アフリカ: 永積健太郎氏にインタビュー

~国際赤十字・赤新月社連盟アフリカ地域事務局で活躍中!~

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連盟アフリカ地域事務局 パートナーシップ推進部長永積健太郎氏

国際赤十字・赤新月社連盟(以下「連盟」)は世界を5つの地域(アフリカ、アメリカ、アジア・大洋州、ヨーロッパ、中東・北アフリカ)に分けて地域事務局を構え、各国赤十字・赤新月社とともに災害被災者への支援や保健衛生分野での取り組みなどを行っています。このうちサハラ以南の49カ国を管轄するアフリカ地域事務局に、2017年6月より日本赤十字社(以下、「日赤」)の永積健太郎氏(前・日赤事業局国際部企画課長)が出向し、パートナーシップ推進部長として日々奮闘しています。

今回は、1年10カ月の任期を終え、来月(3月)に帰国を予定している永積氏に現地での業務や課題などをインタビューしました。

Q.職場はどんな雰囲気ですか?

私のいるパートナーシップ推進部には、私の他にケニア人女性のシニアオフィサー1人、オフィサー3人(女性2人、男性1人)がいて、アジア人は私一人です。

Q.アフリカの職員と日本人職員で違いはありますか?

一概にひとくくりで語るのは難しいですが、いわゆる終身雇用の社会ではないので、色々な国際NGOの勤務を経験している職員が多いですね。ダイナミックで面白い面もありますが、日本人のような仕事における几帳面さや気配りをアフリカの職員に最初から期待するのは難しいことがあります。

Q.勤務地ナイロビはどんなところですか?

年間気温が15℃から25℃程度と一年中春と秋のような気候で過ごせることは快適です。ナイロビでは、職場やマンションの近辺は日中歩くことはできますが、暗くなると安全のため、車での移動しかできなくなってしまいます。でも、自然動物公園や森の中の公園など気分転換のできる場所はありますよ。

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執務室で同僚たちと永積氏
(写真真ん中)

Q.担当業務は何ですか?  

大きく分けて3つ、①支援国の赤十字社、政府、地域機関(欧州連合など)、国際機関、民間企業及び財団との新たなパートナーシップの構築並びに既存のパートナーシップの強化・発展、②連盟が発表する緊急アピール(国別の災害の資金援助要請)や開発協力事業に対する財源確保、③アフリカの赤十字・赤新月社の国内における財源確保活動の支援です。

Q.今の業務の難しさは何ですか?

アフリカでの自然災害の緊急アピールは、干ばつや食料危機に関するものが多く、例えばアジア地域で発生する地震や津波などと異なり、メディアや寄付者の関心を集めにくく、資金集めは難しいですね。また長年連盟を通じて減災、保健衛生、赤十字・赤新月社の組織強化などアフリカの赤十字・赤新月社の様々な活動分野に援助を実施してきた多くの西欧の赤十字社や政府は、近年の財政難や援助方針の改正に伴い、かなり優先分野を絞って支援を実施する傾向にあり、このため支援対象からはずれてしまった分野について急に新たな援助機関を探すのが容易ではありません。

Q.現在、どんな課題を抱えていますか?

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カメルーンの国内避難民(少数派英語圏とフランス語圏の対立に伴う)救援にかかるスカイプ会議に参加する連盟事務局職員

事業計画に基づく重点開発協力事業を定めること、そして事業部門と広報部門とともに、いかにその事業に対する支援者を獲得していくかが課題です。たとえば、南部アフリカの防災・減災活動について、南部アフリカ開発共同体のようなアフリカの地域間機関と連携した事業を立ち上げるなどして、他の援助機関と差別化した形の事業を構築するなどしています。

Q.どんな成果ややりがいがありますか?

最貧国の1つであるマラウイで、国内の支援者を招待し、活動の受益者と共に洪水被災者救護、マラリア予防、教育関連の活動成果を報告できたことは嬉しい出来事でしたね。こうした成果を体制面でも支えるため、財源確保に関心のあるアフリカの連盟幹部職員などとともに財源確保検討委員会の立ち上げ等にも従事しました。

また有料の救急法講習の実施や診療所の運営を通じて、アフリカの赤十字・赤新月社の国内における財源確保活動について関わることができたこと、アフリカ開発銀行や世界銀行など日本では業務で接することのない国際機関と青少年支援事業や給水衛生事業について協議ができたことも貴重な経験でした。東アフリカの救援事業のために、中国の商務省やサウジアラビアのサルマン国王人道支援・救援センターに支援の要請をしたことも、欧米や日本に偏りがちな支援国の裾野を広げる意味で重要なことでした。

日赤の活動、赤十字の活動をもっと知ってもらいたい!

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エチオピア、スーダン及びソマリアの救援説明のために、サウジアラビアのサルマン国王人道支援・救援センターを訪問。
写真右から永積氏、連盟中東・北アフリカ地域事務局パートナーシップ推進部長、サウジアラビア赤新月社職員、連盟アフガニスタン代表部首席代表

最後に、永積氏は「帰国後は、例えば在京の大使館、国際機関、外国企業に対して日赤の活動に関心をもってもらえるような取り組みをしたい」と熱く語ってくれました。

世界には現在191カ国に赤十字・赤新月社があり、各国の社が各々の強みや資源を生かして、互いに連携しています。また日赤は、情勢が不安定な国や地理的に遠い国には連盟を通じて支援を届けるなど、赤十字のネットワークを生かした支援を展開しています。

赤十字は現地のニーズと赤十字の強みを多くの人に伝え、これからも一人でも多くの命を救います。

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