気候変動

脱退を表明する国も出て、脚光を浴びることになった「パリ協定」は、国際的な枠組みの下、気候変動問題に以下の目標を掲げています。パリ協定とは、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催されたパリにて、2015年12月12日に採択された、気候変動抑制に関する国際的な協定(合意)のことです。
» 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃未満に保つ(1.5℃以下に抑えることがリスク削減に大きく貢献)こと
» 世界全体で21世紀後半には、人間活動による温室効果ガス排出量を実質的にゼロにしていくこと

これらの目標に対して、国際社会が連帯して具体的な対策を講じていかなければ、地球の気候バランスが維持されなくなり、人類の糧である家畜や農作物、海産物などが育たなくなる、また、気候バランスに起因する異常気象の発生によって災害が多発するなど、さらなる危機に人類は直面すると考えられています

気候変動問題に具体的な対策を:気候変動への緩和と適応

ご存知の方も大勢いると思いますが、世界各国でも気候変動について声を挙げる人々が増えています。例えば、気候変動の問題に対し、勇気を持って立ち上がり、国際社会を前に、「行動しない大人たちが子供たちの未来を奪っている」という強いメッセージを発した一人の少女がいます。スウェーデンの15歳の少女、グレタさん。活動を始めた当初は、金曜日に学校を休んで国会議事堂前での座り込みによる抗議活動を行い、彼女のメッセージはメディアを通じて大きく取り上げられました。また、ネパールやウガンダといった開発途上国と呼ばれる国々でも小中高生が中心となってSNS等で呼びかけ合い、「将来に課題を持ち越さないための具体的な行動を」というメッセージを各国政府や社会に向けて発信しています。

そもそも、気候変動問題に対して、各国政府と私たち一人ひとりは具体的に何をするように求められているのでしょうか。対策は以下の2種類があります。
» 緩和策:温室効果ガスの排出量を削減したり、大気中の温室効果ガスを減らすこと。
» 適応策:すで生じている気候変動の影響に対処し、被害を軽減すること。

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昨今ではより規模の大きい洪水が発生し、雨季の時期も過去から比べてずれてきていると語る地域住民(右)(インド・オリッサ州) ©IFRC

具体例を挙げると、緩和策では家庭や企業による節電や温室効果ガスを排出する乗り物での移動の抑制、より温室効果ガスの排出を抑えた商品の生産・消費などがあります。一方、適応策には、異常気象によってもたらされる真夏日の熱中症対策(適切な水分補給や帽子を被ること)も一つの適応策の事例です。また、熱波や雨季のシーズンが従来とズレることによって農作物が育たなくなることや、経験してこなかった新たな災害(想定を越える場所での洪水の発生や害虫の大量発生)などに対して、気候変動の影響に強い品種への切り替えることや洪水被害を受けないようにするための給水設備の高床工事なども適応策と言えるでしょう。

 赤十字国際ニュースでは、引き続き気候変動と人道の切り口からこのテーマについて考えてまいります。本シリーズの次回号では、気候変動と赤十字の関係を取り上げます。

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